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だから私はエルフじゃないの! -20- #胡乱エルフ

食卓に並べられていたスープは、誰も手をつけないままにすっかり冷めてしまっていた。話し終わったテッカは、その透明な液体をなだめすかして見聞した後、ヨミジからの制止が入らないのを確認してから口をつけた。そしていかにも興ざめといった顔。

「思ったとおり、愛想も素っ気もねえ味」

一方のシャンティカは、目の前の食事に視線こそ下ろしているものの手は出していない。思案にふける様子のシャンティカに、怪訝な表情を見せるアルメリア。

「シャンティカよ」
「ん、なあに?」
「なにゆえそのように思考の深淵に浸るのか、何か考えがあってのことであろうか。であれば、余はぜひとも汝の話を所望する」
「ええと、そんな大層な話でもないんだけれど……仕事相手の竜が、こういう事件が起こった時の考え方を教えてくれてて」
「ほう、ほう?」

シャンティカの言葉に、アルメリアは衣服が乱れるのも構わずに身を乗り出して聞き取る体勢を取り、テッカとヨミジの揃って耳を傾ける。

「あの矢じりの主か、ウチラの感覚じゃ相当変わってるっつーか、そもそも会話が通じるドラゴンなんてアタシャ見たことねえや」
「私の感覚でも相当な変人、じゃなくて変竜というか……頼りには、まあなるんだけれど。彼自身の事は今は関係ないから置いておくわ」
「むう……よい、その節は後ほど余が拝聴しよう。それで、その考えとはいかに」

シャンティカは記憶の奥底に引っかかっていた話をどうにか引き上げると、それを今回の事件の内容と当てはめて類推する。

「まず、私達がここに来てからもう二回襲撃があったわ。はっきりした証拠はあの樹精くらいで、それ以外の目につく手がかりは今の所確認出来てない。たぶん、相当に用心深い上に臨機応変に立ち回る柔軟さまで持ってる、かなり厄介な相手だと思うの」
「まーな、頭は回るし引き際もはえぇ。それで?」
「ええと、ね。確か人為的に引き起こされた事象には、少なからず実行者の意図が反映されるとかなんとか……今回で言えば、二度ともアルメリアを直接始末するってとこね」
「アタシらも狙われたのは?」
「一回目の襲撃が私達に妨害されたことから、まとめて敵とみなされたってところね。本命はアルメリアでしょうけど、すきあらば私達も狙われるわ」
「フン、上等じゃねーかオイ」

酒の勢いもあってか、頬に朱を伴って噴き上がるテッカをヨミジが視線でなだめる。

「ほか……に、わかること、ある?」
「もちろん。犯人は執念深いから、この程度じゃ諦めないでしょうね。でも一度目と二度目が即防がれたから、次はもう少し攻めやすい状況を選ぶと思うの。当然その裏をかいてくる可能性も考慮はするとして……アルメリア、継承の儀とやらはもう終わった扱いなのかしら?」

シャンティカの問いかけに、アルメリアは厳かに首を振った。

「否である。余は未だ先代の姫巫女よりその役目を引き継いだわけではない。それは三日後の本祭における儀式、破天樹宮での祭事を終える必要があるのだ」

アルメリアの回答に、三人娘は揃って姫君の顔を見た。

「それよ」「それだ」「それ……」

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