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BWD:龍の移住相談なる会-9-

「今この世界は異なる世界と境界があやふやになっていて、別の世界の存在が気軽にやってこられるようになってるんだ。それは旦那も知ってるよな?」
「うん、ぼくがこの世界の事を知ったのは君たちの世界から来た人達から教えてもらったんだ」
「オーケイオーケイ、そこまでは良いとして問題なのは、四方八方無数の世界と繋がっちまってる状態だからその中には俺達の世界の妄想そのままになっちまってる世界もあるって訳よ」
「えっ、君たちの中にああいう、『牛をさらう良くわからない飛行物体』を妄想した人達がいたって事?」
「そゆこと。本来ならこっちの世界にやってくるはずのない妄想世界の産物がホイホイやってきてこっちの人間に妄想された通りに牛を攫ってたってのが事の真相。生き物が乗ってるタイプもあるんだが、今回は無人機だったぜ」
「妄想の産物でも特にアクマは『人間に害悪をなす者』として定義されてるせいか良く出てくるんだが、UFOは余り見ないな」
「ここの世界も大変なんだねぇ」

 龍の飛行速度はすさまじく、瞬く間にあの離島が視界に入り、その姿をあらわにしていく。島内牧場地上空まで到着すると、迎えに来たのか恰幅の良い老紳士な町長とガタイの良い畜産系おじさんが両手を振って迎えてくれた。緩やかに速度を落としホバリングしながら地上に降りてゆく。降下ざまにセージに問いかける龍。

「今回はうまくやれたけど、ぼくここで上手くやってけるかな?」
「大丈夫、旦那ならきっとうまくやれるって。なんかあったら……」
「俺達がまた力になるさ」

 二人の回答に、自身の背の方に振り向いて笑顔?を見せる真龍。

「うん、やってみるよ」

ーーーーー

「むー……私もドラゴンさん見たかったです」

 昼下がりのバー『涅槃』。徹夜明けの二人は真龍に送ってもらってそのまま国立競技場で降ろしてもらい、えっちらおっちらタクシーで涅槃まで戻ってきたのだ。そんな彼らを出迎えたのは黒く長い髪をシニヨンにまとめ、麗しい頬をぷくーっとフグの様に膨らませた給仕服のウェイトレス、カスミであった。

 バーの角、上部に据え付けられたテレビはニュースとして巨大な蒼穹の真龍が都内に現れた事を報道していた。取材では合法的に入国した事が判明しており、危機的存在ではない事を伝えている。ぐったりした様子でカスミの問いかけに答えるセージ。

「また会えるって、友達になったから」
「本当です?」
「ああ、何かあれば相談にのると約束したぞ」
「何かあれば……なにか無いとだめなんです?」
「何かなくても、会いたいって事なら会ってくれるさ」
「今日会ってみたいです!すぐ!」
『それはごかんべん……』

 ヘロヘロな二人はバーカウンターに突っ伏すと家に帰るのを待たずして寝息を立て始めてしまったのだった。

 テレビのニュースは既に出所不明の巨大人型兵器が過疎廃墟地帯を破壊して回っているニュースに移り変わっている。甚大なる実害を与える存在が日々闊歩する今時では、強大ではあっても謙虚なドラゴンに目くじら立てる者など、早々いないのであった。ましてや離島の僻地で牛番をしてるとあっては他の過激な存在の影に隠れてしまうのも止む無いと言えよう。

 ただ、バーで働く一人の少女だけはそわそわと一目会えることを楽しみに記憶にとどめるのであった。

【BWD:龍の移住相談なる会-9-:終わり】

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