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魂の灯 -98- #ppslgr

「ちょっ、待っ、ちょーっ!?」

目の前で起きた突然の惨事に、バティは慌てて食って掛かった。
アスネの方は、相変わらず燃料無しに燃え上がる地獄の業火に巻かれているままだ。

「確かに今にも死にそうっつーか、ほんとに死ぬところだけど、いくらなんでも生きたまま火葬にしなくてもいいだろ!鬼!悪魔!人でなし!」

一体どこにそんな力が残っていたというのか、バティは残像が残るレベルでレイヴンをガクガク揺さぶるも揺さぶられた側は平然と炎を指差す。

「誰が人でなしだ誰が、よく見ろ」
「へっ?」

死神の指差した先、寸前まで熱く炎が巻き起こっていたところには、少年が自分の足で立っていた。月光を受けてきらめく髪は、バティが彼と初めて会った時と異なる……栗色だった。

「えっ、えっ?」
「これは、一体どういう……」
「たまたま俺が蘇生出来る条件が揃ったんだ、運が良かったな」

レイヴンは、「二度三度は無いぞ」と付け加えると背越しに親指で東京本土を指す。

「今はまだパニック状態だろうが、じきに犯人探しが始まる。やり残したことがあるならとっとと行け」
「おまえは、僕を、許すのか?」
「どうでもいいな。元よりお前に対して、許さなければならないほどの感情など俺は持っていない。お前達はどうだ?」

感情の読み取れない擦れた表情でバティ、ノア、イシカワの三人に話を振るレイヴン。

「いや、別に……こいつに死んでほしいわけじゃ、ねえし」

一言で言い難い、なんとも多種多様な感情が入り混じった顔で絞り出すバティ。

「あなたへの迷惑料の請求なら、運営会社の仕事ね。私は興味ないの」

クシャクシャになった髪の毛先をいじりながら、言葉以上に興味のなさを示すノア。

「もともと流れで首を突っ込んだんだ、そこまでの因縁はないな」

そしてサグい仕草で肩をすくめるイシカワ。

まさに三者三様で、しかして根本的には同じ結論を出した三人。彼らの言葉に、アスネは今までは死人のようだった顔を、きゅっと歪めた。

「そういうことだ、さっさと行け。ここにいる連中が良くても他のやつがそうとは限らんからな」
「わかった……僕は、いくよ。そして、かならず自分の作品を完成させる。だから、その時には」
「うっせーよバーッカ、そんなの、言われなくたって読みに行ってやるって。だからよ、もうあきらめんなよ」
「うん」

アスネのはにかんだ微笑みに、バティは無性に気まずくなって目を伏せた。

「ありがとう、さようなら」

月光を受けてわかれを告げるアスネの背後に、あの純白の騎士機が再度光の粒子とともに再誕、そのまま彼は愛機の内へと転送されて、海中へと沈んでいった。

「今度こそ、終わった……本当に」
「そうだな、長い長い、馬鹿騒ぎだった」
「けどさ……良かったのかよレイヴン」
「なにがだ」
「わざわざあいつを健康体にまで治してやって、そのうえ見逃しちまうとかさ。やらかしたのは、事実だろ?」
「そうだな。だが、俺は法の番人でもなければ国の官犬でもない。自分で奴に猶予をやると決めて、そして実行した。それだけだ。世界のお気持ちなど俺の知ったことではない」
「そっか」

そこまでいって、バティは今度こそ燃え尽きて巨神の硬い手のひらの上で大の字になったのであった。

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