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魂の灯 -99- #ppslgr

「な~に黄昏れてんだ」
「なにって、何もかも終わったんだからちょっとくらい寝っ転がってたっていいだろ?」

「まだやることがある」
「は?」

完全に何もかも終わったつもりでいたバティは、自身を覗き込んだイシカワを素っ頓狂な声を上げて見返した。まだやること。あったっけ?

「俺たちが勝ったんだから、祝杯だ!」
「はああああああああああああああああ!?」
「何だ、やらないのか」
「やるも何も、この騒ぎの後じゃ呑み屋なんてやってないでしょ!?」
「酒があって、食材があるなら後はつくればいい。違うかレイヴン」
「なにも違わないな。バー・メキシコは無事だろうし、何かしら有るだろ。無ければ買ってくればいい」
「Oh、My、buddha……」

今度こそ真っ白になって燃え尽きたバティをイシカワがおんぶすると、役目を果たしたドレッドノートから、まだ動けるイクサ・プロウラのマニピュレーターの上へと飛び移った。ノアも続き、レイヴンはコクピットハッチへ飛びつく。

「ところでホイズゥはいつ来たんだ?最初ソウルアバター戦に出たの四人だったろ」
「足止め喰らって振り切ったところで、いきなり丸呑みされたらしい。だからいることは居たんだと」
「はっは、アイツらしいぜ」

イクサ・プロウラは空いている側の腕を振ってハンドサインを送ると、今度こそ本当に終わったことを距離を置いて見守っていたパルプスリンガー五人の機体へと知らせた。

イクサが上昇し、バティが振り向いた先のドレッドノートの機影が遠ざかっていく。自分でも、よくもまああれほど使い潰したものだと思う。だが、あの機体は死闘に耐え抜き、そして勝った。勝てたのはほぼほぼアイツのおかげと言っていい。

「あんがとな、相棒」

遠ざかる翠緑の巨神に別れを告げると、バティ達を載せた黒い鳥は、夜闇に浮かんでゆっくりと飛んだ。目指すは東京メガフロート、バー・メキシコだ。いつもの日常が彼らを待っている。

―――――

「横暴だーっ!」

轟音、そして振動がバー・メキシコを揺らした。
レイヴンは仏頂面のまま、自身のCORONAビールをさっさと飲み干す。ワンテンポ遅れて、天井から舞ったホコリが店内にばらまかれた。

「炎上か、最近多いな。やれやれ」

特に気にした素振りも見せず、男は次のCORONAを開けるとライムを押し込んで再び呷る。そんなレイヴンの眼の前には、以前と変わらずテーブルに突っ伏して懊悩するバティの姿があった。彼の方のCORONAはわずか数口舐めた程度だが、既にぐでんぐでんに酔っ払っていた。

「うう~……書けねぇ……」
「無理に書くこともないだろう」
「いや、でも、さ。こう俺にだって使命感とかそういうのが、ね?」
「使命感より、パッション、情熱の方が大事だな。やる気を出すなら。しかし俺が思うにバティに一番足りないのは」
「足りないのは?」
「規則正しい食生活と健康習慣だな」
「そ、そっちかぁあ~……」
「やる気なんてオツムから出るもんだ、ちゃんと飯食って運動しないと出るものも出ないぞ」
「肝に命じます、ハイ」

バティは身を起こしてノートパソコンの画面と向き合うも、まっさらなテキストエディタはまだタイトルさえ入っていなかった。

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