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全裸の呼び声 -10- #ppslgr
この場に居た全裸露出者の誰もが、強制着衣老婆の魔の手からは逃れられなかった。先程までの威勢はどこへやら、誰も彼も腰砕けになり紅の文様が刻まれた床へとへたり込んだ。ヒゲのカニオストロも例外ではない。
「ヌウーッ……!なんたる屈辱、なんたる尊厳陵辱!よもやワガハイに服を着せるなどと!貴様っ、人のこころはないのか!?」
「着衣で咎める良心はねえな」
「クッ……」
カニオストロの挙手にしたがい、着衣露出者の群れは再び二人に牙をむく。だが今となっては彼らの速度は三分の一未満、死霊の盆踊りの方がまだ活力がある程度に低下していた。もはや二人の敵ではなかった。
レイヴンは格闘の構えを解くとだらりと両手をさげ、泥酔者を正気に返すように手近な着衣露出者から平手打ちしていく。哀れな被洗脳客は力士の喝入れでも喰らったかのように、次々と頬に赤もみじをともなって昏倒していった。バーの床は死装束を押し着せられた元露出者で埋め尽くされ、後に残ったのは、政府高官とヒゲと黒ずくめと白ずくめ。
「ええい、よせっ、来るなっ!」
腰砕けで尻もちついたままに、カニオストロは後ずさりしながら己の白装束を剥ぎ取ろうとするも、驚くべきことにびくともせず彼の肌に張り付いている。さながら罪人に着せられた拘束衣めいているが、本物の方がまだ脱ぎようがあるだろう。
「さてさて、露出会については私も知らない事がたくさんあるから、洗いざらい話してもらいたいな」
教授の得物はいつの間にやら最初の破城槌に戻っていた。殴り方次第では即死もなぶり殺しも可能な凶器のそれに。
「どちらも尋問は専門じゃない。とっとと吐くのを勧める」
「オノレ非脱衣者ふぜいが調子に乗りおってからに……!トゥッ!」
「むっ!」
気合一発、カニオストロは上半身のバネだけで空中バク転宙返りから間合いを取ると、一目散に背を向け逃げの手を打つ!自身に向かって放たれた鎖を打ち払い、バーの入り口をくぐり抜け、外の人混みを猫めいてすり抜けてゆく!後を追う二人!
「裸ーッ!」
『ウワーッ!?』
巨漢死装束ヒゲを見て硬直した、あたり一面の人間の服がみるみる弾け飛んで全裸露出者の集団と化し、後を追う二人の前へ立ちふさがる!すぐさま老婆が生えるも、露出者の数が多い!さらには無事だった来場客も、一面の惨状にパニックとなる!
「野郎……ッ!」
「貴様らッ!今日の所は勝負を預けてやるがこの屈辱忘れんからな!?」
商業施設の通路は、みるみるうちに露出者と老婆と半狂乱客で埋め尽くされて、カニオストロの姿は遠くの方へと消えていった。やむを得ず、先に強制着衣と平手打ちによって露出者を制圧する二人。
まるで被災地のようになった通路へおっかなびっくりやってきた政府高官は、開口一番、二人に叱責を飛ばした。
「取り逃がしたんですか!?」
「幽霊じゃないんだ、ここまで密ったら通れないっての」
「面目ないね」
「はぁ……まあ良いでしょう。あなた方が彼らに対抗出来ることはわかりました。サインはしましたので一刻も早く調査に向かってください。神奈川県川崎市多摩区登戸に」
「川崎市」
「登戸」
【全裸の呼び声 -10-:終わり|-11-へと続く|第一話リンク|マガジンリンク】
注意
このものがたりは『パルプスリンガーズ』シリーズですが、作中全裸者については特定のモデルはいない完全架空のキャラクターです。ご了承ください。
前作1話はこちらからどうぞ!
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