安楽椅子のレジスタンス
「お願いします、どうか主人の死の真相を…」
目の前の婦人はさめざめと涙を流す。
「…婦人、お分かりでしょうが」
俺は棚の上に置かれた国家元首様の像にちらりと目をやる。
「『真相』なんて言葉は…その、よくない」
「あら…!ごめんなさい」
婦人は途端に青ざめた。慣れてない客はだいたいやってしまう。こういうときのフォローもプロの仕事だ。
「珈琲でも飲みますか?」
俺は国家支給品陳列棚へ向かうと、
「おっといけない!」
棚に詰まった物品を下にぶちまけた。わざとそうしたのだ。棚の上の国