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「ミートショック」の話。

沁みるよ…場末でつつく牛肉豆腐

池袋の大衆酒場で一杯やってきた。

昭和創業の場末感漂う赤ちょうちんで、定番のカシラから、タン、ハツ、レバー、シロなど‥‥臓物系は一通り揃うヤキトン屋だ。

串物の焼き具合が丁度よく、また素材も新鮮なのだろう。旨い。

この店はヤキトン屋ではあるが、名物は牛肉豆腐だというので頼んでみた。
カウンター目の前の大鍋で、見るからに濃ゆいタレでぐらぐらと煮立てられ、なんとも旨そうだ。

お皿にどどんと盛られて登場。

塩辛いのだけど安い熱燗に抜群に合った。これが絶品だった。
塩辛い料理で熱燗を飲むなんて、完全に昭和の飲み方なのだが、まぁ、これが旨いのだから仕方がない。

ビールにはじまりポン酒に続き、次はプレーン酎にするかホッピーにするか‥‥まよう。

日本人が知っていたショートプレートの旨さ

ところで。
自分も料理をするのでわかるのだけど、牛肉ってあまり煮込むと固くなってしまうんですよね。ギシギシになって、あまり旨いとは言えない。
でもこの店の牛肉は比較的に脂が多く、なんというかジューシー。やわらかい。

これ、おそらくショートプレートだろう。
※違ったらスミマセン
吉野家とかでも使われているので最近は有名だけど、昔は(あるいは今も)“屑肉”とか呼ばれた牛バラ肉だ。

これがいま「ミートショック」と呼ばれるくらい価格が高騰している。

アメリカにはたくさんの肉牛がいるが、白人は赤身の肉を好む。
血の滴るような赤身の肉が大好きで、霜降りになんて見向きもしなかった。
なので脂身の多いショートプレートなどは白人には相手にされず、日本人が「ほな、ワシらがいただきまひょか」と、安値で買い付けてきては、安い牛丼として消費されていた。

牛丼一杯が250円くらいで食べることのできた“平成時代”の話だ。
もっとも、当時は円高だったのもあるけれど。

それが、近年どうやら中国人がショートプレートの旨さに気が付いてしまった。
そうなると、購買力が圧倒的に違うので、まぁ米国の牛丼になる予定だった牛肉なんてものはゴソッと中国大陸に流れるというわけだ。

CPI(物価指数)でも明らかな牛肉の高さ

それに今日4/20時点のドル円は129円台。
日本のバイヤーがどれだけ頑張ったところで、食材の買い負けという現象も常態化する。

2022年3月に発表された消費者物価指数でも、輸入牛は前年同期比で11.1%も値上がりしているとあるので、ミートショックは「肌感覚」ではなく「事実」と思っておくべきだろう。
https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf

そんなわけで、大衆酒場の牛肉豆腐も高級料理となる時代が近いかもしれない。

伝統的に関西人は牛の消費量が高いと言われる。
西の人は家計直撃という感じで大変だろう。

道産子は牛肉をあまり食べなかった

そこへいくと私は北海道出身の道産子なのでよかった。

現代ではそんなことないけれど、ほんの20~30年前の北海道の食卓。
すき焼きも肉じゃがも豚肉だったし、しゃぶしゃぶはラム肉が基本。カレーも鶏肉が多かった。

別に家が貧しかったとかそういうのではなく、牛は乳を飲むもので肉として食す機会は少なかったと思う。
いまだにスーパーに行っても牛肉売り場の面積は少ないし。

超余談ではあるけれど、北海道のスーパーで驚くのは「ホルモン」の売り場面積の広さだ。
ホルモンといっても豚の大腸で、ペラペラしたもので、これを塩だれや味噌だれに漬け込んだものだ。
これがBBQとかジンギスカンに欠かせないのだ。
無茶苦茶うまいのだけど、あまり北海道外では見かけないのが残念だ。

お恥ずかしながら私、生まれて初めて牛肉を食べたのが中二の頃。

それも、サイコロステーキという成形肉。
そんなものを「これが牛肉なのかぁ~~~」と目を輝かせて食ったものだった。。。

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