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コラボしようぜで始まったけどまだ中身も決まっていない本の連載

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突然の「コラボしようぜ」というツイートから、いきなり始まってしまった本の企画を連載していくマガジンです。 https://scrapbox.io/kuratakabooks/ もっと読む
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#鷹野のターン

第二十六回:混ぜるな危険

第二十六回:混ぜるな危険

前回の倉下さんからは、3万6800円の限定セミナーで語られている内容の一端をご紹介いただきました――っと、これは「半分冗談」とのことなので、たぶん1万8400円なのでしょう。はい、これも冗談です。

こちらの直球を素直に打ち返していただいたので、こちらも「コラボ」という直球を素直に打ち返すことにしましょう。そもそもこの企画が「コラボしようぜ」で始まっていますからね。

◇ ◇ ◇

さて、一般的に

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第二十四回:在庫リスクがなく無限の棚に並べられるから突然売れても機会損失しない

第二十四回:在庫リスクがなく無限の棚に並べられるから突然売れても機会損失しない

前回の倉下さんは、私のストレートな振りに対し、わりと素直に答えていただきました。天邪鬼はどこへ行った? という疑問はさておき、私も別のグラフを公開してみましょう。これは、私が2012年5月にセルパブした本の、月別の販売部数推移です。2012年5月ですから、Kindleストアが日本に来る半年くらい前の話です。

当時、商業出版で類書は3点くらいありましたが、あまり売れなかったとみえて、改訂版も出ない

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第二十二回:最初は無料、あとから有料、そして値上げという価格戦略

第二十二回:最初は無料、あとから有料、そして値上げという価格戦略

連載の間隔が少し空いてしまいました。ここしばらく、ちょっと予定を詰め込みすぎて、あっぷあっぷになっていました。溺死するかと思ったほどです。続きをお待ちいただいていた方々、申し訳ありません。

とはいえ、もしこの連載が、誰かから原稿料をいただける形であれば、あるいは、ちょっと美味しいもの食べられるくらいの投げ銭が毎回いただけるような状態であれば、優先順位を跳ね上げ多少無理をしてでも原稿を仕上げていた

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第二十回:定価? そんなものはない

第二十回:定価? そんなものはない

前々回、原稿を書きながら「ここから先を説明すると、ちょっと長くなりすぎるな……」と思った私は、そこでぶった切って倉下さんへぶん投げるという荒技を仕掛けました。往復書簡的連載ならではの強引さ。今回ばかりは、素直に打ち返していただきました。ふふふ。

とはいうものの、冒頭のこの一節で、私は盛大に笑ってしまいました。

まず、前回鷹野さんが丁寧に解説してくださった商業出版での本の値付けは、セルパブではほ

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第十八回:商業出版ではどうやって価格を決めているのか?

第十八回:商業出版ではどうやって価格を決めているのか?

私は前回、マーケティング・フレームワーク4Pのうち「Promotion(販売促進)」と「Product(製品)」の2つに関することを書いた時点で、倉下さんへバトンを渡しました。普通の天邪鬼なら、残り2つを放置して別のことを書くでしょう。その場合、次の私のターンで残り2つを書けばいいだけの話です。

「あ、やはりそう来たか」と思った私は、思わずこれに反応してしまいました。あとから考えてみたら、こんな

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第十六回:認知がまったくない段階でもできる施策とは?

第十六回:認知がまったくない段階でもできる施策とは?

「コンテンツの無料と有料をどのようにコントロールしたらいいのか?」という倉下さんの問いに対する私の答えは、書き手の「認知度」と、コンテンツを伝播するメディアの「固さ」に依って異なる、というものでした。それに対し倉下さんからはさらに、以下のような問いが返ってきました。

では、書き手の「認知度」がまったくないか、あるにしてもごくわずかだとして、その人が「電子書籍」を売っていきたいとしたら、どんな施策

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第十四回:中身を読んでみないと価値が判断できないのに

第十四回:中身を読んでみないと価値が判断できないのに

前回の締めで、倉下さんの悪そうな笑顔が脳裏に浮かんで離れなくなってしまった鷹野です。なんというバトンの渡し方をしやがりますか。天の邪鬼属性Sの倉下さん、ちーっす。

往復書簡的に進んでいる当連載ですが、倉下さんの投げ返しがあまりに速く鋭いため、受け取りまた投げ返すのが大変です。まあ、私はM属性なので、これはこれで楽しいのですが。引き続きのんびり、マイペースにいきたいと思います。

◇ ◇ ◇

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第十二回:広く伝播するとお金以外のものも稼げる

第十二回:広く伝播するとお金以外のものも稼げる

大きなイベントの準備と後遺症で、またお待たせしてしまいました。もっとテンポ良く打ち返していかなきゃ、ですね。

さて倉下さんから前回、インターネット上で展開しやすい「広告収入型」モデルの問題点について指摘がありました。まず、プラットフォームに生殺与奪の権利を握られてしまう点。たとえば YouTube がチャンネル登録者数の少ない YouTuber への収益還元をやめた、というものがあります。これ、

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第十回:無料かつ柔らかいほうが広く伝播する

第十回:無料かつ柔らかいほうが広く伝播する

いろいろあって更新が遅くなりました。すいません。

さて私は前回、出版メディアを「お金」と「固さ」に分類したわけですが、「固さ」という軸に倉下さんが驚いてくれたのが嬉しかったです。やった!

問題は、「だからどうだっていうんだ?」という話になるでしょう。英語で言えば ”So what?” です。さきに結論を言うと、これは「コンテンツの流通しやすさ」に強く関わってくる話であると、私は思っています。

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第八回:出版ってなんだろう?

第八回:出版ってなんだろう?

デジタル出版を視野に入れることで、近代で固まりつつあった「出版」のイメージをいったんリセットして、再出発する。
第七回:古くて新しい出版|倉下忠憲|note

近代になって高度に発達した産業としての出版は、本来「出版」という言葉が指し示す範囲の一部でしかない、と言い換えることもできるでしょう。事業として行うことだけが「出版」ではありません。誰かに読んでもらうことを目的として書(描)かれているなら、

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第六回:だんだんふえてくなかまたち

第六回:だんだんふえてくなかまたち

「ドラゴンクエスト(以下DQⅠ)」というゲームをご存知でしょうか。まあ、ほとんどの人にとっては愚問でしょう。家庭用ゲーム機「ファミリーコンピュータ」に登場した、初のオリジナル・ロールプレイングゲーム。発売は1986年。30年以上経ったいまなお続編が作られ続け、スマートフォンでもリメイク版が遊べるという、日本のゲーム史上に燦然と輝くシリーズです。

ただ、私にとって一番思い出深いのは、2作目の「

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第四回:インターネットの中央集権化に抗う辺境の私たち

第四回:インターネットの中央集権化に抗う辺境の私たち

たとえばこれを「セルブズパブリッシング」(selves-publishing)と呼んでみることにしましょう。自分ひとりでセルフパブリッシングできる人が集って行う出版活動です。
第三回:セルブズパブリッシング宣言(倉下忠憲)

selves【名詞】自分たち◇selfの複数形(英辞郎:アルク)

頭をガツンと殴られたかのような衝撃でした。私もこれまで、「チーム」や「コラボ」での出版、という表現はなんど

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第二回:1+1>2

第二回:1+1>2

1冊の本にどれだけのプレイヤーが関わっているか、考えてみましょう。著者、編集、校正、校閲、イラスト、デザイン、組版、印刷、製本、営業、広告、取次、物流、販売……1人で全部できますか?

これは、以前私が書いた『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』の中で、先生のセリフとして語らせた、私自身の考えです。“自分でやる”こと、すなわち“Do

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