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第十二回:広く伝播するとお金以外のものも稼げる

大きなイベントの準備と後遺症で、またお待たせしてしまいました。もっとテンポ良く打ち返していかなきゃ、ですね。

さて倉下さんから前回、インターネット上で展開しやすい「広告収入型」モデルの問題点について指摘がありました。まず、プラットフォームに生殺与奪の権利を握られてしまう点。たとえば YouTube がチャンネル登録者数の少ない YouTuber への収益還元をやめた、というものがあります。これ、よくよく考えると、薄く広く収益を分配していたロングテール部分をすべて自社の収益にしてしまうわけですから、非常に荒っぽい話。多くのブログサービスが無料でサービス展開する代わりに自動で広告が入る形になっていて、その収益によって事業を成り立たせていたのと近いモデルになるわけで。ある意味、先祖返りと言ってもいいかもしれません。

倉下さんからはさらに、ものすごく伝播しなければ広告型では稼げないという問題点が挙げられています。Google AdSense だと、だいたい1PVあたり0.1円くらい。それだけでまともにメディアを運営しようと思うと、最低でも月間400万PVくらいは必要という感じになるでしょうか。もちろん、倉下さんが例として挙げている「Publickey」のように扱うジャンルや方向性とスポンサー企業とのマッチング次第では、月間40万PVくらいでも小規模メディアとして成り立たせることは可能です。

そして最後に、そもそも「広く伝播することは本当に必要なのか? 必要だとしたらなぜ必要なのか?」という問いかけです。思わず「そこでバトンを渡すか!」と声が出ました。いやあ、巧みな攻撃です。攻撃?

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私の「鷹野凌」という名前は、2011年につけたペンネームです。過去の経歴や人間関係などとは完全に無関係な形で活動を始めました。なぜそんな無謀なことをと思われるかもしれませんが、私がゼロから執筆活動を開始したのは「そのほうが面白そう」という理由だけです。結果、とても大変ではありましたが、充実した面白い日々を過ごすことができました。

まだ「鷹野凌」をはじめて間もない2012年、あるインターネットメディアへ記事を寄稿することになりました。ブログに書いていた記事が編集者の目にとまり、それなりに大きなメディアに書くチャンスが巡ってきたのです。ただ、ウェブメディアの相場からすると悪くない原稿料を提示されたのですが、かける労力に見合うほどではないと判断せざるを得ませんでした。

そこで私が編集担当に強くお願いしたのは「鷹野凌」という名前を出すのはもちろん、記事の最後にブログやSNSなどへのリンクを張ることでした。つまり私は自分の名前の「認知」を上げることと、ブログの読者やSNSのフォロワーを増やすために、そのメディアを利用させてもらったのです。

おかげでいまでは、大学でデジタル出版関連の講義を持つようになったり、セミナー登壇を依頼されたりと、記事を書く以外の仕事も入ってくるようになりました。まったくのゼロから始めて数年でここまで来られたというのは、「柔らかくて無料」というコンテンツ流通が主流のインターネットだからこそなし得たことだと思っています。

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つまり、コンテンツが広く伝播することは、直接お金には繋がらないかもしれないけど、コンテンツそのものや書(描)いた人の「認知」は高められます。つまり、お金を稼ぐのではなく「認知」を稼ぐのです。ここで重要なのは、ではどんな「認知」を稼ぐか? という点です。たとえば、少し前の話になりますが、業務用冷蔵庫に入った写真を Twitter にアップロードして有名になった人がいます。これは望ましい「認知」——とは決して言えないでしょう。

たとえば、物議を醸すような発言ばかりを繰り返している「炎上芸人」と揶揄されるような人々もいます。火が消えかけると追加燃料を放り込むような——これは本人たちがそうなることを望んでいる節もあるため、ある意味、望ましい「認知」なのかもしれません。ただ、私はこういうやり方を真似たくありません。求めるベクトルが違いすぎるからです。「認知」と同時に「信頼」をコツコツと稼ぐような、そんな情報発信を心がけたいと思っています。

……といったところで、そろそろ倉下さんにバトンを渡しましょう。

倉下さんの原稿へ続く

最後までお読みいただきありがとうございました。