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『幽霊なんて怖くない BISビブリオバトル部』レビュー

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幽霊なんて怖くない BISビブリオバトル部

山本 弘 (著)

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レビューや感想文を読んで本に興味を持って、実際にその本を読んで見た。という経験はたくさんあります。もちろん、私もそうなってくれたらよいなーと思っていつも本を紹介しているわけなんですけれどね。

で、レビューを見てその本を読んで「面白かった!」ってことは当然なんですが、レビューを読んでから本を読んだことで、普通にただ読んだだけじゃ気が付かない別の読み方を知って、「ああ、本当だ、やっぱりそう読める!」なんてこと……、レビューを読んでいたからこそ、普通に読むよりずっと感動しちゃう経験ってのは、あったらすごくうれしいんですが、現実には、なかなかないものです。

でも、この本には、それがありました。

レビュー読後読書でここまで感激したのって、この本と、あとは赤城かん子さんの『日本語ということば (Little Selectionsあなたのための小さな物語)』の中の『セロ弾きのゴーシュ』ぐらいかなあ。(そちらは昔紹介したことがあるので今は置いといて)

ビブリオバトルのお話ですから当然ビブリオ(本)のレビュー合戦の描写がたくさんでてきます。いろんな本が紹介されていてそれだけでもメシウマ状態です。ああ、これもあれもおもしろそう読んでみたいッ! ってなっちゃいます。

その中で、あるキャラクターが出してきた『七時間めの怪談授業』という本(の紹介)にめっちゃシビレちゃったんですよ。
そう、この間こちらで紹介したこのシリーズの①作目ですね。

存在は知っていたのですが、児童書ですし、ここで紹介されているような、そんな深い意味があるなんてまったく思っていませんでした。
この本で紹介されていて、「本当にそう読めるの?」ってしっかり読んでみて、「うわっ! ほんとうだ!」って感激してしまったわけです。

これ、この本での紹介を読んでいなかったら、たとえ手に取ってもさらっと読み流して「ふーん、こういう話なんだー。うんうん、良い話だねー」程度で終わってしまったとおもいます。しっかり読み込まないと感じられないぐらいのさりげなさで文章の中に編み込んであるサブリミナルのような、子供たちの深層意識に感じてほしいメッセージ。
きっと普通に読んでいたら感じられなかったそのメッセージを、この『幽霊なんて怖くない』の中で、キャラクターの手による解説で知ることができました。

キャラクターにも人生があります。その人生を歩んだ結果、そのキャラからはこの話はそう読み取れる。という、自分とは別の視点で「本」を見つめなおせる。見つめ直す行為を、他者視点に憑依してリアルに感じられる。
これって私にとってとてもセンス・オブ・ワンダーな、物語に入り込む感覚です。

もちろんキャラクターを作られているのは著者の山本弘さんなので、創作されたキャラが語る現実に出版されている本の紹介で感動するというちょっとメタ入ってる感じですけどねw

そういえば『七時間目』シリーズ②の占いのお話で出てきた「棒の手紙」って山本さん研究されてませんでしたっけ? 作家さんどうし交流でもあるのかなあ? なんだかお話と現実の著者さんがクロスオーバーしてますねw

さてさて、もちろんこの本は小説ですから単なるレビュー集ではありません。物語がちゃんとあります。それはそれでとっても面白くて個人的にグッとくる素敵なお話です。
前作『翼を持つ少女』のそのまま続き、続編です。

超が付くSFマニアなふしぎちゃんこと伏木空(ふしき・そら)と、絶対にSFなんて読まんもんねと公言してはばからないノンフィクションマニアの埋火武人(うずみび・たけと)、そのほか、ボーイズラブ物や科学物など、専門分野を語らせたら止まらないBISビブリオバトル部の面々が、今回挑むテーマは〈恐怖〉と〈戦争〉。

うわー、私もちょっと苦手な分野ですねぇー。このお話の時期はちょうど夏、お盆のころのお話なので、肝試し的な「怖い話」と、終戦記念日にまつわる「戦争の話」がテーマのよう。かなり難しいテーマですが、キャラの立ったBISのメンバーは、それぞれ得意な分野のおもしろい本をもちより、ビブリオバトルをするのです。

とゆうわけで、ようやく本書のタイトル『幽霊なんて怖くない』です。

「ああ、怪談ばなしなのね。で、怖くないって否定するんだ。山本さんだしねー」なんて思ってましたがとんでもないw
さすがはSF作家の山本弘さん、ストレートなそんな読みなど通用せず、軽く二回転半ぐらいひねってきます。
だんだんと「そうじゃないかなー?」って思わせてからのこの展開はもう、SFファンなら絶対泣きます。ああもう! ネタバレするわけにいかないからみんな読んで!! この気持ち共有してっ! って叫びたくなっちゃうw

そしてそして、冒頭で書いたあの本の紹介につながるんですよこれが!! ああもう、ただただ涙でした。感涙です。ビブリオバトルなら完敗です。
即座にポチりましたよ、ええ。そして、あちらの本も読んでみてじんわり。改めてこの本の中であの本を紹介してくれた(ややこしい)キャラの心情にインサイドしてやっぱりまた涙するのでありました。

まだちょっと時期的には早い(お盆の話だもんねー)かもですが、いろんな本の紹介がされていて、私のようにこの本をきっかけにしてきっと別の本を読みたくなるとおもいます。学校がなくなって暇を持て余してる皆さんにも、学校に行ってない人達にも、人類すべてのSF好きに超おすすめの本でした。

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さらに続き!③と④まとめてレビューしました


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