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『火星へ』レビュー

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『火星へ』上・下

メアリ・ロビネット・コワル (著) / 酒井昭伸 (翻訳)

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↑で『宇宙へ』向かった初の女性宇宙飛行士〈レディ・アストロノート〉シリーズの続編です。

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1960年代初頭。前作、『宇宙へ』で地球に衝突し未曾有の大被害を引き起こした〈巨大隕石〉の影響は、いったんは落ち着いてくれたものの、大氣中に広まった塵による温室効果で遠からず地球は死の星になってしまうことは確実視されていました。
人類存続のためには速やかに宇宙へ、そして他の惑星へ移住しなくてはなりません。
すなわち宇宙開発は地球に住む全人類にとって緊急・最優先の課題となり、史実を追い越す勢いで急ピッチで開発がすすんだのです。
おかげで、アフター〈巨大隕石〉10年目の本作の冒頭では、〈レディ・アストロノート〉として知られる計算者で宇宙飛行士の主人公エルマは、月に建設されたコロニーで宇宙近距離連絡艇〈月バス〉のパイロットとして働いていました。
人類の次なる目標は火星にコロニーを建設し、移住をすすめること………。という状態なのですが、急速に開発が進んだ宇宙関連テクノロジー以外の社会問題などは当然60年代そのまま。国際航空宇宙機構内部でも人種や女性への偏見・差別が渦巻いている。という状況。
そんな中、エルマは、ひとたびは辞退したものの、またまた宇宙開発の広告塔として火星行きを、半ば強制的に命ぜられます。

こうして、人類社会の偏見や風当たりの強い中、住み慣れた地球から何千万キロも離れた火星行きの船という閉鎖環境でエルマの新たな戦いがはじまるのでした……。

前作もよかったですが、今回もよかったー☆
もしもアポロ計画以降も宇宙開発が突き進んでいたら………? という、”IF” な宇宙開発ネタのオンパレード!
ちょい懐かしめな宇宙ネタと、ありえたかもしれない歴史改変がいい具合に混ざり合っています。

ライトスタッフたる宇宙飛行士たちの日常ネタも普通に興味深いのですが、ただきらびやかなスポットライトのあたる表面だけでなく、ストレスフルな日常の背景、精鋭たちゆえんの人間関係の葛藤やその中にみえるプロ意識なんかがすごくよいです。(そんな中にもはびこる差別意識の根の深さよ!><)

いろんなエピソードが、史実のNASAの裏側でもきっとこうだったんだろうなあと思わせてくれます。
とくに、人類の宇宙開発のために甘んじて広告塔をやっている主人公エルマの内面と、カメラに映る広報用笑顔のギャップが萌えるのです(意味違う?w)

現在だって解決できていない性別や人種差別がまだまだ色濃かったあの時代、ただ一人まるで現代人のような感性の持ち主であるエルマは、天翔ける女性宇宙飛行士として、差別と闘いつつ未来と火星を目指すのでした。

前作同様、宇宙好き女子はマスト読むことw。また、宇宙好きな男子にもぜひ読んでほしい、けっこうリアルでハードな歴史改変宇宙SFでした。

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