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サンキューと中学生と地図について思うこと

別にタイトルと写真で釣るつもりは無い。

お笑いが好きな方が見たら、「パンサーともう中学生とゴー☆ジャス」についての記事と思うかもしれないが、全く関係ない。

おとといパンサー向井君の記事を書いたが、今日はパンサーの記事を書く訳ではない。


世の中には色々な職業がある。

僕が働く立場として触れたのは、ごくありふれたものばかりだが、過去を振り返ると「あれは何だったのか」と思うことがいくつかある。

高校に入り大学を卒業するまでの間、僕もいくつかのアルバイトを経験した。

今日は、そのアルバイトの話。


case1. 大手ファーストフード店『L』

高校1年生、人生初のアルバイトはハンバーガーチェーンでの仕事だ。

いま考えれば理不尽な話で、「支給しろや!」という話だが、最初に命じられたタスクは「ヘアピンを買ってくる(自費)」だった気がする。
サンダーバードの隊員が被っているような形の紙製帽子を頭に留めるために必要なのだという。 
(僕のフォロワーさんは分かってくれるはず。いや、僕もリアルタイム世代ではないが)

僕が働く店舗はショッピングセンターのテナントのひとつだったため、おなじく入居している100円ショップにヘアピンを買いに行った。
特に迷うことなく購入出来たのだが、「男の子がヘアピンを買う」というイベントは僕の人生においては後にも先にも発生しないため、何となく記憶に残っている。

多少知られてはいる事だが、僕が働く『L』を含めた多くの大手ファーストフードチェーンのルールとして、「どんな時でも返事は『サンキュー!』」というものがある。
今でもそのマニュアルは健在なのだろうか。

そこまで気合いを入れて叫ぶ必要はないが、現代でいうパンサー尾形が店内に複数人いるようなイメージだ。
※というわけで、トップ画像は『サンキュー!』を叫ぶパンサー尾形氏。

注文が入れば
「はい、サンキュー!」

キッチンで商品が出来上がって
レジ係が受け取る時にも
「はい、サンキュー!」

レジの人が
「一万円入りまーす」と言えば、
「はい、サンキュー!」


正気の沙汰ではない。
※個人の感想です。

一万円札を出して釣りを待つお客さんは、
「え、私の一万円札で飲みにでも行くつもり?お釣りは?」
となったことだろう。

日本語の「はい」と英語の「サンキュー」。
どう考えても食い合わせが悪い。

マグロの刺身にケチャップをかけるくらい、食い合わせが悪い。
イエス高須クリニックどころの騒ぎではない。

さらには…

偉い人:「これをこうして、こっちを優先しないと〇〇になるから気をつけなきゃ」
僕:「はい、すみません!」
偉い人:「返事はサンキュー!でしょ!」
僕:「はい、サンキュー!」

ミスをして注意を受ける→サンキューで返事

やはり食い合わせが悪い。

オムライスにワサビを乗せ醤油をかけるくらい、食い合わせが悪い。
イエス高須クリニ

そして追い打ちをかけるように…

レジの人:「バーガー、ワン、ポテト、ワン、ムラサキイモムシパン、ワン、プリーズ!」

キッチンの僕:(なんだその変な英語は。そして…む、紫イモ虫パン…だと…?!)

パッケージを見れば一目瞭然だった。

「紫のイモ虫で作ったパン」
ではなく、
「紫芋で作った蒸しパン」
で、
紫芋蒸しパンムラサキイモムシパン」。

勘違いした僕も悪いが、それ以上に悪いのはネーミングセンスだ。
耳で捉えられる語感が最悪に気持ち悪すぎる。
開発者の量刑は3年以下の懲役くらいが妥当なところだろう。

まぁ何やかんやで楽しく働き、欲しかったギター用の機材も手に入れ、受験勉強が始まる頃に僕はハンバーガーの世界から足を洗った。


case2. 塾講師

いろいろな縁があり、大学生になった僕は個別指導を売りにする学習塾でアルバイト講師として働いていた。
勉強を教えることについては大変なこともありつつも、それなりにこなしていたように思う。
このアルバイトで巻き起こった代表的な事件としては、「大学生の僕、女子中学生に告白される」である。

このアルバイトを始めて2年ほど経った頃、授業を受け持っていた中学3年生の女の子に手紙を渡され、さらには僕の帰りを待ち伏せされ、付き合って欲しいと告白された。
彼女が言うには、僕が休み時間に建物の外で隠れてタバコを吸っていたのがツボに入り、だんだん気持ちが…とのことだった。
令和になった現代であれば、隠れてタバコを吸っているのがカッコよく見える、などということは無かっただろう。

歳の近いお兄さん、しかも先生と生徒の許されざる恋。
アニメなどにありがちな設定だが、実際に起きてみると、これはこれで大変である。

年齢差や状況を理由に断れば「私が卒業したら…」となるし、「あ、オレいま恋愛とか興味無い時期なんだぜ」などと身分不相応にカッコつければ、「振り向いてもらえるまで待ってていいですか!」となるかもしれない。

僕は彼女に対して恋愛感情も無ければ、法を犯すつもりも、中学生を食い物にするような特殊な性癖も持ち合わせていないので、どうにかこうにか丁重にお断りした。
(ちなみにこのくだり、イケメンがモテ自慢をしているように見えるかもしれないが、そういうことではない。僕はイケメンでもなければ竹野内豊に毛が生えた程度、自慢をするつもりもない。)

本当に不可解な出来事はこの後に起きる。

告白され、丁重に断った日から数ヶ月後のある夜、実家に暮らしていた僕はバイトが終わり原付バイクで家に帰った。

玄関に入ると見慣れない女性物のスニーカーが一足。
そういえば両親は旅行に行っており不在。

誰だ?

と思っていた矢先、明らかにシャワー後、といった雰囲気の若い女性が廊下から出て来る。

当然、「え、誰?!」となり、傘立てから釘バットを抜き、ポケットから出したメリケンサックを右手に付ける。

同時に、そこで彼女が誰かに似ていることに気付く。

「〇〇××です!妹がいつもお世話になってます!」

例の中学生の姉だという。

どういう経緯かは未だに分からないが、その後に姿を現した弟が言うには、その中学生の姉(高校生)と僕の弟(高校生)は付き合っているという。
両親が旅行で不在なのをいいことに、家に泊まるようだ。

「あ、そうなんだ。ごゆっくり。」とだけ言い、自室に入った。

不思議な運命の巡り合わせと、絶妙な設定に、僕は思った。

ある姉妹と、ある兄弟の想いが複雑に交錯するこの物語に対し、純粋にこう思ったのだ。
聡明な読者諸君も同じ想いだろう。



『怖ぇーよ!!どこのエロ漫画だよ!!なんだよこれ!!ふざけんなよ!』



特にそれ以上のエピソードもなく、ほど無くして2人は別れたらしい。


いま考えても、「あの 一連の出来事、夢だったっけ?」と思うくらい、少女漫画と少年漫画と成人漫画を足して3で割ったような現実味の無い出来事だった。
その割にはストーリとして薄味だし面白いオチもない。

本当にあれは何だったのだろう。
これもノストラダムスの仕業か?

誰か教えて欲しい。

大学卒業と共に、僕はこの塾の講師を卒業した。


case3. 住宅街をウロウロと徘徊する仕事

大学生という生き物はとにかくお金が無い。
いくら稼いでも不思議なことにアルコールと一緒に揮発してしまうのだ。
そんな飲んだくれ大学生はレギュラーのアルバイト(僕の場合は塾講師)以外に、しばしばイレギュラーな単発バイトを入れる。

この日舞い込んだ依頼は、『地図を持って住宅街をウロウロと徘徊する仕事』だ。
内容の説明を聞くと、車載用ナビのメーカーが依頼元であり、カーナビの地図データに立体情報を付与する為のデータ収集だという。

「この建物は倉庫。」
「この建物は3階建て」
「この建物は4階建てのお店」
「この建物は8階建てのマンション」
「この建物はもう無い」
といった情報を、建物の輪郭のみが描かれた白地図のような物に、手書きの文字を書き込んでいく。

住民から「無断で人ん家ひとんちの前で何やってんだ!」と怒られることも当然あった。
何をやっているのか、と問われても、自分でも何をやらされているのかよく分かっていない
9,000円もらえるからウロウロしているだけだ。

とりあえず「すいませーん」と頭を下げる。

真夏の炎天下の中、馬鹿大学生の僕はタンクトップ姿で住宅街をうろつきながら地図と格闘していた。
たまにコンビニでガリガリ君を買って休みながら。

あの日食べたガリガリ君以上に美味しいアイスを僕はまだ知らない。
(略称:あのガリ)

お察しの通り日焼けで肩の皮はベロベロになり、めでたく水膨れが出来た。
モンスターのような肩になり、幼少期から世話になっている病院に行ったところ、
「日焼けっていうか、もはやヤケドだな。何やってんだよ。馬鹿だなー。」
という有難い診断を受けた。

医者から馬鹿という診断名を授けられたのだから、もう目も当てられない。
馬鹿の治療薬は処方されなかったし、今も馬鹿が治った気配はない。
恐らく僕はこの先も一生馬鹿のままなのだろう。

貴方が自分の車のナビに表示された建物の絵を見て、「わぁ~、立体的な表示~♪」と思った時には、少しでいいので僕に感謝して頂きたい。
その美しい表示はもしかすると、僕をはじめとする金に目がくらんだ学生共の犠牲のもとに成り立っているのかもしれない。


きっと世の中には僕の知らない変わった仕事が沢山あるんだろう。
僕も、他にもいくつか奇妙なバイトを経験したような気もするが、また気が向いた時にでも書くことにする。



本文中に私の容姿が『竹野内豊に毛が生えた程度』という事実とはかけ離れた虚偽の表現がありましたことを訂正させて頂きます。実際には竹野内豊には似ても似つかない馬鹿人間であることを深くお詫び申し上げます。二度とこのようなことのないよう、指導を徹底して参ります。大変申し訳ございませんでした。



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