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鳥かごの鍵 16

「明日暇?行っていい?」
私は久しぶりに冬子に連絡した。

冬子とは高校時代からの友達。
お互い「集団」が苦手で、私達は2人でいることが多かった。

冬子は自宅でライターの仕事をしている。

「13時以降ならいいよ。」

「OKじゃ明日」

気を使わないでなんでも話せる唯一の友達だ。

次の日

私はお土産を買う為に、
早めに家を出てデパートで、
冬子の好きないちご大福を買った。

冬子のアパートは私の家から電車で40分のところにある。

少し遠いのでなかなか会う機会がない。

インターフォンを押すと冬子が出て来た。

「久しぶり元気だった?」

と聞くと、

「何があったの?あんたが私のところに来るのは、
相談がある時でしょ?」


「ひどっ!そんなことないよ…
まっ聞いて欲しい話しはあるけどね。」

「やっぱりね!まっ座ってお茶入れるから。」

「これお土産」といちご大福を出す。

「ありがとう!いちご大福好き!」

「冬子は何か変わったことあった?」

「何も無い!仕事に追われる毎日だよ!
私の話しはいいよ、何があったの?」

冬子は自分のことはあまり話したがらない、
でも人の話しを聞くことは好きみたいで、
昔から良く相談相手になってくれた。
私は月のこと、彼のことを冬子に話した。

「うんうん、話しはわかったよ、
で?何悩んでるの?結論は出てるじゃない、
月が好きなんでしょ?
彼と別れるしかないじゃない。」

「え!そんな簡単に別れられない。」

「月には彼女がいるかもしれない、
月が自分のことを好きかわからない、
だから彼とは別れられないの?
月はまだ子供で生活が安定していない、
大手企業に勤める彼は将来の心配がない、
だから将来を考えたら彼と別れをすぐに決断出来ない?
彼は月に振られた時の保険なの?」

言い返そうとした、
でもすべて本当のことだから私は何も言い返すことが出来なかった。

冬子は人の心が読めるのでは?
と思うことが時々ある。

「そんな言い方しないでよ~全部当たってるけど…」

「この歳になると簡単に決断出来ないことが増えるよね。」
と冬子がため息をつく。

「冬子の彼は元気?
うん元気だよ、今日の夕方来る予定、
だから夕方には帰ってね!」

「えっ!うん、わかった!」

「まだ彼のこと好きなの?」
冬子が聞いてきた。
私は返事に困った。

「彼のことは嫌いではない、
優しいし気が利くし、頭はいいし、
でも…
彼といてもドキドキもワクワクもしない。
彼は私を都合のいい女って思ってる気がして…」

「月とメールしてドキドキするのは、
浮気だからでしょ?
罪悪感ってスパイスがあんたを興奮させてるだけだよ。
月が好きって感情は一時的だと思うよ。
このままダラダラ彼と結婚もしないで付き合うことはおすすめ出来ないし、
月とのメールもいつか終わりが来る。だから月に会って見たら?」

「え~~!嫌だ!」

「じゃこのままずっとメールしてるだけなの?
現実を見なさい!あと少しで30歳になるんだよ。」

確かに私は現実から逃げていた、
結婚からも、月と会うことも…
彼と向き合うことも…

「わかった、良く考える。」

つづく



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