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『フランス料理』って何が出てくるの?

「フランス料理って何?」

「んー、なんだろう?キッシュとか?」

「あと何がある?フォアグラとか?」

駅のホームで、ふと耳にしたこの会話。フランス料理と聞いて、まず思い浮かぶのがキッシュやフォアグラ。それも間違いではないが、それで全てを語れるわけでもない。実際、フランス料理はその一言で括るにはあまりに奥深い世界だ。

フランス料理は、長い歴史の中で洗練され、世界中の美食家たちに愛されてきた。その背後には、地域ごとの風土と伝統、そして厳選された素材と技術が織りなす豊かな文化が広がっている。

キッシュフォアグラ、もちろんこれらもフランス料理の一部だが、それ以上にバラエティ豊かで、多様な料理が存在する。例えば、プロヴァンス地方の魚介をふんだんに使ったブイヤベースや、リヨンの伝統的なコック・オ・ヴァンなど。フランス料理は、単なる食事ではなく、一つの芸術とさえ言えるかもしれない。

このように、フランス料理はその豊かな伝統と多様性によって、多くの人々を魅了し続けている。


「もっと一言で語るなら何が正解だろうか?」

フランス料理とは、一言で言えば「美食の芸術」だ。もちろん、それだけでは語り尽くせない。フランス料理は、地域ごとに異なる豊かな食文化を持ち、季節の移ろいを感じさせる繊細な味わいが特徴だ。そして、その美しさは、見た目の華やかさに留まらず、素材の持ち味を最大限に引き出す技術にある。

さらに、フランス料理はその土地の風土や歴史と深く結びついている。

例えば……

プロヴァンス地方では、太陽の恵みを受けたトマトやオリーブオイルをふんだんに使った料理が親しまれ、アルザス地方では、ドイツ文化の影響を受けたビストロ料理が楽しめる。それぞれの地域が持つ個性が、フランス料理全体をさらに豊かにしている。

こうして見てみると、フランス料理は「美食の芸術」という表現に留まらず、歴史や文化、風土と密接に結びついた、奥深い食文化の集大成だと言えるだろう。

アキテーヌ料理
鴨を使った料理(フォワグラ、コンフィ、マグレ・ド・カナール、)ピプラッド、バスク鶏、エスペレットの赤トウガラシカヌレ(ボルドーの郷土菓子)ボルドーワイン
リヨン料理
アンドゥイエット・ド・リヨン(内臓ソーセージ)、タブリエ・ド・サプール(牛の胃袋のフライ)、クネルサラダ・リヨネーズ(ベーコン、クルトン、ポーチドエッグが入ったサラダ)、リヨン風スープ(オニオンスープ)。
オーベルニュ料理
ピュイ・アン・ブレーの緑レンズ豆、トリュファード
ブルゴーニュ料理
エスカルゴブッフ・ブルギニョン(牛肉の赤ワイン煮込み)、パセリ入りハム、 ディジョン産マスタードクロッタン・ド・シャヴィニョール、ブルゴーニュワイン
ブルターニュ料理
小麦粉のクレープ、そば粉のガレット、魚介類、ファーブルトン(プルーン入りフラン)、 クイニー・アマン
シャンパーニュ・アルデンヌ地方の料理
白ブーダン、シャンパン、ハムなどの加工品、シヴェ(イノシシや鹿の赤ワイン煮込み)、ブロッチュ brocciu(羊乳チーズ)
フランシュ・コンテの料理
チーズ(コンテモルビエ)、アミガサタケ添え雌鶏料理、モルトー・ソーセージ、黄ワイン、キルシュ
ラングドック・ルシヨンの料理
カスレブランダードガルディアーヌ(肉の蒸し煮)
リムーザン 
そば粉のクレープテット・ド・ヴォー(子牛の頭肉)、りんご
ロレーヌ 
キッシュ・ロレーヌ、ビール、白ワイン、果実酒
カスレ、フォワ・グラ、ハムやソーセージ、フランドル風牛肉のビール煮
ノルマンディー 
カマンベールチーズ、子牛肉のソテー
プロヴァンス・アルプ・コート・ダジュール
ブイヤベース(魚のスープ), アンショイヤード、アイオリ(ニンニク入りマヨネーズソース)、ピストゥフガース(オレンジ風味のブリオッシュパン)
リヴィエラ
ニース風サラダ(トマト、インゲン、ゆで卵、ツナ、アンチョビ入りのサラダ、ラタトゥイユ
ローヌ・アルプ
サヴォワ地方のチーズ・フォンデュ、クネル、サラミやハム
海外領土
サモサ、カリ(肉や魚を野菜と煮込んだ料理)

フランス料理の"コース形式"

「フランス料理って何?」と聞かれて、まず思い浮かぶのは、おしゃれなレストランでのコース形式の食事かもしれません。

フランス料理は、その名前の通りフランス発祥の料理で、前菜からメインディッシュ、そしてデザートまでが順番に提供される形式が一般的です。このコース形式は、食事を楽しむ時間そのものを大切にするフランスの食文化を象徴しています。

1:Apéritif (アペリティフ)
2:Amuse-bouche (アミューズ・ブーシュ)
3:Hors d'oeuvre (オードブル)
4:Potage (ポタージュ
5:Poisson (ポワソン)
6:Sorbet (ソルベ)
7:Entrée (アントレ)
8:Viande (ヴィアンド)
9:Légumes (レギュメ)
10:Salade (サラダ)
11:Fromage (フロマージュ)
12:Dessert (デザート)
13:Café (コーヒー)
14:Digestif (ディジェスティフ)

ソルベはその起源をたどるとイタリアに行きつくのが一般的です。イタリアの「ソルベット」が元祖で、冷たいデザートとして愛されてきました。ところが、フランス料理でもこのソルベがコースの一部として取り入れられているのは興味深い点です。それが「グラニテ」ではなく「ソルベ」として提供されることも多いのです。

フランス料理の伝統的なフルコースは品数が多いですが、現代の日本ではフルコースをそのまま楽しむことは少なくなってきています。

忙しい日常生活や、よりカジュアルで手軽な食事のスタイルが一般的になっているため、フランス料理も日本の食文化に合わせて進化しています。

例えば、カジュアルなビストロやカフェスタイルのフレンチでは、前菜やメイン、デザートの3品程度に縮小されたコースが主流になっています。これにより、より短時間でフランス料理を楽しむことができ、価格も手頃になるため、幅広い層に受け入れられています。

フレンチとイタリアンの違い

フランス料理とイタリア料理はどちらもヨーロッパを代表する料理ですが、いくつかの違いがあります。イタリア料理は、シンプルで素材の味を活かす料理が多いのが特徴です。

例えば、オリーブオイルやトマトを中心としたパスタやピザなどがその代表です。一方、フランス料理は、ソースが重要な役割を果たします。フレンチでは、複雑な味わいを持つソースが料理全体を引き立てることが多く、これがイタリアンとの大きな違いです。

また、フランス料理は食事の順番やマナーも重視します。コースの順序に従って料理が提供されることで、食事全体が一つのストーリーのように展開していきます。この点も、よりカジュアルな雰囲気のイタリアンとは異なるフレンチならではの特徴です。

じゃあパスタはフレンチでは出てこない?

フレンチにパスタを足すことは間違いとは言えませんが、厳密にはフランス料理としては珍しい組み合わせです。

つまり、伝統的なフレンチではパスタは登場しませんが、クリエイティブな料理の一環として、パスタをフレンチ風にアレンジすることは可能性としてはゼロではありません。

例えば、ニョッキはイタリア料理の一部ですが、フランス料理にも似たような料理があります。フランスでは「ニョッキ・ア・ラ・パリジェンヌ」と呼ばれる料理があり、これはイタリアのニョッキに似ていますが、作り方が少し異なります。

イタリアのニョッキは通常、ジャガイモや小麦粉で作られますが、フランス版は小麦粉、バター、卵で作ったシュー生地を使い、茹でた後にグラタン風に焼き上げることが多いです。パリジェンヌ風ニョッキは、フランス料理においても親しまれている一品で、イタリアンとフレンチの間にある興味深い料理です。

ですので、フランス料理にニョッキを加えるのは必ずしも「間違い」ではなく、むしろ両国の料理が持つ豊かな伝統の交差点といえるでしょう。

フランス料理はイタリア文化と根深い

フランス料理にはイタリア料理の影響が色濃く反映されています。特に16世紀にフランス王アンリ2世と結婚したカトリーヌ・ド・メディシスが、イタリアの料理人や技術をフランスに持ち込んだことが、フランス料理の発展に大きな影響を与えました。

さらに、フランス料理の起源を遡ると、ローマ帝国の影響も無視できません。ローマ帝国がヨーロッパ全域にわたって広がっていた時代、その食文化や調理技術が各地に伝播し、後のフランス料理の土台を形成することとなりました。特に、ソースの使用テーブルマナーなど、現代のフランス料理に欠かせない要素が、古代ローマの影響を受けていると言われています。

このように、フランス料理は決して孤立した存在ではなく、歴史的にさまざまな文化と結びつき、豊かに発展してきたものなのです。

ある時、カトリーヌは宴会で「フォークの使い方を知らない人がいる」と発言し、それに対して宴席にいた貴族たちは、自分たちはフォークの使い方を知っていると主張しました。カトリーヌは彼らが正しくフォークを使っていないことを指摘し、フォークを使う際に、イタリアの方法で「鋭い歯」と「丸い歯」を使い分けることを示します。

フランスの貴族たちに正しいフォークの使い方を教えたとされています。

調理技術にフォーカスするフランス料理文化

フランス料理は19世紀に入り、オーギュスト・エスコフィエのようなシェフによって技術が体系化されました。

エスコフィエは、「クラシック・フランス料理」の基本となる技術やソースを整理し、体系的に記録しました。このように、フランス料理は明確な技術的基準を持つことが特徴であり、それが高い評価を受ける要因の一つとなって

エスコフィエとは、フランスの偉大なシェフであり、料理の技術や文化に大きな影響を与えた人物です。彼の名前はオーギュスト・エスコフィエ(Auguste Escoffier)で、19世紀から20世紀初頭にかけて活動しました。彼はフランス料理を現代的な形に整え、体系化したことで「近代料理の父」として知られています。

エスコフィエの主な業績

  • 『料理の手引き(Le Guide Culinaire)』という書籍を執筆し、約5,000のレシピを体系的にまとめました。この本はフランス料理のバイブルとされ、今でも多くのシェフにとって教科書的存在です。

  • クラシックなフランス料理の基礎を築き、料理の各要素(例えばソース、メインディッシュ、デザートなど)を洗練させました。彼が確立した技術やメニュー構成は、今日のフランス料理に多大な影響を与えています。

  • ホテル業界での革新も行いました。リッツ・カールトンなどの高級ホテルでシェフとして働き、厨房の効率化を図るために「ブリゲード・システム(分業制)」を導入しました。このシステムにより、厨房内の業務が効率的に行われるようになりました。

  • ソースの重要性を強調し、基本ソースとその派生を体系化しました。彼が定めた基本ソースはフランス料理の基礎となり、ソースが料理の味を引き立てる重要な要素として確立されました。

5つの基本ソース-フレンチの基礎

フランス料理を語るうえで外せないのは、その「ソース」の重要性です。。特に、基本となる「エスパニョル」「ベシャメル」「ヴルーテ」「トマト」「オランデーズ」という5つの基本ソース(ソース・マザー)から派生する無数のソースが、フランス料理の豊かさと奥深さを支えています。

エスパニョルソース(Sauce Espagnole)

ブラウンソースをベースにしたソースで、肉料理に使われることが多いです。

  • ドミグラスソース:エスパニョルを煮詰めて、さらに濃厚に仕上げたもの。ビーフシチューなどに。

  • ペリグーソース:黒トリュフとマデイラ酒を使った、非常に香り高く、リッチな味わいです。デミグラスソースやエスパニョルソースに細かく刻んだ黒トリュフとマデイラ酒を加えて作られます。

  • ボルドレーズソース:赤ワイン、シャロット、デミグラスから作られる濃厚なソース。ステーキに。

  • ソース:デミグラスにマスタードとピクルスを加えたもの。豚肉料理に最適。

  • リヨネーズソース:玉ねぎ、白ワイン、デミグラスを使ったソース。肉料理全般に。

2. ベシャメルソース(Sauce Béchamel)

白いミルクベースのソースで、クリーミーな仕上がり。

  • モルネーソース:ベシャメルにチーズを加えたソース。グラタンやクロックムッシュに。

  • ソース・ナンチュア:エビや甲殻類のエッセンスを加えたベシャメル。魚介料理に。

  • ソブリーズソース:マッシュルームを加えたベシャメル。鶏肉やパイ包み料理に。

  • ソース・フィヌベル:シャンピニオン(きのこ)や鶏のエッセンスを混ぜたベシャメル。軽めの肉料理に。

3. ヴルーテソース(Sauce Velouté)

ルーに出汁を加えた、軽いソース。魚介や鶏肉によく使われます。

  • アリュメットソース:卵黄とクリームを加えたヴルーテ。白身魚に。

  • ソース・スープレーム:クリームを加えたリッチなソース。鶏肉に合う。

  • ソース・オーロール:トマトピューレを加えたピンク色のソース。魚料理に。

  • ソース・アルブフェラ:フォアグラとクリームを加えた濃厚なソース。特に鶏肉料理に。

4. トマトソース(Sauce Tomate)

フランス風のトマトベースソース。イタリアのものとは少し異なります。

  • ソース・プロヴァンサル:トマトソースにオリーブ、ハーブ、ガーリックを加えた地中海風のソース。魚介や野菜に。

  • ソース・ピキントマト:トマトソースに辛味やビネガーを加えたもの。辛めの料理に。

  • ソース・クレオール:トマトにピーマンやスパイスを加えたもの。鶏肉や魚に。

5. オランデーズソース(Sauce Hollandaise)

バターと卵黄をベースにした濃厚でクリーミーなソース。

  • ベアルネーズソース:オランデーズにエストラゴン、シャロット、白ワインビネガーを加えたもの。ステーキやグリル肉に。

  • ソース・ムスリーヌ:オランデーズにホイップクリームを加えて軽やかにしたもの。アスパラガスや魚に。

  • ソース・フロランティーヌ:オランデーズにホウレンソウのピューレを加えたもの。魚や卵料理に。「フロランティーヌ風(à la Florentine)」は、料理のスタイルを指す用語です。

  • ソース・マルトレーズ:オレンジジュースを加えたオランデーズ。魚料理や鶏肉料理に。

その他の派生ソース

  • マヨネーズ系:マヨネーズもフランス料理に欠かせないソース。そこから派生して、アイオリ(ガーリック入り)やルイユ(唐辛子入り)などがあります。

  • ヴィネグレットソース:オリーブオイルとビネガーをベースにしたサラダ用のソース。ハーブやマスタードを加えてバリエーション豊かに。

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