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純銀製のスプーンをつくる体験をしてきました。

純銀製のアイススプーンを製作するワークショップに参加してきました。

主催は日本の伝統をより身近なものにするために、職人の方をゲストに招いたオンライントークイベントや、街歩きイベントなどを日々開催している”けにはれ”。

https://www.facebook.com/dentouan

講師は、銀師(しろがねし)の上川善嗣さん。江戸時代から続く銀細工の技を現在に受け継いでいます。これまでに数々の賞を受賞をしたり、テレビ出演などもしたりしています。昨年7月に、”けにはれ”のオンライントークイベントに登壇していただき、銀細工の技について語っていただきました。

https://www.nisshin-kikinzoku.com/

まずは台東区の下町にある、上川さんの工房である「有限会社 日伸貴金属」へお邪魔します。建物に入るとギャラリースペースがあり、杯やペンダントなど、数々の銀器が並んでいます。実際に持たせていただいたのですが、ずっしりと質感があるのに加えて、表面は滑らかで「まさに鏡!」といった感じでした。

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その奥にあるのが作業スペース。まず目を惹くのが大量の工具です。金槌や木槌や、釘を大きくしたようなものなどが並んでいます。もちろん職人の方にとってはそれぞれが別のものであるのですが、素人が見ると違いが分からず、同じような道具がいくつもあるように感じてしまいます。

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ちなみに上川さんによると、並んでいる道具の多くが「私よりも先輩」とのこと。かつては道具を作る職人さんも近隣にいらしたようですが、現在はそうした技術はほとんど絶えてしまっているため、今ある道具を大切に使うようにしているそうです。民芸品として博物館の展示ケースに収められていても不思議ではない品々が現役で活躍しています。

作業する様子も少し見せていただきます。切り株のような作業台に大きな釘のような金属の工具を打ち立てて、その上に銀の板を被せます。それを金槌で慎重に叩いていくことで、少しづつ銀の板の形を変えていきます。銀は柔らかく延びやすいため、均一な厚さを保ったまま変形させていくのは技術が要るようです。

そのような工程を経て、表に飾ってあるような銀器となるのです。一枚の銀の平板が、あのように複雑な形で、鏡のように滑らかで淀みのない表面に仕上がっていく。その間にはどんな技術があって、どのくらいの時間がかかるのか、正直まったく想像がつきません。

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上川さんがしばしば口にしていたのが「用の美」という言葉です。上川さんがつくる銀器は見た目が美しいことに加えて、実用的でもあります。「美」と「実」の両方を兼ね備えるという考え方は、海外にはない日本特有のものだそうです。使えば使うほど手に馴染んでいき、表面を磨くなどの手入れをすることで永く利用できます。

その後、作業会場へ移動します。工房から歩いて数分の場所にある東三筋会館という建物は、地域の集会所のような施設でしたが、年季が入って味のある建物でした。

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純銀の板からスプーンの方にくり抜いたものは、あらかじめ上川さんが用意してくださっていました。通常、「シルバー」と呼ばれるアクセサリー類は、銀含有率92.5%のものが多いのですが、今回使うのは99.9%の純銀です。

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まずはスプーンの柄の部分に模様を入れます。ペンで下書きをした後に、小さな金槌で叩いて模様を付けていきます。まったくイメージがわかないので、とりあえず横に線を引いてストライプ風にするのがいいかなーと、、

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思ったのですが、狙ったところに当たらず、結局全面的に模様を付けることになりました(笑)。他の参加者のものを見ると、家紋のような柄やイニシャルなどを入れていました。みんな器用で凄い、、、

叩く強さは手のひらを叩いて痛くない程度。それでも銀の表面にしっかりと模様がついていきます。そのくらい柔らかくて加工がしやすいのが純銀の特徴です。

模様入れが済んだら窪みを付ける作業に移行します。窪んだ木の台の上にスプーンを置いて、その上から木槌で力強くたたきます。さっきまでの繊細な作業とは打って変わるので戸惑ってしまいます。上川さんからの「もっと強く叩いて!」という声に従って叩き続けると、だんだんとスプーンの形になっていきます。

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上川さんに形を整えていただき、最後に研磨剤で磨くと、ピカピカの純銀のスプーンが完成しました。

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正直、模様に関しては「もっといい感じにできたら、、」と後悔がないこともないです(笑)。手に持ってみると、小さいながらずっしりと重みがあります。スプーンのくぼみの部分に反射する、ぼやけ気味の自分の顔を眺めているとなんだか愛着が湧いてきます。
作業が終わって、みんながそれぞれの作品を見せ合いっこしたのですが、スプーンを手に持って掲げる姿を見ていると、ふと、ウルトラマンのとあるシーンを思い出しました。
最後は用意してくださった木箱にしまって持ち帰ります。

さて、銀の特徴のひとつとして、熱伝導率の高さがあります。手に持ってからその体温がスプーンの先まで伝わる速度は、アルミ製のものの2倍だそうです。ワークショップの間も、氷を使ってその特性を体感しました。

固いアイスの代名詞といえば東海道新幹線の車内で販売されているアイス。開封直後はプラスチックのスプーンがまったく歯が立たないことで有名です。ワークショップの間にも「これで新幹線のアイス食べたいねー」なんて声が上がっていました。

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という訳で来ました。車内だけでなく、東京駅の新幹線ホームの売店でも購入できます。

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手に持って20秒程で、体温がスプーンの先まで伝わります。開封してスプーンを挿してみると、、、

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軽く力を入れるだけで、すぅーっと気持ちよく入っていきます。溶けるのを待つ必要はありません!濃厚なバニラの味が口の中に広がります。

15分で完食。東京駅で買えば、新横浜駅着までには食べられそうです(笑)

日伸貴金属さんでは、現在クラウドファンディングを実施中(2022年3月28日まで)。今回作ったスプーンの他にも、指輪やバングル、杯やタンブラーなど様々な銀器を作る体験ができます。

世界に一つだけ、自分だけの作品をつくれるというのもあるのですが、実際に手を動かすことで、職人の方が見ている世界をほんの少しだけ垣間見れたような気がしました。作業工程や、銀を叩く時の力加減などを体感して「こういう風に作られていくんだ」ということを知る機会となりました。と同時に、工房にあった作品ができていくまでの道のりの果てしなさを改めて感じることとなりました。

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