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小説「メトロノーム」⑰
先生はしばらく録音の演奏を聴いてから、
「この演奏、全員で聴きましょう。それでみんなにも、どうしたらもっと楽しくて良い演奏になるか、聞いてみようと思うわ。今日でふたりが放課後に残って練習するのは、いったんおしまいにしましょう」
小説「メトロノーム」⑮
授業中も、ぼーっとしたり、ほおづえをついて先生の話などまるで聞いていない風だったのに、今日はきちんとノートを取っているようだった。
2時間目が終わったあと、れい子は教室を出ていく先生をおいかけて、
小説「メトロノーム」⑪
「一度、練習見に行こうかしら」
お母さんがそう言うと、
「あたしも先生に同じ提案したよ、そしたら、先生も忙しくないなら見てほしいって。でもだいぶ気使ってたよ、忙しいんじゃないかって」
ゆう子が、ひとくちジュースを飲んだ。
小説「メトロノーム」⑩
「はぁ?そんなわけないでしょう?!バカじゃないの?」
「さっき先生に言ったことは、うそなのね。わたしにちゃんと謝るって言ったくせに!うそつき!!先生の前ではいい子ぶっちゃって!」
小説「メトロノーム」⑨
ゆう子はそそくさと帰り支度をしていた。れい子は今日こそ、ゆう子との話のきっかけをつかもうとしていた。
学校の玄関を出ると、ゆう子がいた。まるで立ちはだかるようだった。
小説「メトロノーム」⑧
「先生、リコーダーパートも、もっと思い切り吹いてもいいですか?」
「そうね!みなさん、もう演奏は出来るようになっているから、そうね……踊るような感じで、演奏してみましょうか!じゃあ昨日は4分音符=116だったから、今日は4分=120にしてみましょう」
小説「メトロノーム」⑦
「……ゆう子さん、練習あまり楽しくない?昨日、れい子さんがびっくりしてすぐに家に持って帰ってもとに戻そうとしてくれたんだけど、今日、それもふくめて、昨日のことも正直に話してくれたの。どうしてこんなことしたのか、ゆう子さんの話も聞いて、もっと音楽を楽しめるように、先生も直した方がいい部分があれば直したいのだけど…」
もっとみる小説「メトロノーム」⑤
朝、目が覚めると、れい子は心配事があっても、けっこうぐっすり眠れたことに少しおどろいていました。あんなに不安だったのに今日何をすればいいか道筋がついているからなのかな?と思いました。朝ごはんも残さず食べて、登校中、ランドセルを背負っていても、足がどんどん前に進みました。この速さは4分音符=126。アンダンテだわ。
もっとみる小説「メトロノーム」④
「じゃあ、練習が嫌になったゆう子ちゃんがボンドでくっつけて、そのまま帰っちゃったのね?」
「うん、わたしがトイレに行っているあいだに……」
「びっくりしたのと、まずい、と思ったのとで、れい子もカスタネットを隠さなきゃいけないような気になったの?」
「どうしたらいいかわかんなかった、けど、ゆう子ちゃん、練習するの嫌そうだったから……とうとう、こうなっちゃったか、って思った。なんで