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コーヒーのオーダーから読み取れる、商品に対する捉え方の差異

流しの珈琲屋ランドネは、リヤカーをDIYで改造してきのみきのままにコーヒーの旅をふるまうお店です。

皆様こんにちは、やまんです。

先月最終の日曜日、リヤカー珈琲屋のプレオープンをしました。

コーヒーの提供の仕方としては、通常多くの珈琲屋さんが実施している、産地で選ぶコーヒーやお店独自のブレンドといった商品ではなく、
『お客様の気分や趣味嗜好を汲み取った、完全オーダーのブレンドコーヒー』というやり方をとっています。
つまり、お客様にその場でオーダーを聴いて、即興でお客様1人のためのブレンドコーヒーを作って淹れるということです。 

そのやり方でお客様にオーダーを聴いていくとあることに気がつきます。

「どんなコーヒーがよろしいですか?」
「酸味のないコーヒーがいいです」

30杯お売りして、そのうちの8割の方がそうおっしゃいました。
酸味のないコーヒー…。

珈琲焙煎をしている人からすれば、酸味のないコーヒーはつまり深煎り、またはフレンチローストのようなコーヒーですね?って事になります。
ですが、お客様にさらにオーダーをじっくり聴くと、
「苦味のない」「飲み易い」コーヒーがいいと…。

珈琲屋としてのこだわりが強い店主や、コーヒーとはなんたるや!っていうスタンスのお固めの焙煎人からしたら、んなそんなんオモロくないやんってなるオーダーかなと。
酸味もない、苦味もない、コクもない、そして飲み易い。
それはなんなん?ってなるかと。藤井かじぇ。

でもお客様のほとんどが酸味がないやつっていう。

つまり、コーヒーを焙煎する人とお客様との間にコーヒーに対する認識の差異があると感じられたのです。

まずこの2つの視点からそれぞれ観ていこう思います。

お客様がいう酸味ってなに??

そもそも酸味ってなに?
お客様にお伺いすると、後味に残る嫌な酸味なんだそう。コンビニコーヒーや、ホテルや飲食店で、ずっとタンクに入って温めてられているコーヒーによく感じるんだそうです。
確かに、朝抽出したコーヒーを、ずっと温めていたり、焙煎して袋詰めされていた豆をずっと陽に当たる場所のタンクに入れて保存していたりするとよくその美味しくないコーヒーになります。
これは酸化です。
つまつ焙煎された豆や、抽出されたコーヒーはどんど酸化していきます。
そうするとなんともいえない「酸っぱさ」が感じられる。
どうやらお客様は、この酸っぱさを酸味として捉えていらっしゃるようです。

食品における酸化とは、油性食品に含まれる脂肪酸の変化、環境条件により油脂の酸化が起こるという事だそうです。
しかも熱劣化、光劣化、経時劣化と酸化によって起こる劣化には様々な条件があります。

コーヒー酸っぱいとかコーヒー酸味嫌とかでググるといっぱいコーヒーの酸味について解説しているサイトがあります。
こんなにコーヒーの酸味について語ってくれてるのに、お客様は酸味いらないって言うんです。

つまりお客様にとってコーヒーは酸味あるから美味しくないから酸味ないコーヒーが飲みたいからそれっ。
ていうオーダーをしているんです。

珈琲屋が思う酸味

これはまたまたググればいっぱいでてくるので詳しくは割愛しますが、珈琲屋からする酸味っていうのは果実のそれにあたるものと同意ということです。

元々完熟された甘酸っぱいコーヒーチェリー(コーヒーの種を取り除く前の実の状態)には甘味や酸味が含まれる。それを精製する過程でコーヒーの種の中にその複雑な要素が閉じ込められる。
それを焙煎という技術によって、またはドリップという抽出方法によって引き出すことができます。
それはそれは複雑なコクや苦味の中に甘味や酸味が含まれて、まるで紅茶のような軽やかさや、果実酒のような芳香を奏でててくれる。
そこを珈琲屋達は評価、表現しているのです。

ここまで見てると、コーヒーの酸味ってめちゃくちゃ美味しそうかも?ってなるでしょ。
そーなんです。だって皆さんは日本食という素晴らしい食文化の中で、旨味甘味酸味苦味渋味などを細かく認識する舌を成長させてきたんですから、コーヒーのこの複雑な味わいもしっかりわかるはずなんです。

なのに。
なのに、酸っぱくないのをお願いと。(すみませんしつこくて)

これはお客様が悪いとか、珈琲屋が悪いとかではなく、社会がそうさせています。むしろ資本主義がそうさせているといってもいいです。

沢山、安く多く売りたい社会にとっては、缶に詰めたほうが日が持ちますし味もかわらない。
挽きたてだって言って、タンクの中に何日も陽に露出させて保存して気軽に100円で飲めるコーヒーもある。

朝時間がないし、自販機があれば手軽に飲めるしっていってコーヒーの存在自体が、社会のニーズに合わせて変化していく。
いつしか、焙煎人達とお客様の間に大きなパラダイムシフトが起きていく。


これが今回のマイナスなイメージから生まれるオーダーのカラクリでした。


んじゃあ、どーすりゃええねん珈琲屋。

改めて思うのは、コーヒーの本当の価値を分かってもらうこと。それはコーヒーに対する認識を変化させなきゃってことです。

いいんです、缶コーヒーでも100円コーヒーでも。

でも同じ土俵で、同じ背格好で勝負したらダメなんです。そもそもお客様は同じもんって捉えてんだから、豆の種類とかそんなんよりも伝えなきゃいけない事ってあるはずなんです。

お店で豆の種類を掲示しても、お客様の大多数がよくわかんない。ってなってます。
なにが自分好みかなんてわかる人がどれくらいいるのか。

だからお客様の声を待つやり方ではなくて、聴き出すやり方をしなきゃと。
コーヒーにとらわれず、好きな果物は?とか、甘い物酸っぱいものは好きですか?とか色々聴かなきゃなんです。
そしてお客様と一緒に考える。一杯の珈琲をどんな味にするか一緒になって考えるんです。

そしたら、酸味に対する興味も変わるし、
何よりコーヒーに対する想いがポジティブになる。

流しの珈琲屋が、誰かの為に一杯のコーヒーで幸せにするっていう大義名分の前に、やらなきゃいけない土壌作りがそこにありました。

コーヒーにしても、ワインにしてもお茶にしても、日本酒にしても、作り手は作り手の思いを語りたがります。
声にしてなくても、商品のスペックを全面に出します。でもその売り方をして、果たして作り手の思いにそった買い方をしてくれるのか?
買った後の感想はその作り手の思いを確実に汲み取ったのかわかりません。

まずはお客様のコーヒーに対する認識や思いを聴いてみるってところからスタートしたらいいんじゃないかという学びでした。


はい。少しいろんなところに話がいきましたがこんな感じで日々の営業の中から気がついた事、学んだことをアウトプットしていこうと思います☆


では善き1日をー✌️


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