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大谷翔平さんとその気立の良さ

気立の良い人、と聞き、あなたはどんな人の事を思いつくだろう。

き‐だて【気立】
生来の心の持ちよう。心だて。気質。性質。「気だてのやさしい人」(広辞苑)


心の持ちようとか気質とか、性質の中でも、"生来"なわけだから、先天的に持ち合わせてるようなものなのか。ということは、生まれつきで決まるものなのだろうか。

ある程度人の能力なんて限られる。結局は手持ちのカードだけで生きていかなきゃいけないわけだから。

自分が生来どんな人間かがわかればわかるほど、なりたくてもなれない、手に入れたくても入れられないものがあると気づく。

そんな自分に絶望するよりも。もう割り切って三つ子の魂百までとは私のことと開き直って生きていく感じ。うん、これがちょうどいいかも。とか。

等身大の自分を理解することって意外と難しい。
直感とか社会に出て躓く度に理解する自分という人間。それを像るパズルのピースをはめこみ続けていくのが人生なんだろう。
だから時にははまらないときもあるしとんとん拍子にピースがはまっていくこともある。

多分だけど、気立の良さは作れるとわたしは思う。"かわいいは作れる"と同じく。

そのためには、できるだけ自分という人間の等身大を理解する努力は必要だろう。

等身大を理解して受け入れている人は、比較的安定感があり、話していて嫌味がない。
大きく謙遜することもなく傲慢さを押し付けることもない。承認を対人関係で求めることはないからだ。

置かれた立場や自分の役割のようなもの、活かすべき特徴ーー完璧ではなくても、それらをきちんとシンプルに整理しておく。
そんなことが毎日ちゃんとできるやつなんているのかよ、と思う。

しかしその近しいサンプルは実は存在した。先日眼科の待合室のテレビに映っていた青年。
それが大谷翔平さんだ。

プロ野球選手の大谷翔平さんのインタビュー。質問はグダグダだったものの、大谷さんのスタンス、身体の動き、目の動きは、全てにおいて安定していて、ブレがなかった。
特に私が胸を打たれたのは、この言葉だった。

『メジャーリーグの場合は連戦連戦ばっかりなので、毎日毎日試合があって、よかった悪かったっていう結果が必ず出てくるので、毎日こう、きょうはよかったなとか、きょうはここが悪かったなっていうのが出てくることっていうのはすごい幸せなことじゃないのかなと思っているので。』

置かれた状況を非常に客観的に分析して、等身大の自分をメタに見ていることがわかる。

自分は滅多とない経験をさせてもらっていて、しかもありがたいことにそれなりの才能をもっていて、周囲からも期待されている立場で、今自分にできることはなんだろうと毎日考えているのだろう。

彼を見てふと、
『気立の良さってこういうことなんじゃないか?』と思った。

ここまでの立場にいるにも関わらず、『いや〜自分はまだまだなので。』とか、そんな謙遜は逆に嫌味に聞こえる。
だから彼はスーパースターとしての自分を思慮深く肯定しているのではないか。

見られ方を理解せずして気立の良さは生まれない。何より相手がどう捉えるかまで想像し、丁寧に言葉を紡ぐ人こそが"気立の良い"人だと思う。

少なくともあの記者会見を観てそう感じた。
特段ファンなわけでもなく、彼の実績などを細かく知っているわけではないし、野球のこともわたしはよく知らない。
それでも滲み出る人間性だけは受け取ることができた。

おそらく気立の良さを持つ人は、もれなく想像力、思考力が高い。そして相手と歩調を合わせていく力も強い。
だからこそ、その性質を利用される危険性もある。気立の良さの裏にある思慮深さに気づかない人々からの誹謗、中傷、搾取。
少し逸れるが、それこそが『良い人から辞めていくんだよね〜』という転職者の多い企業の悩みの根源なのもしれない。

思慮深さは相手と自分それぞれの自尊心に対する配慮である。気立の良さは、どちらかの自尊心が傷つけられた関係の上には成り立たない。

自分がどんな人間で、何を成し何を好きで居たいのか。そして自己評価を過大もしくは過小にしていないか。
常に考えておくといいかもしれない。

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