見出し画像

南チロルのハイキングコースを歩く

まだまだ寒い日は続くものの、少しずつ日は長くなり心なしか日差しも暖かく感じられる様になってきた。そうなってくると自然と外での活動が増える。南チロルでの手軽なアウトドア活動といえばハイキングかサイクリングだ。今回は初心者でも歩けると村の観光案内がいうハイキングコースに行ってきた。「初心者でも歩けるねぇ・・・」私が訝しく思ったのは、ヨーロッパ、特にゲルマン系の国での「初心者コース」と言う表記には私のドイツ留学時代の経験上、十分注意しなければならないからだ。なんせドイツ人が「ちょっとそこら辺を散歩に・・・」は心臓破りの訓練と言っても過言ではない、とにかく歩く!老若男女関係なく歩く。もう人生の大先輩的なドイツ人のおばあさんと断崖絶壁のコースで出会う事も日常茶飯事だ。強い!とにかく屈強なおばあさんが多い!以前高速道路を運転していたら、悍ましいスピードで近づいてくるドイツナンバーの車をバックミラーで確認し慌てて避けたら、ぴっちりと綺麗な白髪を束ねたドイツ人おばあさんが追い越し車線をぶち抜いていった。私の運転する車の速度計から割り出したところ、おばあさんは時速180kmは出していたと思われる。助手席に静かに座るご主人と思われる男性の姿が印象的であった。


コース全容


話を戻して、今回の散歩道。これぞ南チロルの散歩道である。全長は3.5km、ゆっくり歩いても2時間みておけば十分なコース。いざ家族で楽しくハイキングだ。

コースの概要を見てみると、緑の部分をぐるりと一周するらしい。そしてこのコースのテーマは「自然を愛しましょう」とのこと。このコースで見られる草花が写真で紹介されていた。


こんな植物が見られるらしい



さっそく歩き始める。南チロル名物りんご畑を通り抜けるのだが、ところどころ「ここは私有地ではないのだろうか?」と思われるところもあり道を間違ったのではと不安になるところに丁度標識があり、それを頼りに進んでいく。そして予想通りどんどんと上りがきつくなる。「やっぱりね」決して初心者コースなどいう文言は信じてはならないのだ。全神経を集中して一歩一歩進める私とは裏腹に2歳半で南チロルにやってきた娘は軽やかに坂を駆け上る。まるで羽が生えたかの様に。かたや私は都会生まれ、都会育ち、山登りは学校の遠足ぐらいなものだった。南チロルに移住してきたもののアウトドアには全く興味がなかったが、とうとう観念して登山靴を大手フランススポーツ用品店で買ったのは去年の話である。

こういう坂道が続く

森のトンネルの様なところをひたすら登るコース前半は体力もだが自分との戦いでもある。大袈裟だが、運動にとんとご無沙汰だった私には「前へ進むか、それとも諦めて引き返すか」と心の中で押し問答だ。ようやく森を抜け途中地点の看板を見て、まだ半分にも達していないのを見た時の絶望感といったら!!!「もう帰りたい」である。しかしここは集落であり公共のバスなんていったいいつ来ることやら知る由もない。わかっているのはこのコースを歩ききったら元の場所に戻る事ができると言うことだ。だから前を向いて歩くしかない。

遠くには湖も

登りきったら今度は下りが増えてくる。登りもきついが、下りも神経を使う。どこに足を置いてゆっくり下りていくのか考えるのも、また疲れを助長する。かたや娘といったら!もし転んだりでもしたらどうするの!という心配もお構いなしで、これまた全速力で走って坂を駆け下りていくのだ。もう見ていてハラハラどころか心臓が口から飛び出そうになる。そんな母親の気持ちなど全く気にする事もなく娘は全力で勢いがついてスピードが上がることをむしろ楽しむかのように坂を下っていった。とてもじゃないが付いていけない。これが南チロルで成長している証なのか。娘には「初心者コース」という表記がしっくりくる。

この坂を駆け下りる勇気はない

しかし面白いもので自問自答しながら、前だけ見てひたすら歩くのは非常に疲れるが心地よさも出てくる。これが「ランナーズハイ」いや「ウォーキングハイ」たるものなのか?などと考えていたらコース終盤を意味する小さな橋が見えてきた。ああ!あともう少しで歩ききれるぞ!と思いきや、最後はひたすら上りではないか!なんという鬼仕様。一歩ずつ体を引き上げるように階段を上り、今か今かとベンチに腰掛けてチョコレートを食べる娘のところに辿り着いた。

景色は絶景である

無事に歩ききった。地味ながら達成感。なんというかこういう小さな達成感は大事だと思う。体はガチガチに疲れて果たして動けるのか?と心配になるぐらいだったが「また歩きに行こう」と思わせるのはなんなのだろうか?

兎にも角にもまずは「初心者コース」と書かれているコースを一つずつ踏破していきたいと思う。

眼下には一面りんご畑が広がる



この記事が参加している募集

旅のフォトアルバム

アウトドアをたのしむ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?