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南チロルの村のカーニバル

春を呼ぶお祭りとして有名なカーニバル。イタリアではベネチアの仮面カーニバルが有名ですが、ここ南チロルでも各々の町村で祭りが行われます。
私の住む南チロル南部の「低地」地域では白ワインGewürtztraminer発祥の地Tramin【独】Termeno【伊】のEgetmannumzugというカーニバルが有名です。因みに南チロルではカーニバルのことをドイツ語でFaschingといいます。イタリア語ではCarnevale、carneは「お肉」valeは「価値がある」なので、復活祭までのこれからの40日間はお肉を食べずに厳粛に過ごすのでその前にパアッとやっておこうか!肉食べ溜めしておこか!というのがカーニバルの語源の由来であろうというのが私個人の解釈です。

さて我が村の「Faschingsumzug」というカーニバルのパレードは村の中心の広場から出発。その前に本家の隣町の楽団の応援も駆けつけパレード前から広場を盛り上げます。

南チロル「低地」のカーニバル名物 Schnappviecher

カーニバルの仮装は各々の地域で特徴がありますがここ南チロルは中世からこの辺りに根付いた職種に仮装します。特筆すべきはSchnappviecherと呼ばれる山羊をモチーフにした南チロルの寒い厳しい冬の「ガチャガチャケダモノ」のオバケです。schnappはドイツ語では「ガチャ」「パクッ」「カチャッ」などこのケダモノの口の動きから出る音や仕草を表します。一方南チロルの方言では「無遠慮な」というカーニバルならではの「無礼講」の意味合いが出てくるのが面白いですね。Viehはドイツ語では「獣(けだもの)」ですが南チロルだと一般的な動物を指すようです。まあ南チロルで見かける動物は都会で見れば「獣」ですからね。余談ですが、去年の夏に娘とドイツ・ミュンヘンの動物園でアルプス山脈に住む野生の山羊の一種がいたのですが、「あれなんで珍しいの?普通にいるやん」と言う始末。とても立派なツノを持つSteinbockという野生のヤギは南チロルでは地域の「譲ります」コーナーでよく見かけるヤギなのです。


男性の女装率が高い気がするのは私だけでしょうか?

話をパレードに戻しましょう。Schnappviecherも元気に参加しています。実は女性(?)が押すベビーカーには小さなSchnappviecherが乗っているんです!動画ではその様子を撮影したのですが、noteは直接リンクできないのを今知りました・・・残念。「ガチャガチャ」という特徴的な音を聞くとカーニバルだなぁと外国人の私でも思わされるぐらいです。


こちらは我が村の楽団。カーニバル前は練習する音が聞こえてきます。

こうやってみると「なんだ、カーニバルなのに大騒ぎするとかなさそうじゃないか!」とお思いでしょうが、いやいやいくら生真面目な南チロル人といえども「unsinnig」という「無秩序な」「無遠慮な」と呼ばれるカーニバルですから「イタズラ」はありますよ。


炭屋さんの山車 小型農業トラクターが牽引

パレードには中世から南チロルに根付いた職種の山車が小型農業トラクターによって牽引されてくるのですが、この山車から集まった人たちの上に色々降ってくるのです。この山車からは炭屋さんだけあって炭の粉が撒かれました。


粉挽屋さんの山車

これは小麦などを粉にする粉挽屋さんの山車です。もうお分かりでしょうが、この山車からは粉が空からたくさん降ってきました。私はパレードを間近で見ていたので幸運にも?粉挽屋さんの山車に乗っていた人からまともに粉をかけられました。なんともカーニバルの醍醐味です!しかし私はよく考えてみたら「グルテン不耐症」で小麦粉を吸い込むとアレルギー症状が・・・と一瞬青ざめたのですが、かけられた粉をよくみたら「米粉」でした。良かったと思ったのと同時にこんな些細なところまで配慮してお祭りが行われているとは!ただの無礼講ではありませんでした。私は娘と一緒にパレードを見に行ったのですが、なんせ勝手のわからない外国人です。「仮装=アニメ変装」という間違った出立ちでパレードを見ていたにも関わらず、魔女のグループから娘は芋虫の形をしたグミをもらっていましたし、子供たちの上にはキャンディを沢山まいてくださりました。おしゃぶりをくわえた小さな子供やベビーカーに乗った赤ん坊でさえも楽しくパレードを見ることができたのです。


子供たちに芋虫の形をしたグミを配ってくれた魔女たち

我が村のカーニバルパレードには「こんなにたくさんの人が村に住んでいたんだ!」と思うぐらい大勢の人が中心広場に集まっていました。中には車椅子の人もいましたし、体の自由が効かないお年寄りの姿も見かけました。しかしこの広場にいる誰もが分け隔てなく祭りを楽しむことができる環境を作り出したこのお祭りはみんなの心に「春を呼び込む」お祭りでした。


祭りの趣旨がわかっていない残念な外国人の筆者美波

来年のカーニバルのパレードには間違っても子供の「ポケモン」の帽子など被らずにテーマに合った仮装を心がけたいと思います。こんな私にも炭を撒き、粉をかけ、炭で真っ黒な手でほんのり顔を黒くしてくださった村の人々に感謝です。これで今年はいい春が迎えられそうです。


また来年まで!

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