yuta_nagaswa

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「擦り切れていった喜びの最後の一枚が破けた瞬間が悲しみだ」 老人は杖の先から溜め息をアスファルトに擦りながらそう告げた 外れかけた車輪は何も語らず 嘴の綺麗な鳥たちが西から東へ太陽に逆らうように飛んでいく 風の音は静かだが森の葉脈達は確かに感じ取り 今新しい時代の精霊となる 「カリカリとカリカリと鉛筆の先ばかり気にするのは何故?」 尋ねた彼女は香水の匂いのするギターに合わせて踊り出す 16コマの早送り、透明な押し入れ、開かなくなった引き出し 人と出会えばそれ

    • ナイト オン ジ アース

      倒木がイヌの頭蓋骨をカチ割った 浮遊するマーメイド 偏屈した洞穴 ウロの中ではフクロウの親子がネズミを頬張る 忘れ去られた祠が神の不在を告げる 今 空気中を漂う水分が全て水玉模様になり 頬から雨となり 伝って川となる 渇いた皮膚に染み込んで芽吹くは老廃物の巡り合い オフィーリア 水溜りで死んでいる オフィーリア 絹を纏って消えろ 雷は夜空を迷路に育て上げ 風にほどけて出口が無くなる 迷いの森の少女は目が見えない ガラス瓶の中の完全な生態系 合成獣

      • 海溢れる貝の遊び

        結局、大概の痛みは歯を食いしばれば耐えられる。 はしたない犬にだって、貴方は食い殺される。 彼等の遊びは少々問題がありました。 貝の事だよ。 歯を食いしばる内に己の力に耐えられなくなって体が砕け散る。 そういう遊び…空っぽの奴にしか出来ない、唯一の遊び。それ以外はどこかの砂の中でじっとしてるだけ。 くだらない。貝の事だよ?くだらないくだらない…貴方の事では無い…そう言い切れるだろうか? 僕は喋り出す。 頭をかいて、ダンゴムシみたいにクルクル回りながら、優しい草を肺に押し込むま

        • 隣の庭へ

          今日もまた死んだ ジムモリソンはバスタブの中で ジョンレノンはピストルの弾で 映画の中で繰り返し 終わりが来るたび繰り返し 旅に出たのに繰り返し 2時間か3時間か ほんの少し近づいて ホントに遠く消えてった 死は肩にカラスの爪に似た滑らかな翼をくれる 金もいらない服もいらない この世を超えた豊かな王国 だか別の口には近親相姦 失われた世界は植物の法と化す 巨大なる家族より友達との宴を選ぶ 隣の庭へ 僕は1人で眠れない

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        • JOE
          4本

        記事

          イエスノー

          景色は白いスクリーンの中で無数に変わり続けて 脚の生えた机のようだ いくら動き回りたくても動けはしない 大きくなる薬も小さくなる薬も ドアノブの舌を喜ばせるだけだ 大抵の不可侵条約は道理を無視した精神世界の河原で 下流から上流へと丸みを帯びていく意思だ カーテンの揺らめきが僕の脳みそを揺する イエスノーイエスノーイエスノーイエスノー 犯罪者のカエルの滑りは蛇のせいか? イエスノーイエスノーイエスノーイエスノー 完全に眠るにはあと何分必要か? イエスノー

          イエスノー

          Goodnight Sandy

          逆さまに吊るされた人形達は幸福時代へのアンチテーゼだった サンディは母親がお酒を飲んでいるのを見たことはなかった サンディは父親の顔を見たことはなかった 「出張に行っている、それはとても遠いところよ。いつか帰ってくるのを待っているの」 新しい時代の戦争孤児院。 たくさんの兄弟姉妹と大きな館で暮らしていて、毎日渡される甘いクッキーが1つ。 その味が忘れられない。幸福のチョコチップクッキー。 1人にひとつクマのぬいぐるみ。サンディは幸せだった。 換気し続ける扇風機

          Goodnight Sandy

          怪奇エクトプラズム耳クソ妖精

          あの時までは、耳掃除が好きだった。 雨が静かに降る梅雨入り直前の19:30の出来事だった 耳に綿棒を突っ込むと口がポカンと開く 反射的にいつもは口を閉じるのだが俺はあまりの耳掃除の気持ち良さに思わず口を紡ぐのを忘れていた すると喉の奥からなのか舌の裏からなのかエクトプラズムがシュルシュルニョロリと現れた な、なんじゃこりゃ 声に出そうと思っても口が塞がらず思うように喋れない。 呆気にとられていると、口からポトリと零れ落ち、その謎の白く半透明なエクトプラズムは次第

          怪奇エクトプラズム耳クソ妖精

          拝啓、君へ

          宮本は、新しいコートを買うかどうか悩んでいた だが、もう冬を越えることもない。 必要ないであろう。 君が死んでからどれくらいたっただろう 夏が終われば 君が死んでしまった悲しい雨の晩秋が近づく 日々が癒すなんて嘘だった 僕の親友、僕のソウルメイト、僕の鏡 君が死んだ夜に僕の中のほとんども死に 残った僕は下敷きみたいに薄っぺらい伽藍堂だ 覚醒剤で動く兵隊のような暮らしだった 悲しみを忘れるために動き、息を吸い、眠る 人間の生活は手に入れる為の競争だ 僕

          拝啓、君へ

          全てを僕の瞳に

          時々幸せに思うんだ 時々不幸に思うんだ 時々すべてに満足するんだ 時々何かが足りないと感じるんだ 時々何をしたらいいか分からなくなるんだ 時々全てが分かるんだ 全て、全てが僕のために回る 全てが何かのために回る 手に入れるんだ、全てを僕の瞳に 手に入れるんだ、全てを僕の瞳に 時々明日が不安になるんだ 時々明日を信じたくなるんだ 時々今日を考えるんだ 時々今日を諦めるんだ 時々誰かにありがとうと言うんだ 時々誰かを殺したくなるんだ 時々誰かを嫌いに

          全てを僕の瞳に

          ダンボ的冒険

          神様がくれた緑の液体に口をつけて俺達はダラダラと中に入っていく 紫色の煙があたりに立ち込めている、毒ガスのようだ。 少しずつあたまがクラクラしてきて、胃の下の方に吐き気のオバケがあらわれる。 俺は仰向けになってゆっくりとカラダを沈める、吐き気を抑えるように 流れている音楽は変わらない、まだ自由だ だが、ある瞬間急に音楽が踊り出す 誰かがスイッチを捻ってグイグイと速さを変えるように ゆっくりとグイグイ、グイグイ そして落ち着いたと思った瞬間、床が抜けるようの音楽

          ダンボ的冒険

          側溝の横で寝た幸せ

          俺達はいつか感じるだろう側溝の横で寝た幸せを 俺達はとてもあがいていて とても毎日をつらいとかんじている 涙を流したりもしている 腹を空かしているわけじゃないが 心が雨漏りして尖ったプラスチックの傘みたいだ 俺達はいつか感じるだろう側溝の横で寝た幸せを 12時を過ぎて降り出した小雨に傘をさして 帰るなんてことはせずに 俺達はとても楽しんでいる 友人や家族 俺達は満たされている でもポケットは破けてるし 靴の中の小石はズキズキと痛む 俺達はいつか感じる

          側溝の横で寝た幸せ

          I LOVE YOU ともだち

          母船に隠したチーズ 狂犬病のテレビジョン 二足歩行のヤスデ 6でも9でもかまわない 5対1でもかまわない さぁ、窓から飛び出そう さぁ、窓から飛び出そう さぁ、窓から飛び出そう 太ったキング、冷えたウロコ、最後の審判、最初の記憶、突き当たりを右に、月明かりを糧に、祭壇を探せ、チョップくらった、最後の街角独り歩きする煙達、夕暮れが壁に描いた絵、その下にある犬のくそ、立ち上がれないくらい気持ちのいいじかん、アタマの中で友達いっぱい、友達いっぱい、友達いっぱい、友達いっぱい

          I LOVE YOU ともだち

          俺が鳥になっても

          もしも人になったとしよう もしも鳥になったとしよう もしも蛇になったとしよう もしも蟻になったとしよう もしも砂になったとしよう もしも空になったとしよう もしも酒になったとしよう もしも雨になったとしよう もしも全ての一部になったとしよう もしも記憶の彼岸に流れ着いたとしよう 失墜の中の饗宴がはじまった 黒い風船にしがみつけ 時には君になろう時には君 時には彼に時には彼女に 流星、龍、蝋、ローマ、ロック 木の実、記憶、傷、霧、君 めぐれめぐ

          俺が鳥になっても

          Hey you

          人間なんてのは 人間なんてのは さざめく木の葉やそこら中を駆け回る風だ 落ちている吸殻や動いているイヌやネコ鳥 奴らは噛み付いてくる可能性のあるダンボール 奴らはこちらとは一生関わらない宗教画 2つの胸を膨らませた雌鳥(めんどり) 勃起をしている鉄の馬 奴らの顔を見るのはバカのすることだ 奴らの顔を見るのは阿呆のすることだ 人間なんてのは 人間なんてのは アスファルトの隙間から生えているダイコンだ 絵を描くようになって筆を折る快感をしる 奴らは止ま

          映画好きのテレパシーズ

          僕は中毒者 君という光の 僕は中毒者 君といる未来の 明るい光を 心に打ちつける 脈に針突き刺して 逃げ惑う暇もなく 僕ら中毒者 生まれたての勝利の 僕は中毒者 ゴミダメの宝箱 口をつぐんで 誰も忘れたフリさ 光 光 息を止め確かめる 逃げ出せない痛みばかり 口を塞げぬルールばかり 飛び出せないビルのそこで 考える暇はないぞ 目をつぶって前を向いて 逃げる君を飲み込んで 飛べるだけ飛び出そうぜ 君を飲み干した 僕ら皆中毒者 映画好きの

          映画好きのテレパシーズ

          moon

          月まで泳ごう 流れる街に映る 街はまるで 海より深く暗い 月まで泳ごう 牛乳瓶の中の恐竜 体育館のプランクトン 公園の横を抜けて影を避けて 今日を選ぼう 狂気の月の裏の 周りはまるで 救わない愛の死骸 月まで泳ごう リアルとフィクションの間 線の終わりを探す ただ目を閉じてリアルを見る 月まで泳ぎ、夜の縫い目に突き刺さり 街まで帰り、朝の隙間に眠る 夜まで騒ぎ、月の裏側を見つめる 朝には眠り、街のざわめきは聞かない 永遠の紐よりも友達と