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【JOCV】派遣前訓練Day43|書籍紹介「池の水ぜんぶ”は”抜くな!」

小学校に入学する前だったか、近所の用水路でアメリカザリガニを釣りまくっていた。釣ったアメリカザリガニに餌をあげたり、挑発させてみたり。足元の用水路、手の上で怒っている1匹のアメリカザリガニが、私の地球。アメリカザリガニが外来種だとか、アメリカザリガニのせいで在来種が減っているとか、当時は考えるはずも無い。もしそんなことを語ってくる大人が現れたら多分逃げていただろう。

それが今ではどうだろう、某テレビ番組で子ども達が「外来種=悪」と教えられ、駆除目的で片っ端から外来種を捕まえている。異様な光景である。「外来種=悪」という不思議な考えが、少なくとも日本国内にはびこっているように思える。そのような風潮に一石を投じる本がつい最近出版された。

池の水ぜんぶ“は"抜くな!
 月刊つり人編集部 編

挑発的なタイトルだが、副題にもなっている「外来種はみんなワルモノなのか」という問いを投げかけることが、本書の大目的である。

「外来種=悪」という単純化された思想に挑戦する書籍が、海外でいくつか出版されており、日本語に翻訳されているものもあり、以下の4冊を勝手に「4大書籍」と名付けている。上から3つは本書にも確りと取り上げられている。

外来種は本当に悪者か? : 新しい野生 THE NEW WILD
フレッド・ピアス、 藤井留美
外来種のウソ・ホントを科学する
  ケン・トムソン、 屋代通子
「自然」という幻想 : 多自然ガーデニングによる新しい自然保護
  エマ ・マリス、岸由二 、小宮繁
なぜわれわれは外来生物を受け入れる必要があるのか
  クリス・D・トマス、上原ゆうこ 

外来種と在来種の線引きが人間による恣意的なものであること。いわゆる「手つかずの自然」は幻想であり、人間は誕生してから今日まで地球上のありとあらゆる自然に「手をつけている」こと。自然とは変化を繰り返し、決して元に戻ることは無いこと。いずれも冷静に考えてみれば当たり前のこと。

外来種の中には駆除の対象とするべき種もある。上述した書籍の著者は「外来種保護論者」ではない。「外来種=悪」という思想に溺れるのではなく、足元の自然を冷静に観察し、ケースバイケースで真摯にひたむきに対応していくことが大切なのだ。

「殺して良い命がある」ことは決して無い。まして子どもたちにそのことを教え込むことは極めて危険なこと。実体験を正当化するつもりは無いけれど、まずは近所の用水路のアメリカザリガニとの触れ合いを通じて生き物への感性が豊かになればそれで良い。複雑で難しい外来種問題は、大人になってから考えても遅くない。そんなことを考えながら一気に読み終えた。

外来種・在来種への考え方、ヨルダンではどのようになっているのだろう。任務の性質上、まずやるべきはこの疑問を解消することかもしれない。

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