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自意識との戦い

僕の中にはもう1人の僕がいる。そいつは大抵、僕の頭上2mほどのところにふわふわと浮いていて、僕のことをじっと見ている。じっと見て、目立った行動がないか、逐一観察している。僕が少しオシャレな店へ行くと「おいおい。おめぇにこんな店は似合わねぇなぁ笑」とか言われるし、美容院や服屋へ行くと「そんな格好で行ったら店員に笑われるぞ笑」と貶してくる。僕はこいつのことを「自意識」と呼んでいる。似たような境遇の人はいるもので、この話をすると3人に1人くらい共感してくれる。ある人は「2.3日に1度くらい出てくる。」と言うし、またある人は「新しいことをしようとすると出てくる」と言う。僕の場合は、常に、24時間365日こいつの声が聞こえてくる。(寝てる時はそもそも声なんて聞いてないから24時間かどうかはちょっと怪しいけど。)

こうしてスマートフォンで文字を打っている今も「お前の文章なんか興味ねぇよ。」とか「夜勤明けのこの時間になんてもの書いてんだよ。さっさと寝ろ。寝た方が有意義な時間だろ。」とか言ってくるわけで本体の方の自分は「うるせぇ。誰のためでもねぇ。俺は俺だけのために書いてんだよ。寝た方が有意義なことくらい知ってるけど今書きたいから書いてんだよ。」と言い返してこの文章を書いている。

最近はこいつをうまくあしらえることが多くなってきたが、以前はもうこいつにボコボコにされていた。

中学時代は2メートル上空にいるやつがすぅーっと降りてきて耳元で囁くが如く、やつの声が聞こえてきて、「なんか、ダサい顔してんな」「その靴安物じゃん。もしかして貧乏人か?」「こんな問題もとかねぇのかよ。馬鹿だな」「なんかお前臭いよ。」と常に言葉を食らってきた。当時の自分はこいつに言い返すことができなかったので、馬鹿正直にこいつを真正面から受け止めて、どんどん自信が無くなってた。 

誰かを好きになったとしても、「お前の顔で人なんか好きになるんじゃねーよ」「好きになられた方が迷惑なんだよ」「鏡で自分の顔見たことあるか?」と言われて、好きという気持ちを押し殺して生きてきた。

目立たないように、人に迷惑をかけないように、他人に対して可もなく不可もない、人生を生きてきた。

最近の声の中で一番つらかったのがこれだ。

僕にも彼女というのができて、いっちょ前に人を愛するようになった。彼女とセックスをするときもこいつは現れる。出てくるのはわかっているのだから、なるべく意識しないようにしているんだけれども、出てくるもんだからしょうがない。腰を振っている瞬間「なんか滑稽な運動だな」と出てきた。「お前が必死に腰を振っているときの顔、めちゃくちゃ気持ち悪い顔してるぞ。」こいつのせいで僕は正常位で勃たなくなった。自分の必死になった顔をどうしても人に見せられない。必死に腰を振ってるとあいつが出てくる。


自意識の呪縛はいつになったら克服できるのだろうか。


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