朝一番の〈かがやき〉から眺める山々
思わぬタイミングでやってきた北陸への出張。早暁6時の東京駅で新幹線〈かがやき〉501号に乗り込んだ。
■埼玉からの富士山
座席は進行左側。荒川を渡って、埼玉県に入るあたりから、車窓に富士山が姿を現す。新幹線からの富士山といえば、多くの人が東海道の眺めを思い浮かべるだろうが、北へ向かう新幹線からその姿が望めるのは意外かもしれない。幼少期と学生時代に埼玉に縁があった身としては懐かしい風景でもあるが、世間的には埼玉からの富士山はあまり話題に上ることはない。だから何となく、昔に帰ったような、得をしたような不思議な気持ちが混ざり合う。
大宮を過ぎても、熊谷付近までは富士山が車窓のワンポイントとなる。列車が進むにつれて少しずつ見る角度が変わるから、目に映る山容もだんだんと変化する。
■関東平野の果てへ
熊谷を過ぎると、山岳眺望の第二幕。進行右側なら日光・足尾方面から赤城山の眺めを楽しめるが、今日座っている左側には、北に妙義山や浅間山が見え始め、関東平野の果てを感じる眺めとなる。妙義のゴツゴツした岩の風情や、この時期の白い雪をかぶった浅間の姿が印象的だ。
■信濃の国を抜けて
この日は、軽井沢付近がかなりの濃霧で、列車はいくぶん速度を落としたかに見えたが、佐久平、上田と快調に進み、長野駅には定時での到着となった。北陸新幹線のこの先、金沢までの区間は2015年の開業以来乗車できておらず、今日が初体験になる。在来線時代は、山中の隘路に分け入り、黒姫山や妙高山を眺められた区間を、新幹線はトンネル主体で駆け抜ける。飯山付近の北信の山々を新幹線の車窓から眺めるのも初めてで、まだ慣れない。
■あっという間に冬空の北陸へ
新幹線の威力は絶大で、あっという間に日本海側に出る。在来線の特急〈白山〉で北陸を目指した頃は、上野を8:30に出たら直江津は12:32着。4時間を要した区間も〈かがやき〉の俊足では2時間を切る。雪に煙る妙高の山並みも楽しめるのはわずかな時間だが、特急〈白山〉の早送りバージョンが今の〈かがやき〉だと思うと愛着が湧いてくる。
糸魚川や親不知付近をかすめた後、富山平野からの立山連峰を楽しみにしていたが、この時期特有の鉛色の空が車窓に広がるばかりで、雄大な眺めはお預けに。それでもわずか2時間で、太平洋から日本海へと本州横断の山岳眺望を楽しめた。
なかなか乗るチャンスがなかった北陸新幹線だったが、在来線の旅の記憶をたどりながら、新たな楽しみを見いだせたと思う。次はぜひ進行右側の山々も眺めたい。次に北陸へ行くチャンスを早く作ろう。
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