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ノベルゲームを作ろうと思ったら15年かかった話【第13話】制作編⑨なかなか完成しないのはなぜ?

これは、サウンドノベルの持つ魅力に取り憑かれ、「自分でもノベルゲームを作ってみたい」という思いを抱き、終わりのないゲーム制作に足を踏み入れた1人の個人ゲーム制作者の物語である。


Nscripterで人生初のノベルゲーム作りを始めた落柿(らくし)。やるべきことは決まり、ひたすらタスクをこなす日々を過ごしていた。


完成するまでの膨大な作業量のことはひとまず忘れることにした。仕事も他の趣味もあることだし、無理のない範囲で進めていこう。


一日何枚! 何文字! とノルマを決めてしまうとキツくなると思ったため、とにかく一日一度はPCを開いてシナリオかスクリプトを進めることを目標にした。

スプレッドシートでやることリストを作り、その日できた項目に色を塗る。「今日はシナリオを書けた」「今日はスクリプトを進められた」と振り返る。


淡々と、粛々と毎日作業を続ける落柿。仕事の合間に。朝の時間に。なんなら旅行にもPCを持っていった。一日の作業量は多くなくとも、続けていれば前に進める。そう信じて制作を続けた。


そんな生活を続けること数年
……落柿はある日気づいてしまった。


「あれ? 真面目にやってんのに全然完成が見えてこない……なんで?」


はい、その質問の答えは前回にありましたね。

えーと、本編となるホラー編シナリオは一周2時間程度としてもいくつ分岐するんでしたっけ? そのテキスト量ってどのくらい膨大かわかってますか?


後、サブシナリオが最低でも7本でしたっけ? しかも貴方「おまけシナリオも書きたいな〜」とか考えてますよね? で、サブシナリオは1本がラノベ一冊分くらいの分量があるんでしたよね?


しかもこれは小説じゃなくてゲームですよね? 文章書いて終わりじゃないですよ? 現段階だって素材選びに演出に、1シーン作るのに何時間もかかってますよね?

う……
うわああああああ!!!(精神崩壊)



落柿は思い出した。「こういうゲームを作っているんだ」と知人に話したときに言われた言葉を。


「え、1作目からいきなり大作過ぎない? 普通、最初は簡単かつ短時間で制作できるゲームを作ってみるもんじゃないの? プロトタイプというか習作というか……」


習作を作ってみることのメリット
作品を短いスパンで作ることにより、リリースまでの一連の流れを体験することができるし、「完成させた」という成功体験が積める。


次回作でその経験を生かして次のステップに進めるし、何作も作っているうちに技術・知識も向上する。そうすることによって少しずつ自分の作りたい理想のゲームの形に近づけていくことができる。



なるほど良いことしかありませんね?
納得ですよ。納得しかありませんがな。



…………。
…………。
…………。


だけどさぁ。
このアドバイスには、ひとつ大事な視点が抜けてるとは思いやしませんか?
それは、

人は、思いついたものしか作れない!


ということだ!!


誰もがそんなに都合良くサクッと終われるゲームシナリオシステムを思いつくと思うなよぉぉぉぉぉぉぉ!?


頭に浮かぶすべてのネタが長編の場合はいったいどうしたらいいんだよぉぉぉぉ!?


だいたい今さらそんなこと思い出してもシナリオだいぶ書いちまったし、後戻りして今から習作作っても、
①習作の完成→②本作の制作
となってさらに本作の完成が遠のくだけじゃねーか!


だ、だったらこのまま。
このまま突き進むしかねぇよなぁ???

そんなわけで落柿はたとえ制作前に戻ったとしても、きっとまたいきなり長編である「アカイロマンション」を作り出すことだろう。何度ループしたところで作者の近視眼的な性格が変わらない限り惨劇は繰り返される。嗚呼。


落柿は思った。


「このままだと完成までに何年かかるかわからない

「一日の作業量を増やした方がいいだろうな。そのためには生活スタイルの改善が必須となるか……」


…………。
…………。
…………。



……そして落柿は思いつく。
この現状を打破する奇策を。

よっしゃ!!
仕事、変えたろ!!!


(ええ……)

それもただ転職じゃなく、自分で時間がある程度自由になる働き方……

自営業に、俺はなる!!



(えええ……)


こうしてナナメ上の改善案を思いついた落柿。
行動力だけはある落柿は早速そのプランを進めていく。


……それが、大いなる遠回りへの第一歩だということにも気づかずに。



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