見出し画像

【絶体絶命】道を間違えたら死! 正解でも運が悪ければ死! 極限の状況で冒険家は何を考えるのか

みなさん、こんにちは。「audiobook.jp」運営チームの羽田です。
自粛ムードが続く昨今ではありますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。

こうなってくると、どれだけ「おうち時間」を充実させられるか、ということに躍起になるわけですが、新しいことを始めたり、新しいコンテンツに触れてみてもなかなか続かず、すぐに飽きてしまい、どうしたことやらということで、今まで好きだったものによりどっぷり浸かったほうが安定するということが私の結論でした。

そして、そんな私がどっぷり浸かっていることが「読書」です。

先日、「audiobook.jp」公式noteから「#新社会人に贈りたい1冊」という企画がはじまりまして、Twitterで「#新社会人に贈りたい1冊」で検索をかけると思い思いでおすすめされた本のタイトルがずらりと並び、ブックガイドとしてもすごくいい感じです。

じゃあ、私が「#新社会人に贈りたい1冊」を選んだら何だろう…と思ったときに思いついたのが、こちらです。

『極夜行』角幡唯介著、文藝春秋刊

iOS の画像 (21)

『極夜行』と著者・角幡唯介さん

オーディオブック化もされています。

この本は今から2年前に出版され、第1回「本屋大賞 ノンフィクション本大賞」を受賞した一冊としても話題になりました。

角幡唯介さんは、あの早稲田大学探検部の出身で、ネパール雪男捜索隊やカナダ北極圏1600Kmを徒歩で踏破など、今の日本を代表する探検家の一人です。(詳しくはWikipediaなどをご参考下さい)

『極夜行』は、そんな角幡さんがデンマーク領グリーンランドに向かい、ずっと太陽が昇らない「極夜」の闇の中を、約4ヶ月間、一匹の犬とともに旅をした、その記録を書籍化したものです。

画像1

角幡さんの辿るルートに人が住んでいる場所はありません。夜がずっと続く「極夜」の中では、まさに光がない世界です。

どこまでも続く闇。月が朧気ながら大地を照らせば、気分は晴れます。しかし、そうは問屋が卸しません。見せてくれるはずの月の姿が見えない。地形が月の出現を邪魔してしまうのです。ひらすら続く暗黒の状態。その中を、目的地にたどり着くために、角幡さんは進んでいきます。

この本をひと言で言い表すと

自分の持っているコンパスを信じて、闇の中をただひたすら進んでいく。羽田がこの本をひと言でアピールするなら、この部分です。

道を間違えたら死!
正解でも運が悪ければ死!
それでも突き進まなければ目的地にたどり着けない闇の中の冒険

そうです、道を間違えれば遭難して死ぬのは当然。しかし、正解を進めていけても、運が悪ければ死んでしまう可能性が高いのです。実際に、角幡さんはこの本の中で何度かすさまじい危機に出会っています。

例えば、最後のシーン。毎年のように北極圏を旅している角幡さんでも経験したことがない不安定な天気。すさまじい強風と霧で視界はゼロ。なんとか数日後までに氷河の入り口にたどり着き、海まで下りれば村まで帰れますが、食料の関係でも猶予は1日も残されていません。

天気との勝負の中で、準備と経験だけを頼りに進み続け、なんとか正しい方向へと進んできた角幡さん。旅の終わりを実感します。しかし、ゴール寸前に、それは壊れてしまいます。一気に天候は変わり、狂ったような強風が吹き荒れるようになります。こうなると、できることは、ただひたすら耐えるのみ。天気の回復を信じて待つのみ。

「極夜が自分を殺しにかかっているとしか思えなかった」(p.301より)

そう角幡さんは書いています。
風上側に雪が溜まり、テントを圧迫し始め、さらに一緒にいたはずの犬が行方不明に…。

そして、凄まじい絶望感と緊張感が張り詰める嵐の中で、角幡さんはある情景を思い出します。

いろいろなことを教えてくれる一冊です

その情景はぜひオーディオブック、もしくは本で、読んで頂きたいのですが、なぜこの本を新社会人におすすめしたいと思ったかというと、おそらく普通に生活している中で、これほどまでに生命の危険に晒されることはないと思うのです。ただ、個人の中で「これは絶体絶命だ」と思うときは山ほどあります。そんなときに、角幡さんがここで書いている言葉、体験がすごく役立つときがあるんです。

準備は超必要。生き残る可能性が圧倒的に高くなるから
・ただし、準備をしても上手くいかないことがザラにある
・自分の力でどうしようもないときは動かないことも一つの選択肢
・どんなに悪い妄想がよぎっても仲間を見捨てないことの大切さ
・絶望にずっと沈んでいても、どこかで光は射すもの
・どんな闇が続いても、太陽が照らしてくれる日が来ることを信じる

少しスピリチュアルな感じになってしまいましたが、この本を読むと、理屈ではどうすることできないことが多いと思わされます。

文体もとても読みやすく、この経験をした角幡さんだけにしか書けない表現が多くて、読み物としても圧倒される一冊です。「おうち時間」にぜひオーディオブックや書籍で楽しんでほしいなーと思います。

以上、羽田でした。



この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?