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13年ぶりの特別公開・大乗寺応挙一門の障壁画!あと数日!(@兵庫県香住)

 昨秋から始まり、2023年3月15日(水曜日)まで、兵庫県香住町の大乗寺で円山応挙一門が描いた重要文化財の障壁画が、収蔵庫から本来あった客殿に戻されて、なんと13年ぶりに特別公開されています。長年、普段はめこまれている高精細の複製でも見に行こうかと思っていたほどのものでしたから、秋に公開されていることを聞いて以来、ずっと行こう行こうと気になっていました。ついに一泊二日の弾丸旅行で見に行きました。東京芸術大学美術館で開催された円山応挙展でも一部を見てはいましたが、やはり現地で見てこそのもののように思います。日曜日の朝10時でしたが、兵庫県の日本海側鳥取寄りという交通の分が悪い場所にもかかわらず、自家用車で駐車場に入る車の待機列ができるほどの混雑具合でした。テレビ効果畏るべし!京都から山陰本線に乗って、豊岡前泊して朝一に行けば(朝8時41分豊岡発9時28分香住着)、ゆっくり見れるかもと思っていたのは甘かったようです。
 京都から山陰本線の特急に乗り、円山応挙の生誕地=亀岡市を通って、園部・綾部・福知山を経由して丹波から但馬へと。山に囲まれた狭い盆地を川に沿って、大堰川・由良川をへて、和田山あたりからは"円山"川とともに豊岡・城崎へと誘われていくことになることに初めて気づきました。こういうことに気づけるのが列車の旅のおもしろいところです。目的地である兵庫県香住・大乗寺の住職=密蔵さんは応挙の若き日の支援者であり、応挙は彼に会うため何度もこの険しい山道をおそらく往復したはずで、応挙寺といわれる大乗寺への旅を円山川が伴奏してくれているのがたんなる偶然ではないような気がしてなりません。城崎あたりから豊岡の方に向かって、入江のように泰然自若とした佇まいで流れる「円山川」。円山川への憧憬や思いが、応挙が円山を名乗るきっかけになったのかも?歴史的な裏付けは何もありませんが、そんな妄想を膨らませて楽しくなったりしました。
 そんなつまらない妄想はさておき、大乗寺の応挙一門の障壁画群。これで一冊の本ができるほどたくさんの襖絵を見ることができました。

大乗寺正面の石垣

お寺の正面の石垣も立派で風格があります。

門から客殿の玄関をのぞむ

立派な門を抜けると、客殿の玄関なのですが、そこでは…

客殿玄関にある円山応挙像

応挙さんがお出迎えしてくれます。そしていよいよ重要文化財の障壁画165面とのご対面。まずは呉春の四季耕作図ですが、この客殿の障壁画東西南北は、四天王と関連づけた立体曼荼羅となっているそうで、東にあたるこの部屋は経済を司る持国天との関連で「四季耕作図」となっているそうです。
お隣は、仏間のフロントとなる、応挙の晩年の作品「孔雀之間」。

応挙晩年の大作「孔雀之間」。写真中央の4つの襖の真ん中2枚が開いて仏間へつながる。

この部屋は、全面金箔の襖に、墨のみで松と孔雀が描かれている。孔雀の羽や松の葉など、細やかな筆致と、墨なのに光の具合で色があるように感じさせられるのは応挙の画力なのだろうか。向かって左奥から部屋2方向へ向かって大きく枝を広げる松が、三次元空間を意識して広がりを感じさせて、実に見事。仏間へつながる4枚の襖のうち2つを開いて、仏様を拝める状態にしても、松と孔雀が自然につながるようになっており、応挙の空間プロデューサーとしての手腕も感じられます。このお部屋、もう少しじっくり見たかったのですが、団体行動を求められます。
次の彩色の「郭子儀之間」も、人物を配置しながら、部屋の装飾であることを程よく意識して、描きすぎないことが思考されている気がします。そして、一番楽しみにしていた「山水の間」。

山水の間

ここは、上段が海景になっており、下座から見ると貴人が海上に浮かんで座っているように見えますし、上座からは逆に海・河口・山々・滝など世界を睥睨できるようになっています。金毘羅宮の表書院上段の間にある応挙の山水とちょうど真逆の構想となっているのです。こちらも、上段の貴人の背景の大滝が部屋の外に小川となって流れ出して、大河となって下座の襖に戻ってきて、海原となるという構想に感動しましたが、大乗寺も許されるなら上座に座ってみたかった~。
仏間の周囲を他の部屋もぐるりと回りながら1階を見る終わると、1200円の拝観料に300円を+すると2階にご案内いただけます。急な階段を上れない方への親切システムなのでしょうか?こちらにも、さらに2間あって、ひとつは応挙の弟子で奇想の画家=長澤芦雪の「群猿図」が拝めます。ここまで来て2階を諦める選択肢は私にはありません。

長澤芦雪群猿図部分

この部屋はかなり近くでガラス越しでなく、芦雪の筆遣いを見ることができました。刷毛で茶色の絵の具で一気呵成に猿の形を描き上げ、そのあとに細い筆でユーモラスで表情豊かな猿の顔を描いていったのが、よくわかりました。香住の山を下り、海で戯れたり泳いだりしている猿たち。芦雪に囲まれる体験は何物にも代えがたいものがありました。
是非、残り数日ですが、時間のある方は現地でご覧ください。普段の高精細の複製画展示もそれはそれで得難い体験になるようにも思いますが。芦雪の襖絵は、どうやらこの秋にある中之島美術館での「芦雪展」にやって来るようです。香住まで行けないという方にもこの絵に出会うチャンスはあります!

追伸:昨日こんなニュースまで!!!!!


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