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楽園映画6 エターナル 奇蹟の出会い(モスクワ・ロシア)

キーウ生まれのロシア人、ミラ・ジョヴォヴィッチの心を思う

一瞬先はわからない。ロシアはアジア人から見れば違いがよくわからない人種のウクライナ人と戦争を始めましたし、永遠に続くと思われたナゴルノ・カラバフの紛争は突然アゼルバイジャンの勝利で決着しましたし、イスラエルとハマスは戦争中であの美しいイスラエルに入国することすら難しい情勢になっています。

ロシアが戦争を仕掛けて世界から非難を受けてからというもの、ミラ・ジョボビッチはこの状況をどう見ているんだろうと思わざるを得ません。というのもミラ・ジョボビッチはソビエト連邦時代、キーウ(キエフ)に生まれていて、本人もインスタグラムでウクライナ支持を訴えています。これはアメリカで活躍する彼女の偽らざる真実でしょう。

しかし、彼女の発言の裏にある葛藤について考えざるを得ません。なぜなら彼女の母親は現在ウクライナとなっている地域で生まれはしましたが、ロシア系の両親から生まれているロシア人です。第一、ソ連時代はロシアもウクライナもソ連ですので、ロシアとウクライナをあえて分ける意味もあまりなく、母もミラも、ロシアやウクライナを漠然とルーツだと捉えていることでしょう。

実際にミラは2011年に「エターナル」というロシア映画に出演した際のDVDのコメンタリーで、「母親の出身地であるロシアの映画に出ることができる時代が来るなんてこんな幸せなことはない」と笑顔で話していました。まだ米露関係もそれほど悪くなかった時代の話です。女優は時に嘘をつくものですが、これはさすがに嘘ではないと思います。なぜなら2011年のミラ・ジョボビッチと言えばすでに世界的な大スターであり、バイオハザードシリーズも好評でした。ハリウッド映画とロシア映画の予算は雲泥の差で、出演料や公開後の影響を考えても、当時のミラがロシア映画に出るメリットはあまり見当たりません。単純に、ミラは故郷に錦を飾りたかったのでしょう。つまり、ミラの故郷はウクライナであり、ロシアでもあったのです。この2つの国が戦争しなければいけない状況をミラはどう感じているのでしょう。

映画そのものよりも、ミラについてたくさん書いてしまいました。私は、この映画がロシア映画でミラ・ジョボビッチが主演じゃなければ忘れていたと思います。ミラにべた惚れした男が、いろんなピンチを乗り越えて結婚するまでを描いたわかりやすい娯楽ストーリーで、観ている間は面白くて、終わってしまうと後に何か強烈な考察が残ったりはしません。それでもこの映画は、ロシア映画の主演を張れて嬉しそうなミラを見ると同時に、当然のことながらロシアにも娯楽を愛し、平和を愛し、普通の暮らしを行う多数の人々がいることを忘れてはならないと思います。そういう意味で、この映画は今見る意味があると思います。残念ながら大手配信サービスでは配信されておらず、これはロシア侵攻とおそらく関係があるものと思います。DVDを借りて観てください!

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