縁を切ろうと思った家族からの言葉。
人生で一度だけ、家族に対して「もう縁を切ろう」と思い、それを実行したことがあります。
その相手は、祖父です。
私にとっての決定的な出来事から、かれこれ4年ほどが経ちました。
あれから私は、一度も自分から祖父に連絡をしていません。
実の両親の法事に参加するために、やむなく一度だけ顔を合わせましたが、それ以外は一切の連絡を絶っています。
それくらい心の傷となって残る出来事がありました。
私は実の両親を20代で失っています。
頼れる実家という存在を失って長いこと経ちました。
一応、実家は形としては残っていて、祖父は今もひとりでその家に住んでいます。
私はその祖父と連絡を絶っています。
祖父との関係は、母亡き後しばらくして、父が再婚したあたりからおかしくなり始めました。
詳細は割愛しますが、父が再婚したときに病気を患っていたのもあり、祖父が「継母はお金目当て(保険金)で再婚したんだ」と言ったりしたことに始まり、
最終的に祖父は、闘病の末に他界した父の3回忌も済まないうちに継母を家から追い出しました。
私には弟がひとりいます。
比較的早くに母親を亡くした私と弟にとって、料理上手で性格のよい継母は良き母親代わり的存在で、私たちは継母を慕っていました。
そんな継母を追い出したことで、私たちにとって帰りたい実家はなくなってしまい、後に残ったのは偏屈な祖父がひとりで住む田舎の家でした。
それでも私は祖父のためにと、忙しい合間をぬって孫の顔を見せるために時々帰省したりしていました。
そんな私にとって決定的だった言葉は、私の帰省中、ある出来事で祖父と口論になったときに言われたひとことでした。
「お前がちゃんとしているのなんて当たり前だ。弟の面倒もしっかり見ろ。家族なんだから」
弟は一人暮らしで実家からは離れた場所で働いています。
すでに自分の子を失った祖父にとっては、弟は愛孫であるとともに唯一の跡取りでもあります。
早くに結婚して家族を持った私と比べて、弟のことが心配で仕方なかったのでしょう。
80オーバーの偏屈じじいなので、口を開けば、弟の心配や継母への愚痴など、聞きたくもない話を聞かされるだけの帰省にうんざりしていた部分はもともとありました。
それでも、仕事と育児と家事で忙しい日々のなか、時間とお金を使ってわざわざ顔を見せに行っている私への気遣いが一切ないどころか、
早くに両親を亡くして、頼れる人もない環境で自立して家庭を持ち、仕事をし、子どもを育て、人としてちゃんとあろうと努力し続けているもうひとりの孫(私)に対して、
「お前がちゃんとしているのは当たり前」で、
それだけでは足りなくて「弟の面倒も見ろ」
なぜなら「家族だから」
と言ってのける神経が私には信じられませんでした。
なぜ私がちゃんとしているのが当たり前なの?
これは努力の結果なんだけど?
なぜ私のことは誰も助けてくれないのに、私は助けないといけないの?
母を失ってから十数年、公私ともに必死に生きてきた自分の心が折れたのを感じました。
言葉にするのが難しいのですが、心のバランスが大きく崩れました。
これまで理不尽だ、不公平だと思いながらも耐えてきたことへの我慢が一気に爆発したのかなと思います。
たったひとことでも労いの言葉があったら、縁を切ることまではしなかったかもしれません。
たぶん、誰か血の繋がった人に「よくがんばっているね」とか「お疲れさま」とかって、ひとことでもいいから言って欲しかったんだと思います。
でも残念ながら、真逆のことを言われてしまいました。
私は昔からそうでした。
優秀であることを求められ、長女気質で周りに頼るのが下手で、しっかりしていることが当たり前でした。
でも本当は優秀でなくても受け入れて欲しかったし、ダメな自分も含めて丸ごと愛してほしかった。
日々の疲れにプラスして、そんな長年の我慢が爆発したんだろうなと思います。
この日の発言と、それまでのやりとりを総合して、この偏屈じじいは今後もきっと変わらないし、これからも関わりを続けても私が傷つくだけだと冷静に判断したので、心のシャッターを下ろしました。
次の日の朝、祖父に何も言わずに家を出てから4年間、連絡を取っていません。
あれから反省したのか、周りの人にけしかけられてなのか知らないけど、私と家族の健康を気にかけている、というような手紙が時折届いたり、季節の野菜が届いたりします。
でも返事はしていません。
正直、受け取っているだけ感謝しろと思っています。
数ヶ月前に、息子のランドセル用にと書留で現金が送られてきました。
でも、それにも返事はしていません。
10万やそこらで過去の出来事が帳消しにできると思うなよ、と思っています。
私と祖父との関係を知っている親戚には「もう老い先短いじいさんなんだから、許してあげなよ」と言われます。
でも正直、なんで相手が老い先短いからって、傷つけられた側の私が許さなければならないのかがわかりません。
この4年の間に一度、悪夢のような出来事があったことも、祖父と関わりを持ちたくない気持ちに拍車をかけています。
2人目を妊娠していたときに突然祖父から手紙が届き、その日にお腹の子の心拍が停止した(と診断された)のです。
その子は死産になりました。22週でした。
そのときのお腹の子の死に、祖父からの手紙が関係があったかどうかはわかりません。
でもあまりに気味が悪い、縁起の悪い出来事で怖かったので、次の妊娠は絶対に祖父には告げないでおこうと思っています。
これ以上、悪夢のような出来事を起こされてたまるか。
これから祖父を許せる日がくるかどうかはわかりません。
4年経った今でも、思い出すだけで怒りがこみ上げてくるし、正直、いまこの瞬間に祖父が危篤だと言われても会いに行きたくはありません。
次に私から連絡を取るときは、「このまま祖父が他界したら、連絡しなかったことを後悔するかな?」と1ミリでも思えたときだと思いますが、今のところその日がやってきそうな気配はありません。
でも縁を切ろうと決めてからは、すごく心穏やかに過ごせています。
時折連絡があったり何かが届いたりすると、気持ちがズーンと落ち込んでしまいますが、普段は思い出すこともなく、平和に過ごせています。
なんで今日こんなことを書いたかというと。
久しぶりにあの出来事のことを思い出して心がざわついたから吐き出したいなと思ったのがひとつ。
もうひとつが、家族との関係に悩んでいる人がいたら、離れるのもひとつの選択肢だよ、と伝えたかったからです。
私は「家族なんだから」って言葉で何かを強制されるのが、虫唾が走るほど嫌いです。
家族だから何?って思います。冷たいのかな?
血が繋がっているということが判断を鈍らせること、あると思うんだよね。
でも家族だからって何を言っても、何をしても許されるわけじゃない。
近い関係だからこそ、維持するための努力をしないといけないと思う。
一緒にいると自分の心身が悲鳴をあげるくらいにしんどいなら、離れた方がよっぽど健全。そこに血が繋がっているかどうかは関係ない。
自分が自分らしく幸せに過ごせる環境を整えていくのは、生きていくための最重要課題だから。
以上、私の体験談でした。
誰かの何かの気づきになれば嬉しいです。
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