おでんとかき氷
「千葉県一ノ宮町」といえば、東京オリンピックのサーフィン会場として一躍その名が知れ渡った地である。町、とついている通り人口は12000人ほどの、県内においても比較的小さな町だ。
そんな町で世界各国から客人を招き入れるということで、ターミナルとなる駅の上総一ノ宮駅はすっかりモダンな作りに生まれ変わり、海の方へ繋がる新しい改札も出来たらしい。(とはいえ最寄駅は隣の東浪見駅なんだとか……)
今回の目的地である「赤七屋」はその反対側の改札から出て10分ほど歩いた場所、玉前神社の目の前にある。
どっしりとした店構え。それもそのはず、ここは国の有形文化財に指定されている。「高原家住宅店蔵」という名で登録されたこの建物は、土蔵造(外壁を土壁とした蔵)で、明治後期に建てられたものと推定されている。高原家はもともとは玉前神社の神職の家柄で、その後は商家として食用油や鶏卵などを売っていたそうだ。
入り口周りがレトロ可愛い……!そして開いている!いつも下調べなしに行っては休業日であったり、売り切れて店仕舞いをしていたりとなかなか辿り着けなかったので、今回はきっちり店舗のTwitterで情報収集をしてから向かった。満を持しての初来店である。
レトロ可愛いPOPに書いてある「静岡おでん」と「かき氷」。HPの記載によると「静岡市民にはお馴染みのおでんとかき氷の同時食い」を楽しめるということだが、それぞれの季節の代表格とも言える2つの品を同時に食すという発想……こはいかに。
店内に入るとずらりと並ぶお品書き。
かき氷は自分でカスタマイズできる仕様のようだ。優柔不断な上に組み合わせのセンスには全く自信がなかったので、「本日のかき氷」から「ほうじ茶ときなこと栗」をチョイス。秋の味覚である。おでんは一本110円!こちらはもつ、ロマンス(魚のすり身をはんぺんにしたもの)、ジャンク(ちくわぶ、ちくわ、さつまあげのセット)を注文。
全員がゆったりと、広々とした席に通してもらえるので、入れる人数はさほど多くはないようだ。店内は既に満席。席に着き、周りを見渡すとそこかしこにオーナーの趣味であろうか、可愛らしいレトロ雑貨が並んでいる。鏡の木枠には右から「高原商店」の文字が。商家に転じた頃に後から付けられたものなのだろうか。壁にかけられた時計からは丁度の時刻を伝える鐘が響き……まるで時を超えたかのようである。
歴史に想いを馳せているうちにおでんが運ばれてくる。しみしみに味が染み込んだ味噌おでん。実は前日の夕飯にもおでんを食べていたのだが、一口食べてこんなにも違うものかと驚いた。というより関東の生まれだからか、味噌おでんなるものを初めて食した。横で友人が「今日ほど酒が欲しかった日はない」と唸っていたが、全くその通りである。そのままで食べても味噌の香りが広がり美味であったが、一緒にと出された鰹と青海苔が混ざったダシ粉に、からし。これがあまりにも良いアクセントになる。
そうであった。おでんとかき氷を交互に食べるのであった。
すっかりおでんを食べ尽くしてしまいそうだった頃に現れたかき氷にまた、驚かされる。
もはや芸術である。見た目もさることながら、ふわふわの氷はほうじ茶が香り、きなことの相性は抜群。もりもり食べ進めても頭がキーンとならない理由は天然氷を使っているからなのだろうか。そして氷と氷の間に現れる和栗のペースト。かき氷とはスイーツであったのか。それは子どもの頃に屋台で食べた、人工甘味料をそのまま頂くようなかき氷とは全く別の食べ物であった。
昼ごはんを抜いた甲斐があった。かき氷がお腹を満たしていく。その合間におでんをつまむ。「甘い」×「しょっぱい」の完成である。お察しの通り、これはもはや「無限」である。和テイストのかき氷を頼んだからか、好きに飲むことができる温かい黒豆茶がこれまた親和性の高いこと。おかわりが止まらない。
余談であるが、普段であれば一ノ宮の地酒を頂くことも出来るらしい。次回はおでんを肴に日本酒を一杯、かき氷は自分でカスタマイズしてみようか。考えるだけでも至福の時間である。
赤七屋
千葉県長生郡一宮町一宮3030−1
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