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【心理学】「ジョハリの窓」についてジョニー・デップ主演映画「シークレットウインドウ」とともに解説!

こんにちは保健師・産業カウンセラーの佳保里です

今回は心理学「ジョハリの窓」について、ジョニー・デップ主演映画「シークレットウインドウ」(原題:Secret Window)と併せて解説していきます。
*この記事では映画「シークレットウインドウ」のネタバレが含まれます。まだ見てない方はご注意ください。
 

1.「ジョハリの窓」とは


「ジョハリの窓」とは、サンフランシスコ州立大学の心理学者ジョセフ・ルフト (Joseph Luft) とハリ・インガム (Harry Ingham) が発表した「対人関係における気づきのグラフモデル」の事を指します。
名前の由来はジョセフさんとハリさんの名前を合体させてジョハリとなったそうで特別な意味はないとのことです。
「ジョハリの窓」によると、私たちには4つの領域の「自己」があり、それぞれに特徴があります。
この4つの領域を認知し、自己分析することでコミュニケーションを円滑に運ぼうという考え方を示しています。
「ジョハリの窓」は今や心理学だけでなく、ビジネスシーンにおいても自己開発するための自己理解ツールとして広く認知されています。

2.4つの領域

ジョハリの窓

1.解放の窓:私と他者の双方が知っている私
 皆が知っている「私」。解放の窓領域が大きいほど、自己開示出来ており、「私」と他者の二者間のコミュニケーションは活性化します。解放の窓が狭ければ狭いほど他者からは「よくわからない人」と見られています。
2.秘密の窓:自分は知っているが、他者は知らない私
 意図的に隠している「私」と、他者に知らせる機会がなくて隠れている「私」であり、私的な「私」。自己開示することで秘密の窓領域を縮小し、解放の窓領域を拡大する事が出来ます。
3.盲点の窓:自分は知らないが、他者が知っている私
 相手が知らせてくれなければ気づかない「私」。 他者からのフィードバックは、盲点の窓領域を縮小し、解放の窓領域を拡大します。
4.未知の窓:自分と他者の双方が知らない私
 誰にも気づかれていない「私」。未知の窓領域の「私」は自己他者同時発見、自己発見、他者発見により知られるようになります。

3.映画「シークレットウインドウ」

ジョニー・デップ演じるモート・レイニーは小説家。モートは妻エイミーの不貞現場を押さえに行くところから始まる。
モートはエイミーと別居し、湖にたたずむ別荘で犬のチコと暮らしていた。そこに何の前触れもなく一人の男が尋ねてきた。その男ジョン・シューターはモートに「俺の小説を盗んだ」「どうやって盗んだ?」とモートが自分の小説を盗作したと訴える。シューターはモートが盗作したとする自分の小説「種まきの季節」(Sowing Season)を置いていった。モートはシューターの小説と自分の書いた小説「秘密の窓」(Secret Window)を読み比べ、内容が同じだったことに衝撃を受ける。
盗作を認めないモートに対してシューターはモートの犬チコをドライバーで殺し、警察に相談するなと警告する。身に覚えのない盗作疑惑とシューターからの脅迫に対しモートは友人ケンに護衛を依頼し、自分の小説が掲載された雑誌を取りにエイミーの家(モートとエイミーが共同購入した)に向かった。しかし、そこでエイミーと不倫相手のテッドが自分たちの家から出てくる姿を見かける。その姿を見てモートは「あれは僕の美しい家ではない」「あれは僕の美しい妻ではない」「今は違う」とつぶやく。その夜、一人きりになったモートのところにシューターが現われ、「小説の結末を変え、ジョン・シューターの名前で俺の小説を出版しろ」と要求される。
翌日、エイミーから「私たちの家が放火された」と連絡があり唖然とするモート。モートは護衛のケンと話していくうちにシューターはモートを脅すためにエイミーの不倫相手テッドによって送り込まれてきたのではと考える。モートとケンはシューターに事実を聞くため、翌朝町の店で会うことを約束した。しかし翌朝、モートは寝過ごし、慌てて支度するが、車の鍵がなく玄関にはシューターがいつもかぶっている黒いハットが置かれていた。戸惑いながらもモートは約束の店に向かうが、約束していたケンもそこにはおらずモートは自宅へ戻ることに。
自宅に戻るとシューターから電話があり、言われた通りに小道につくと1台の車が。車の中には同じ町の住人トムと護衛のケンが殺されていた。その場でモートは気を失い、気がつくとシューターがモートの足下に立っていた。シューターはモートが二人を殺したように見せかけるためモートの道具で二人を殺害していた。それを知ったモートは焦り、二人の乗った車を崖から湖へ落とし証拠隠滅を図った。
その後、雑誌のバックナンバーを取りに郵便局へ。帰宅して雑誌を確認すると、自分の小説が掲載されているページだけが切り取られていた。「どうやって?」封筒の中にあった雑誌の中身が切り取られているなんて。家に着いたモートはシューターが置いていった帽子をおもむろにかぶり、モートの混乱が明らかになった。そこへ離婚届を持ったエイミーがモートのところへ向かうとモートの中にいた別人格「シューター」が待ち構えていた。

4.別人格と未知の窓

私が映画「シークレットウインド」を見に行ったのは確かジョニー・デップ目当てで、ただのミーハーな看護学生でした。映画のラストの衝撃も辛かったですが、何より「これが誰も知らない自分か」と人間のこころの怖さを知りました。気軽に映画を見に行ったはずなんですが、勉強になりました。

ジョニー・デップ演じるモートは妻エイミーによると、別居する以前から酒とたばこに溺れ、最後の2年は別人のようだったと話しています。
また、映画の中でモートが「眠る」前後に何かしら事件が起きていることから、人格が変わるタイミングが「眠り」だとわかります。シューターが出てきたい時に「主人格」を眠らせるのでしょう。
モートのなかの別人格のシューターによると、シューターはモートが出来ないことをやらせるために創り上げられたと話しています。
人格形成についてはここでは記事にしませんが、この映画と「ジョハリの窓」の「未知の窓」を当てはめてみると以下のことがわかります。

・元来モートは自分は暴力的ではないと思っていた。人の目を気にして過ごしていた。妻もモートの様子が変なのはお酒の影響であると思っていた。郵便局の受付嬢はモートのことを「キュート」とすら思っていた。
・モートは妻を大切に思い、別人格シューターから守ろうとしていた。しかし、心の中では妻を許せない部分があった。この葛藤が最後の妻の殺害に繋がる。
・妻の不倫相手テッドにすら自ら暴力行為をすることはなかった。しかしエイミーを助けに来たテッドも「不正を正す」ため殺害する。

元来思っていた自分と違う自分の存在に気づくとき
映画では終盤に別人格シューターの特徴である黒いハットをモートがおもむろにかぶるシーンがあります。今まで自分を支配していた「主人格」を抑え、完全に別人格に支配されてしまった様子が伺えます。

現実世界で、自分の無意識下でこんなにも様々な事件を起こしていたら大パニックですよね。しかし、自分も他者も知らない自分は存在します。映画のように暴力的な部分だけでなく、自分の良い部分もまだ誰にも発見されていない事があります。
では、どのようにしたら未知の窓、誰にも知られていない自分を発見できるのでしょうか。

5.自分の知らなかった自分を知る

自分の知らなかった自分を知るには
「普段しないことをして自分の感情を探る」事です

「自分の知らなかった自分」は今までと同じような生活をしては発見することは出来ません。また、いつもと同じ友人よりはあまり話さない知人、初めて会った人など普段と違う行動、普段と違う人と接することで発見できることがあります。

具体的には
・やってみたいと思っていた陶芸教室に通う
初めての体験にワクワクする、ドキドキする、思っていたより面白かった、思っていたより面白くなかった、簡単だった、難しかったなど。
初めての経験をした自分は何に対してどのように感じたかその気持ちは初めて感じた気持ちか、今まで感じた経験があるか、心地が良いか、悪いかなど注意深く自分の気持ちを探ります。

・陶芸教室で知り合った人と会話する
声をかけたのは自分か、相手か、相手の第一印象と何故その人と話そうと思ったのか、会話の中で自分が感じた気持ちはどのようなものか、会話が楽しい、楽しくない、もう一度会いたい、会いたくない、初めて知り合った人と話をしているときの自分の感情はどのようなものか、ドキドキ、ワクワク、恐怖、逃げたい、何故そのような気持ちになるのか、こちらも目の前の出来事に対しての自分の感情を注意深く探ります。

そのほかに、会話が弾んだり仲良くなった人に、私は人から「○○な人」と言われると直接伝え、どう見えるかを相手に教えてもらうのも一つの手ですね。(私の場合、緊張しちゃいますが。)
いずれにせよ、普段と同じ事をしていたら「自分の知らなかった自分」は誰にも発見されないままです。

6.最後に


映画「シークレットウインドウ」は人が混乱とともに壊れていく様子が細かく描写されているので、心理学に興味のない方にもオススメしたい映画です。人間のこころの闇と深さが視覚的にわかります。
また、「ジョハリの窓」は自己理解、自己分析、円滑なコミュニケーションにおいて重要な概念です。ぜひご自身の「ジョハリの窓」を描いてみてください。自分は人に対して解放の窓が広いかな?秘密の窓は狭いかな?と考えながら1枚の紙に4つの窓を書いてみてください。どこの窓が一番大きいですか?どこの窓が一番小さいですか?
最後に
あなたは「自分の知らなかった自分」を知ってみたいですか?
それとも知らないままにしておきますか?




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