【思い出エッセイ】田舎で出会った野生のウサギ
小学校でウサギを二兎ほど飼育していた記憶がある。
彼らは俊敏のかけらも無く、狭い飼育小屋の中で我々小学生に捕まえられては抱っこされていた。
図鑑でウサギは走るのが早いというのを見た時、その記載を私は信じることができなかった。ケージの中でもそもそと餌を食べている姿ばかりが目に焼き付いていたのだ。
ところがその認識は後に改まることになる。
あれは小学生高学年の時だったか、近所の子供と3人で外で遊んでいた時、すぐ近くの畑で真っ白に動く動物を発見した。
近づいてみてみればそれはウサギであった。
私たちはそれを見てひどく興奮した。近所にウサギがいるなど想像もつかなかったのだ。
実際、野生のウサギ(どこからか脱走したとも考えたが近所でウサギを飼っている人なんて聞いたことがなかった)を見たのはあれ以来一度もない。
私たちは愚かにもウサギを捕まえられると思っていた。
私たちの中で、ウサギというのはあの学校の小さな飼育小屋でのそのそ動く動物でしかなかったのだ。
3人で全力で走って囲んで捕まえようということで、ほんの少しだけウサギとの距離を詰めた。
するとその途端、ウサギは危険を瞬時に察知したのかとんでもないスピードで遥彼方へかけて行ってしまい、一瞬で姿が見えなくなってしまったではないか。
私たちは「すげーー!!」「はえーー!!」と声を発するくらいしかできなかった。
ウサギは逃したが、私たちはそのことについて大して落胆はしていなかったように思う。
それよりも野生のウサギの走力を実際に目の前で見て、私たち3人は目を輝かせていたはずだ。
あの出来事以来、私の中でのウサギは可愛い動物というよりも、勇ましく野を駆け回る動物という印象が強い。
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