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読書感想:2020年に読んだ本を振り返る

コロナ禍で散々なことになった2020年ですが、自宅にいる機会が増えた事で本を読む機会が増えました。

今日は、今年読んでいた本のうち、特に印象に残ったものを並べてみます。

中国遊侠史

四月に立ち上がった #読書感想文 というハッシュタグ企画に合わせて紹介したのが、中国史においてロマンをかきたてつつも、その実態がよくわからない存在である「遊侠」を専門的に取り上げてくれた「中国遊侠史」。以前に持ってはいたんですが手放してしまったのを再度購入しました。

遊侠または江湖という概念から見た中国通史ともなっており、ちょっと分厚い本ですが大変読み応えがあり、この記事を書く上でも大変助けになりました。

震雷の人

ある日偶然TLに情報に流れてきた情報を見た瞬間に一目惚れして発売を待ち望んでいたのが、こちらの『震雷の人』でした。

「一字、震雷の如し」。言葉というものが様々な場で軽く扱われる現在にあって、この価値観によって全体を貫く作風は、痛快なくらい荘厳でした。

今年はWOWOWに加入して「長安二十四時」を見始めたり、ドラマ版隋唐演義にハマったりしましたが、この二作品とも時代背景の点からも繋がりを感じられより楽しく読めました。多くの識者からも推薦されていますが、この二作品のファンなら特に楽しく読めること請け合いです。

仙侠五花剣

清代後期に「剣侠小説」という、今でいうアクションファンタジーにあたるジャンルが流行していました。その剣侠小説の代表作のひとつが、岡崎由美女史の名著「漂泊のヒーロー」で紹介されていたこの『仙侠五花剣』です。

『震雷の人』が隋唐演義や長安二十四時と繋がるとするなら、こちらは「陳情令」「魔道祖師」の大先輩と言えます。

その『仙侠五花剣』の日本語翻訳版が出ると聞いたときは、大はしゃぎしました。実際、現代人が読んでみても世界観のセンスや躍動感あるアクションは新鮮なものでした。

シリーズ『中国の歴史』

今年の中国史本でいえば、岩波新書のシリーズ『中国の歴史』は外せないです。

内容に異論反論はあるにしても、「中国」という世界そのものを、王朝の興亡史でなくテーマ別に分ける構成は、その内容と合わさって大変読みやすかったです。

また、これまで気づかなかった視点や指摘も多く、特にシリーズ2巻『江南の発展』冒頭の「三国志と水滸伝」の対比に相当する“幇”の論理、“陸”の西北勢力と“海”の東南勢力の対峙、3巻『草原の制覇』からなら「ユーラシア東方」という世界観や“拓跋国家”としての唐王朝、澶淵の盟に代表される「盟約の時代」についての解説は実に刺激的でした。

本シリーズは、今後中華史劇や中華風異世界を舞台にした作品を作る上での必読書と言えるでしょう。

増訂 中国武術史大観

中華史劇を書く上での必読書クラスの専門書といえば、こちらの『中国武術史大観』も外せないです。我ながら思い切った買い物したもんだなって金額ですが、それだけの価値はありました。

仏教史や戦史、そして近現代史など他分野の歴史と絡めての解説は、「現実とは違う」とわかった気になっていながら無意識のうちにフィクションを史実と信じ込んでいた部分の実際を解き、しかもそれが下品に貶めるものになっていないという姿勢は、歴史を解説するものとしての節度を感じます。

その一方で、武侠小説などで描かれていた武林=武術界の光景や設定、さらには武術を身に着け、または教える人物や機会が歴史の中でどのように存在していたかも解説されています。

この本が手元にあるだけで、中華史劇における「武術の使い手」の描写の解像度は格段に上がるでしょう。

ちなみに、同じようなテーマの本がもう一冊見つけちゃったんですよね。

これも買うかなあ。金額もいい勝負なので腰が引けるけど。

ダンジョンズ&ドラゴンズ5版

今年は本格的にD&Dに手を出し始めた年でもありました。といっても、ルールブックを買ったばかりですが、それでも夢と希望だけは膨らんでいきます。具体的には、こんな具合に。

ただ、コロナ禍のせいもあり、また伝手もないのでプレイ機会がないのが残念です。それを埋め合わせるために、アメコミ「バルダーズゲートの伝説」シリーズの方も手を出してみました。

剣客や軽戦士が好みなてんぐですので、イチオシはローグ:シーフのクライドルですが、頭脳はマヌケだけど正義の魂と陽気さを持つミンスクや長剣使いの女神官ネリーズも気に入りました。

そんな彼らの冒険の最終章がどうなるのか、来年発売のシリーズ4巻が大変気になります。

新クトゥルフ神話TRPG

今年買ったTRPG関連書籍としては、新クトゥルフ神話TRPG(略称CoC)もありました。こちらは実際に一度遊ぶ機会を得られました。(お招きいただき感謝です!)

新版CoCを遊ぶのは初めてですが、キャラメイクやセッションにおいて、最初に感じたのは「自由と背中合わせの巨大なスリル」でした。

特別な能力も背景もない一般人として作成し、一歩判断を間違えばあっけなく死ぬのが目に見えている(実際、この時のプレイでは死人が出ました)、そんな状況は実に怖かったです。

でもその一方で、自分のPCが、どんな過去を持ち、どんな将来像を描き、どんな価値観を持つか。それをパーティバランスなどに束縛される事なくほぼ全面的にデータに反映させるのが認められる。その自由さがたまらなく心地良かったです。

またCoCは『比叡山炎上』のように、「歴史に残る出来事の真相としての物語」という意味での伝奇と相性が良いです。

来年D&DだけでなくCoCを遊べるとしたら、そういう方向のシナリオも遊びたいです。

総論

繰り返しになりますが、今年はコロナ禍で遠出もままならないまま終わり、しかもその状況は現在も悪化すらしています。

そんな時だからこそ、面白い本の存在は、苦しむ心の支えになる。それを実感する1年でした。





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