【黒くても日本人】 #916

僕は日本で生まれて日本で育ったから
日本人のつもりだし国籍も日本人

でもお父さんがガーナ人だから僕の頭はチリチリだし肌も黒い

小さい頃はいっぱいイジメられたんだけど中学生になった頃から背が伸びたのと
小学生の時から習ってた空手のお陰でイジメられなくなった

イジメは無くなったけど今度は街中で不良にからかわれる
デカいし黒いしチリチリだし

絡まれても無視するんだけど
たまにしつこいのも居たりする
仕方がないから立ち止まって話を聞いてみると
ナメてんのか！
そればかり繰り返してくる
だから僕はその人に
どうなったらいい？
と聞くと
また
ナメてんのか
そう繰り返してくる
面倒くさくなってきたので持っていたカバンをおろして中を開けて空手の胴着と帯を見せながら
稽古に遅刻するから行きますね
そう伝えたら許してもらえた

そんな事が何度か続いたら
不良の間で情報が回ったのか
誰もナメてんのかって言って来なくなった

後で同じ中学のヤンチャな同級生に話を聞いたら
見た目が黒人だしデカいから
肝試し的に流行ってたんだって
でも僕が空手やってるのが分かったから止めとこうってなったんだって
なんだそりゃ肝試しって
僕はオバケじゃないよ
でもねちゃんと目立つのは理解してる
あんまり居ないもんね
僕半分はガーナだけど半分は日本人の血が入ってるんだけど
ガーナの色が出るよねぇ

空手は高校に入って少ししたら辞めちゃった
何となくもう良いかなぁなんて思って
それよりも今は音楽に夢中で音楽ばっかり聴いてる
演奏もしたくなったのでエレキギターも貯めていたお年玉で買ったよ
テレキャスター
クラッシュのジョー・ストラマーが持ってたから真似した
僕のは安いモデルだけどね

イギリスのロックが大好きで特にパンクが好きになった
カッコ良いよねぇ

文化祭にもバンドで出たよ
ただね文化祭用のバンドだったから
ボーカルは女子で日本のバンドの曲とかだった
嫌いじゃないけどホントはパンクやりたかった

音楽の専門学校に入学した
ここならパンクバンドできるはず
そう思って入学したのに
この容姿だからブラックミュージック好きが集まってくるし
先生にもブルースとかソウルとかファンクとかそっちの話ばかりフッてくる

いやいや違うんだよパンクなんだよパンク
僕のファッション見たら分かるじゃん

でパンク好きな連中にバンド組もうよと誘っても
パンクじゃ無くてファンクと間違えられるからヤダって断られる

仕方がないから僕は好きな音楽を好きなようにできないフラストレーションを込めて曲を作り
授業の発表の時に歌った

そしたらウケた

先生からも新しいと褒められた

何が新しいのだろう？
僕には分からない
アレかな見た目とのギャップなのかな

しかしそうではなかった
彼の音楽は確かにパンクだったのだが
彼の血というのか刻むビートが特徴的で純粋な日本人には作り出せない
だからとても不思議な曲に仕上がっていた
彼は一度もガーナに行った事がない
にも関わらずだ

発表のあと一緒にやりたいっていう人が何人も現れた
中には説得力のある事を言ってくる人も居た
僕が大好きなクラッシュってレゲエやダブを取り入れてる
この音ってジャマイカから来てる
やっぱりブラックミュージックが融合してるから好きなんじゃないか

なるほどそういう事は意識してなかったけど言われるとホントそうだわ

その子とは一緒にバンドはしなかったけど仲の良い友達となった

別の人とバンドを組み
何度かのメンバーチェンジを経て僕たちはオーディション番組に応募した

地区予選を勝ち取り全国大会に出場した
どのバンドも凄かった
コリャ駄目だなと思った

やっぱりグランプリは取れなかった
準グランプリも逃した
ただ無かった賞が急に作られ僕たちのバンドが審査員特別賞を獲得した

審査員の1人が言ったのは
面白い
その一言だけだったけど嬉しかった

その後
グランプリのバンドのボーカルだけと
準グランプリのバンドはデビューして特に準グランプリのバンドはメチャクチャ人気が出た

僕たちのバンドは何処からもお声がかからず
その後卒業と共になんとなく解散してしまった

卒業後はお父さんが経営するガーナ風居酒屋を手伝っている
お店の名前は加納飯店
加納はガーナの和名なんだ
だからガーナの飯屋ってこと

今でもパンクは聞くけどお店ではバンクーを作ってるよ



ほな！