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【愛されキャラ】 #883



見た目が悪いという訳では無い
性格も多分そんなに悪くないと思う
でも成人式に行ったら誰からも声をかけられず
一番仲が良かったと思ってた子に話しかけたらキョトンとした顔をされた
私が「ナオだよっ」て言っても
「ナオ?分からない」
そう言ってスゥーっと去って行った

私そんなに存在感無かったっけ


理由は簡単だった

高校卒業後私は地方の大学に進み
一人暮らしをしていたのだが
ここの食べ物が恐ろしいほど美味しく
周りの人がいくらでも野菜やフルーツを下さり
それに合わせてお肉をバクバク食べていたら
みるみるうちに私の身体は縦では無く横に成長していき
気が付いたらおデブちゃんになっていた
しかもどうしてなのかストレートヘアだったのにクセ毛になりやがて天然パーマになってしまった


そうなのです
私は全く別のビジュアルになってしまった
おデブちゃんになったからか
おとなしい性格だったのがガハガハ笑い明るい性格になった
洋服も着たいものでは無く着れるものから選ばざるを得なくなった

おデブちゃんは正直好きではないけど
毎日の生活は楽しくなっている

大学での友達もなんだったら高校生の時までの数より多いと思う
私の周りはいつも笑いが絶えない
しかも何故かモテたのだ
おデブちゃんになってから2人の男の人から告白された
その2人とはお付き合いはしなかったけど
好きな人とお付き合いできた

とても大切にしてくれる


だから私はおデブちゃんだけど
どこか自信満々になっていた

成人式のために地元に戻った時も
楽しみで仕方なかった

自分の中で勝手に人気者になっている絵を思い浮かべていた


しかし現実はそうでは無かった
誰からも声をかけられず
仲の良かったお友達にも変な目で見られた


成人式が終わり
他の人たちは多分夜の街に繰り出したのだろう
誰からも声をかけられず
誘いも無かった私は
肩を落としつつ家路についた

早く戻りたい
あそこに戻ればまた華やかな毎日が待っている


しかし
どうしてあっちではモテモテなんだろう?
それはそれで不思議


実家は面白く無かったので
次の日には早々に戻った

大好きな彼氏はまだ自分の地元にいるようで戻っていない

でもいい
ここに居るだけで心が休まる

友達を誘って駅近くのファミレスで晩ご飯を食べた

「あのさぁ
地元に帰って成人式に行ったのよ
そしたらさぁ
なんか空気悪くって
だから早々にこっち帰ってきちゃった」

「そーなんだぁ
それは残念ねぇ
じゃさぁ
友達と飲みに行ったりしやんかったの?」

「うん
そーなんだよ
他の子たちは行ってたみたいだけど」

「えっ!
それってハミゴやん」

「ハミゴって言うな

ほら私ってば
こっち来て一気に太っちゃったし
頭もなんか急に天パになっちゃったから
誰だか分からなかったみたいなのよ」

「へぇ…」



成人式の後
同級生たちは飲み会をしていた

「あのさぁ
今日ナオミ来なかったよねぇ」

「そー言えばそうよねぇ
なんかあったのかしら」

「あっ
でもさぁ
ひとつ気になる事があったんだよ」

「なになに?」

「高木ブーのカミナリ様みたいな女の子がさぁ
ナオだよって
声かけてきたのよ
でも私の知ってるナオミとは違ったから
無視しちゃった」

「そーいや居たな
かなり存在感ある奴居た居た」

「そーなのよ」

「でもさぁ今日ナオミ居なくて
そのカミナリ様がナオだよって言ったんなら
ひょっとしたらそのカミナリ様
マジでナオミかもしれないぞ」

「マジか
俺さぁナオミの事ちょっと好きだったんだよねぇ
だからさぁ
今日見かけたらコクっても良いかなぁって思ったけど
あのカミナリ様じゃあ
ちょっと無理だなぁ」

「確かに」


彼らはそんな会話をツマミに楽しく宴会をしていたのだった


結局私は地元へは帰らず大学のあった地域の企業に就職した
彼は地元へと戻って行きなんとなく自然消滅した

でも相変わらずモテモテの私は男には何不自由なく暮らせていたので
そんなに落ち込む事も無かった

会社の同僚とすんなり結婚し
キレイな花嫁になりたいと
一念発起し約1年と半年で体重を35kg落としスリムな体型になった
みちがえた私に彼はビックリしていた

でもひとこと言われた

「結婚式終わったら元に戻ってね
あっちのナオちゃんの方が俺好きなんだよ」

マジかぁ
こんなに美人になった私を捨てろと言うのかっ
でも愛されたいので結婚後は元のおデブちゃんに逆戻り

本当に良いのかしらこれで




ほな!

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