見出し画像

【記憶の記録】 #615


僕はアホだけど
目も見えるし
耳も聞こえるし
声も出るし
両手もあるし
両足もあるし
内臓も脳も何も疾患は無い

なのに
どうしてか死んじゃいそうな気持ちになる

理由はだいたい分かっている

上手く行かないんだ
思い通りにならないんだ

分かっているんだ

人のせいにしてる事
自分は何も悪くないって思ってる事

でも
ビビりだから
逆ギレする勇気も無い
自分を自問自答したり反省したりしない

そしたら
頭の中で

「どうして?
どうして?
どうしてなんだよ
俺が悪いって言うのかよ
そんな訳無い
悪いのはアイツだ」

リフレインする

ココロの行き場が無くなって来たよ

そしたらねぇ
外に出られなくなったんだ
だから
バイトもクビになった

お腹が空かなくなってきたよ

2週間くらいしたら
ダイエットしたい人が
羨ましがるような痩せ方では無い
シュッとして無い
ガリッとしてる

1日おにぎり1個だったのが
1日おにぎり半分になり
おにぎりを食べなくなった

水だけになった

体力は当たり前に落ちまくり
ベッドで横になったまま

この頃には
朝が大嫌いで
朝が来ると不安になり
涙が溢れて止まらなくなる

誰も居ない部屋
誰も尋ねて来ない部屋

晴れの日も
雨の日も

ベッドの中
判断力が低下してきて
何かをしようとしても
例えば
冷蔵庫を開けて水を飲む
これだけの事でも
それをして良いのか
いけないのか
分からなくなる

足先と手先がジンジンしてきた

ここで初めて
あっホントに死んじゃうかもしれない
そう感じた

それを受け入れる訳でも無く
跳ね除ける訳でも無く
そうしたい訳でも無く
ただただ
嗚呼っ自分は死んでしまうのかもしれない

そればかりだった

もう少しかな
そう思ったら
子供の時の思い出や
お父さんやお母さんの笑顔や
悲しそうな顔が脳みその中にクルクルする


そこまで行った時に
友達からメールが来た

「来週の日曜日
ヤッさんも知ってる連中で集まるから
靱公園で花見せえへん?」

ビックリした

直ぐには返信出来なかった

どうしよう
どうしたら良いの?

こんな畜生野郎なのに
行っても良いの?

というか
このカラダは行けるカラダなの?

どうするの?
どうしたいの?

分からない
分からない
分からない

でも何となくだけど
これが最後のチャンスかもしれない

勇気を振り絞って

「ありがとう
行くよ」

そうメールを返した


そしたら不思議な事が
カラダの中に生まれた

なんて言うんだろう
あれほど弱りきっていた
心臓は激しくビートを打ち
涙も止まった

なんだ?

そしたら
食欲が湧いて来た

まだ戻れるかもしれない

起き上がってみた

クラクラする
壁伝いに冷蔵庫まで行き
水を飲んだ
胃がちょっとだけシクシクした

お粥を作り食べてみた

食べれた
完食できた

この日から
ちょっとずつ
食べる量を増やし
回数も増やした

4日後には
おにぎりも食べれた

久しぶりに外に出て
近くのコンビニに行った

お弁当とサンドイッチ
オレンジジュースを買った

これも
その日に完食できた

カラダは嫌がって無い

次の日
大好きだったビールを買って
飲んでみた
350ml 1缶でも酔った

更に次の日
もっと食べられるようになったし
ビールも3本飲んでもほろ酔いくらい

土曜日
すっかり普通に飲み食いできた

朝はまだちょっと不安はあるが
涙が出るほどでは無くなった

日曜日になった
どうする?

体調は戻りつつあるが
人は大丈夫だろうか
不安が残る

そう思っているとメールが

「ヤッさん
今から迎えに行くわ
後20分くらいで着くけど大丈夫?」

心臓がドキドキした

どうする?

でもこれが最後だ

「分かった
その時間にマンションの下で待ってるわ
わざわざありがとう」


下におりたら
もう待っていた

「ありがとう」

「ほなヤッさん行こか」

「うん」


久しぶりに乗ったチャリンコは
春の風を切って
とても気持ち良かった


この日を境に
どんどん元気を取り戻し
前を向いて生きる
そう思えた

ちょっとずつね




ありがとう
テンテン





ほな!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?