【白い糸】 #557
私の好きな先生
私の好きな先生は
夏休みが終わったら
居なくなった
新しい先生
新しい先生は
好きでは無い
冬休みが終わったら
居なくなれば良いのに
結局
卒業するまで
好きでは無い先生のままだった
私は大人になった
私は働いている
小さな地元新聞社の記事になった
ある日
取材に行った先に
私の好きな先生が居た
新しい品種のマンゴーを育てる農家
新しい品種のマンゴーで町おこし
新しい品種のマンゴーを育てる先生
私は嬉しさのあまり舞い上がった
でも
すぐに撃沈された
奥さんが同級生だった
知らなかった
小さなお子さんも居た
取材に身が入らない
地元の友達のご飯を食べに行った
地元の友達は先生と同級生が
結婚した事を知っていた
私は知らない
同級生と付き合っていたから
学校を早期退職した
私は知らない
友達は言う
「皆んな知ってたよ」
私は知らない
「どうして私は知らないの?」
「知ってると思ってたわよ」
「知らなかったわよ」
「そう」
「そう」
「もしかして好きだったの?」
「そうじゃ無いけど…」
「そう」
「そう」
お母さんも知っていた
私は知らない
私はアホなのかしら
私は急に失恋者になった
ヤケクソで会社の先輩と寝た
1ヶ月後
同期の男の子が
先輩と寝たのを知っていた
私は知らない
情け無いのと
恥ずかしいので
新聞社を辞めた
思い切って東京に出てみた
ギラギラしていた
毎日疲れる
そんなある日
小さな劇団の公演を見た
感動した
次の公演も見に行った
楽しかった
劇場を出る時に声をかけられた
「前の公演にも来てたよね」
「はい…」
「良かったら今からご飯でも?」
断る強さが私には無かったのと
同じ演劇を楽しんだ人なので
何となく応じた
偶然地元が近かった
仲良くなった
3度目に会った時に寝た
4度目から急に偉そうになった
5度目を断ったら
彼はストーカーになった
マンションの場所を教えなきゃ良かった
仕方が無いし
怖いから引っ越した
職場から遠くなった
そこまでして働く会社でも無かったので
退職した
今は近くのスーパーでレジのアルバイトをしている
此処はあまりギラギラしない東京
楽しくも無いし
悲しくも無い
もうあの劇団の公演は見に行っていない
怖いから
暇だったので
何となく
街中華の動画を撮ってみた
なんのキャプションも入れずに
YouTubeにアップしてみた
少しだけフォロワーが付いたが
コメントが下品だったので
数回やって
アカウントも消して辞めた
レジのアルバイトはまだやっている
その頃
私の好きな先生は
離婚していた
私は知らない
知っていても
もう好きでは無い
だから
私は知らなくても良い
しし座流星群が今日見れるらしい
此処は東京
今日は曇り
私には関係無い
この先もずっと私は
ずっとずっと
私は私のままだ
またいつか
お会いしましょう
ほな!
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