【百戦錬磨の男】 #527

そいつは強かった
とにかく強い
百戦錬磨（ひゃくせんれんま）の無敵男


だが彼はよくナメられる
顔は童顔で弱々しく
身長も非常に低くて
身長が低いというよりも
全体的に小さく作られているような感じだ

本人もややその部分は気にしていて
普通の背格好より
ガタイがデカい奴への敵意が強い



田舎者であるヤスは
東京は複雑過ぎて
土地も人も理解するのは到底無理だと
サジを投げている

田舎の両親には
東京でBIGになってやるぜと
息巻いて飛び出してきたけれど
もうチンプンカンプンだ




ある日の事
女の人が数人の男の人に絡まれていた
通行人は見えていないのか
気が付かないフリをして通り過ぎる
ヤスは思った

何とかしなきゃ
とも思ったのだが
見えない
見えない
知らない
知らない
で前を通り過ぎた


百戦錬磨な筈なのに


それはゲームの中だけの話で
ヤス本人は
童顔で小柄な普通の青年であった

「今はあんなもんに関わってる場合じゃ無い
バイト遅刻しちゃうよ」


女の人がどうなったかなんて
知ったこっちゃ無い
それが東京なのさっ


と変な解釈をするセコい男
せめて警察に通報くらいしてあげれば良いのに





ほな！