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【コンビニマン】 #504


ヤッちゃんはクラスの人気者
頭も良いし
運動神経も抜群
おまけにルックスも最高
それでいて偉そうにしないし
クラスメイトを
差別したり
区別したりせず
誰とでも
同じくらい喋って
同じくらい笑っていた

ただ
ヤッちゃんの弱点と言えば
これ弱点って言い方で大丈夫かなぁ…

まぁいい
弱点みたいなコトがある
それは本人では無く
家庭環境だ

とここまで言うと
絶対に両親に良からぬ問題があったり
恐ろしく貧乏だったり
そーいうのを想像するだろう

それは違うのだ

ヤッちゃんのお父さんに原因があるのだ

ヤッちゃんのお父さんは
この町の唯一のコンビニのオーナーだ
それが問題?

そーじゃ無い
コンビニだから当然
お父さんも店頭に立つ
そりゃそーだろ

しかし
そのお父さんは
お父さんというだけあって
男なのだが
女なのだ

何を言ってるの?
それはオカマ?

今の言い方だとLGBTQってのん?

いや
そーでも無いらしい

喋り方も立ち居振る舞いも
オッサンなので
そーいうのでは無いらしい

実際
ヤッちゃんにはお母さんがいたから
そーいうのでは無いようだ


じゃあなぜ?


それは
お母さんの『死』と関係しているらしい

ヤッちゃんが幼稚園児の頃
お母さんは癌でこの世を去った

ヤッちゃんはすんごいお母さんっ子で
お母さんの後ろをずっとついて回る子だったらしい

そんなお母さんを
世界にただ一人のお母さんを
ヤッちゃんは失った

ヤッちゃんは
それから幼稚園にも来なくなった

お父さんはとても悩んだ
お父さんもお母さんを愛していたし
ヤッちゃんを愛していた


キッカケは些細なコトだった


小さかったヤッちゃんは
お父さんに八つ当たりをして


「お父さんなんて
大嫌いだっ
お父さんが死ねば良かったんだ」


「ヤスシ…」


「やめてよ
離してよ

そーだよ
お父さんがお母さんになってくれたら
僕なんだってするよ」


お父さんはビックリしたし
スゴく悩んだ

しかし
愛するヤッちゃんのため
覚悟をした

お父さんは
お母さんになった

さすがに立ち居振る舞いは
女になりきれなかったが
見た目はカツラを被り
化粧をし
胸にも何かを入れているのか
膨らんでいる


周りの商店やお客さんは
突然の変身にビックリした様子だったが
いつしかそれも馴染み
逆に人気が出て
かえってコンビニは繁盛した


そんなヤッちゃんも
中学生になった時


「ゴメンよお父さん
僕があんなコト言ったばかりに
もうお母さん風でなくて
普通のお父さんに戻っても良いよ」


するとお父さんは


「ダメよヤスシ
もうこれがお父さんなのよ
ヤスシのお陰で
お父さん
お母さんもできちゃうんだから
絶対にやめないわよ」


そう
喋り方まで変わり始めている


ヤッちゃんは大学生になり
その後
東京の大手企業に就職し
恋人もでき
その彼女と結婚する事になった

ヤッちゃんは
田舎のお父さんに電話して
彼女を連れて帰るので
その時だけは
お母さんじゃなくて
お父さんに戻ってと

もちろん
お父さんも
大切な息子のため
それは快諾した

ただ
実際に彼女と家に帰ると
服こそ男物だったが
バッチリ
アイメイクと口紅をした
変な生き物が突っ立っていた


その時は大爆笑で
なんとか縁談はうまく行き
相手方の両親も
お母さん風を理解してくれたが
結婚式に留袖姿で現れるとは
ヤッちゃんも知らなかったようだ



今でも
コンビニは大人気だ





ほな!

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