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【良いという悪い響き】 #509


新子圭子という女優がいた

彼女は何かにつき炎上したり
スクープの対象になったり
とにかく
芸能界からも
世間からも
お騒がせで嫌な女というイメージであった


実を言うと
当の本人は
とても素朴で良い人

なのに
世間では鬼畜扱い


これには訳があった
一つは事務所が小さかったコト

事務所が小さいので
メディアも忖度する必要が
あまり無かった

だが
小さな事務所
個人事務所などで
活躍されている俳優さんは沢山いる
これは大きな理由にはならないと思う


そしてもう一つ
恐らくこちらが原因だと考えられる

この事務所は先に述べたように
とても小さな事務所
いつもニコニコな社長と
その姪がマネージャー
そして圭子

問題はこのマネージャーにある
社長はいつもニコニコで
姪に甘い
だから姪のやり方に一切口を挟まない

圭子もそうだ
彼女もおっとりした良い人なので
彼女の言うコトに従順である

圭子にとって大切なのは
演技をするコト
女優として作品に
本気で取り組むコト
であった

しかしマネージャーはそうでは無い
いかにして注目させ
常に芸能界で圭子の名前を広めるか
それしか考えておらず
その為に考え出したのが
ネガティヴキャンペーンの連続攻撃

この人は
自分のところの女優を育てたいのか疑わしい
まるで自分で潰しにかかっているようである

いつも
そのトラップに引っかかる圭子


自分や他の業界関係者もいた飲み会でも
二次会へ行く途中に
無理矢理共演男優と並んで歩かせ
自分で写真を撮って
雑誌社に送りつけたり

勝手に圭子になりすまし
公式アカウント作って
毒を吐いたり
散々なやりたい放題だ


とうの本人は敏腕マネージャーだと思い込んでいる

敏腕どころか
圭子はどんどん良い役からは遠のき
つまらない役にばかり
もちろん端役でというコトだ


だが
圭子はいつも本気の人なので
文句も言わず真剣に取り組んでいる


実際に彼女と共演した俳優やスタッフは彼女の素晴らしさを知っているし
マネージャーの危険性も知っていた

よその事務所に口出すのも皆遠慮した



この圭子と同期に当たる女優の一人に
波木久美というのがいた

これは
圭子とは真っ逆さまで
クソみたいな女なのだが
モデル上がりの美人で周りから
チヤホヤされてここまで来ている


事務所も大手で
こちらは本当の敏腕マネージャーが付いており
彼女のスキャンダルの火消しに追われていた


クソ女は
大きな存在にはコビを売るが
特に自分がしょうもないと感じた女優にはキツく当たった

あえて人がいる場所で
大声を上げる


「おい山田」

「はっはいっ」

「おい山田
さっきのシーンなんだよ」

「はっ?」

「いやだから
さっきのシーンだよ」

「さっきの
と言いますと
それが何か?」

「なんで圭子に真太郎さんが抱きつくわけ?」

「いやそれは
真太郎さんが弟さんで
死んだ圭子さんを抱きしめる
というシーンですから」

「しかもさぁ
後ろ姿半分だったら
私じゃ無くて
誰か他の奴に代わりにやらせたらいいだろうが

軽々しく真太郎さんとくっ付きやがって」



でも
彼女は世間では
大人気
出る映画はヒットし
バラエティ番組にも引っ張りだこ
来年はハリウッドの話もあるとか無いとか
彼女にしたい女優No.1



圭子には無縁の世界だし
彼女は目の前の作品に本気で向き合う
それが彼女が一番大切に思っているコト
それが端役であってもだ



ただ
そんな彼女にも秘密があった
あれだけ嫌っているかのように
ボロカスに言う久美の作品には
必ず圭子は出ている



理由を知っているのは
ただ一人
久美のマネージャーだけだ
圭子のマネージャーはアホなので
そういったコトは一切知らない
しょうもない爆弾を作るので必死だからである



久美には
今の住まいとは別にもう一つの住まいがある
というかアジトのような場所がある

ココに来るのは久美と久美のマネージャーと
あと一人
圭子だけだった


誰にも分からないように
マネージャーがいつも作戦を立て
それに従って入室する


いつも
圭子の方が後から入室することになっていた



圭子が入室すると
そこには下着姿で三つ指をつく
久美の姿があった


「おかえりなさいエル様」


なんだ?
エル様って

多分
圭子→K子→Kの次のアルファベットLなんだろう
バカバカしい


「エル様
お風呂になさいますか
お食事になさいますか
それとも…」


すると圭子
いやエル様は


「ジェイはどれが良いの?
それともって?」


凄く妖艶な見たこともないような
圭子が現れた


これまた面倒くさいけど
久美→Ku美→Kの一つ前のアルファベットJなんだろう



ジェイはすると


「エル様さえよろしければ
お風呂よりも
お食事よりも
私の可愛がりの時間を
先に頂戴したいです」


「仕方ないわね

では可愛がってあげましょう」



ここからは
久美の日々のザンゲ
特に圭子のコトに関しては
丁寧に時間をかけてザンゲをし
許しを願った


その後
何を具体的にしていたのかは
知らないが



「ありがとうございます」
という声や
「ウッ」や「ハゥッ」なんかも聞こえたり
シクシクと鳴く声などがした



ひとしきりの儀式を終え
汗だくになった二人は
シャワー室へと消えて行った



これを知っているのも
マネージャーだけである



そして今日も
嫌われる良い人
新子圭子と

愛される鬼畜
波木久美は

同じ撮影現場に入る



「用意
本番っ

スタァ〜ット‼︎」





ほな!

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