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【毎日同じ夢】 #533


「オッサンは誰やねん?」


「ワシかぁ
ワシは色々な呼び方をされとる」


「で誰?」


「せやなぁ
神と呼ぶ者もおるし
悪魔と呼ぶ者もおるし
役行者と呼ぶ者もおるし
迦楼羅と呼ぶ者もおるし
アヌと呼ぶ者もおるし
アメンと呼ぶ者もおるし
アルトジラと呼ぶ者もおるし
ゼウスと呼ぶ者もおるし
山田と呼ぶ者もおるし
田中と呼ぶ者もおる

まぁ他にも色々じゃ」


「自分から名乗る名前は無いっちゅーことやね」


「まぁ早い話がそうじゃ」


「じゃあオッサンはオッサンでええやろ?」


「おおぉ
また1つ増えた」


「何ニヤニヤしてんねん
気持ち悪いなぁ

でぇ
オッサンはなんで勝手に人の家ん中にいとるんや」


「おおぉそれかぁ
それはワシも知らん
嘘やけど

だいたい
いつも気付いたらどっかにおる」


「そらどっかにはおるやろけど
鍵かかった人の家ん中にはおらんやろ

それ不法侵入っていうヤツやぞ

どうやって入ったんや」


「いや普通に
そこから
こんにちは
言うてな入って来ましてん」


「こっから?」


「そう
そっから」


「ここ便所の扉やん
おかしいやん

ほんなら聞くけど
その便所にはどうやって入ったん?」



「そら分からん
ワシは歩いてて
左パッと見たら
扉がありましてん

いつもだいたいそんな感じや
でな
ああまた扉があるなぁ
しゃあ無いわなぁいう感じで

こんにちは言いながら開けて入りましたんや」


「そんなアホな話あらへんやろが
見とけよ
ここ便所の扉な
開けるで」


「やめときぃ」


「何でやねん」


「まだ早いわ」


「早いって何やねん」


「せやから
まだ早い言うとんねん」



「その理由を聞いとんねん」



「そんな早よ開けたら
多分…
便所やろ」



「そりそやろ
ここは
今開けても
あとで開けても
明日開けても
便所は便所や

オッサン絶対おかしいわ
嘘丸出しやん

便所から入ってきた言うとんのに
なんで玄関にちゃんと靴ぬいどんねん

そこの玄関から入ってきたんやろ

アレやろ
分かったわ

俺が今朝はうっかり
鍵かけんのん忘れてて
それをたまたまオッサンが見つけて
部屋に入って内側から鍵かけたんやろ」


「正解
ピンポン」


「オッサン
さっきも言うたけど
これは犯罪なんやで
これはとてもじゃ無いけど
大目には見られへん

今から
警察とそれから管理会社に電話するから逃げたらアカンで」


「そんなんせんでええ
伝えたい事があるから
それを伝えたら
おとなしく帰るさかいに
面倒はよしてくれ」


「いやいやいや
面倒かけとんのはオッサンや
人の家に勝手に上がり込んだらアカンの
だから今から警察と管理会社に連絡するの
分かった?」


「いやせやから
伝えたい事だけ伝えたら
帰る言うとるやろ
分からんやっちゃのぉ」


「分かって無いのはオッサン
 
ほんならなオッサンの話は聞いたるから
オッサンも警察と管理会社の人が来るまでおって

交換条件や」



「ワシは何もアンタとは交換するもんは持っとらせん

まぁまぁええわ
ワシの話を先ず聞けって
聞いてから
その警察やら管理なんちゃらに連絡したらええ
分かった?」


「分かったよ
じゃあ話をを聞くよ」


「アンタな
今この部屋へ仕事から帰ってきたと
そう思っとるやろ」


「そやな」



「せやけど
アンタ仕事なんか行っとらん」


「何でそんなん決めつけんねん」


「そりゃそうよ
それを伝えるために来たんやから」


「で
仕事行ってると思てる俺は
仕事に行ってなくて
どっから帰ってきたんや」


「帰ってきた気しとるだけや
アンタずっとこの部屋ん中におる」


「そんな訳無いやろ
今日もちゃんと仕事行ってきたで」


「だから
アンタはそう思とるだけや」


「何でそう言い切れんねん」


「それはなぁ
アンタ
もう死んどるねん」


「死んでる?
死んでるわけ無いやろ
ちゃーんと此処におるし
オッサンともこうして喋っとるし」


「生きてる人間は
ワシは見えんし
ワシとは喋られん

ベッド見てみぃ」


「ええっ!
嘘やん
俺が寝てる」


「アホ
寝てるんのうて
死んどるんや」


「嘘や」


「嘘やあらへん
現にオマエはワシとこう喋っとるのに
もう1人のオマエはベッドにおる

アレはオマエの抜け殻や
オマエ自身は今ワシと喋っとる

それをオマエは気付いて無いから
それを伝えに来たんや
でないと
ずーっと此処に留まる事になるでぇ

それはアカンから
呼びに来た
まっそういうわけや」


「まだ信じられへん 

とにかく
オッサン約束や
警察と管理会社に連絡してもかまへんか?」


「ええよ」


「あれっ?
何でやろ?
繋がらへん」


「そらそうやわな
幽霊が電話できたら
気持ち悪いがな

まぁそういうこっちゃ

そろそろワシと一緒に行きまひょ」


「何処へ?」


「何処へって
アンタやワシが帰るべき場所へや」


「帰る?」


「そう帰りまんねん

また機会があったら
人間になったらよろしい

さあ行くで」


そう言ってオッサンは自分の靴を片手に便所の扉を開けて入って行った

そこには便所は無く
眩しい光が差し込んでいた

俺は入るというよりも
引き込まれるような感覚で
吸い込まれて行った




ここで目が覚めた

また同じ夢
もう3ヶ月毎日同じ夢を見る
毎日だ
普段だったら夢を見ない日もあるのに
この夢を見出してから
毎日見るようになった

頭がどうにかしてしまっている

でも誰にも相談できず
病院に行くべきか悩みつつ
仕事へと向かった


そして夕方

仕事も定時で終わり
いつものように帰宅した


家に入ると
部屋の中に
誰かが立っていた




ほな!

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