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【おじさんと僕】 #870


僕は内臓に重い疾患を抱えていて障害者の認定もされているんだけど
見た目には全く分からず
若いからという事で余計に健康だと思われまう

しかし
普通の人より疲れやすく
できれば電車やバスなんかでも
いつもという訳じゃないのだけど
座らせてほしいなと思う時がある

でもこんな見た目なので

「席を空けて下さい」とか
「席を代わって下さい」とか
よう言わんし

ある日なんか
もの凄くしんどくて
電車のドアの近くに座り込んで居たら変な目で見られた
まるで不審者を見るような目で

しんどいんだって

でも言えんの

勇気が出ない



で次の作戦に出てみた

座らせてほしくなったので
優先座席に行き
その中でも一番優しそうな人に
自分の障害者手帳と
メモ書きで
「席を譲っていただけませんか?
お願いします」
というのを見せた

そしたらその人に言われた一言
「それ偽モンちゃうん?」

僕はビックリした


そしたらその隣に座ってた
どう見てもカタギでは無い風のおじさんに

「にぃちゃん
ここ空けたるさかい
ここ座りぃ」

そう言って立ってくれた
隣の偽モンちゃうんと言ったにぃちゃんには何も言わず

僕は
「ありがとうございます」

そう言って座らせてもらった

そしたらおじさんが懐から

「俺もな持っとんねん
糖尿でな
ホンマかなんで

でもな
調子良うなったさかい
にぃちゃんと交代や
世の中助け合いや」

そう言って笑っていた

真横にはさっきの
偽モンちゃうんのにぃちゃんが座っている
でも居たたまれなくなったのか
急に立ち上がり
おじさんに向かって

「あのどうぞ
座って下さい
僕元気なんで
次の駅で降りますし」

そう言って扉の方へ行ってしまった

そしたらおじさんが

「そこのおばぁちゃん
こっちおいで
席空いたるさかい
座りなはれ」

そうやって手招きした

周りの人はその大声に一斉に
おじさんを見た
そして見てはいけない人を見た
と言った感じだろうか
スグに目を別へ移した

おじさんは尚も
「ほれほれっ
ちょっとそこ
おばぁちゃん通るさかい
開けたってやぁ」

するとモーゼみたいにさっと
人が二手に分かれた

おばぁちゃんはそろそろ歩き
やっとこちらへ

おじさんに向かっておじぎし
「ありがとう」

そう言って座った

これがアメリカとかやったら
拍手とか起こるんだろうけど
ここは日本だから何も起こらない

次の駅でおじさんは降りて行った

降りる前に何故か僕にウインクして行った
スゴく昭和を感じた


やがて僕も降りる駅に到着したので
電車から降りた

不思議な事に僕が座っていた座席には誰も座らなかった




ほな!

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