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【2世とカルト】 #732


母が亡くなって私は呪縛から解き放たれた
と言えばまるで解放されたかのように聞こえるが第二の苦難が待ち受けていた


私の母は私が小さい頃に父と別れた後に友人から誘われて『太陽と星』という宗教団体に入った
この教団は一般的に言うカルト教団にあたる
とは言うものの決して犯罪組織では無い
あくまでもカルトと分類されるだけだ
ただ非常に厳しく
恋愛禁止
国歌禁止
塾禁止
テレビ禁止
インターネット禁止
ゲーム禁止
異性の人と2人だけで会う事も禁止
同性であっても教団以外の人間と3人以上では集まらない
性行為は教団が認めた信者と結婚した場合に限る
勉強以外の時間は親の手伝いや教団の奉仕活動そして教団の教えの書の音読
朝は5時に起きお祈りをし夜は9時就寝
他にも細々とした事が沢山ある

これでは普通の学校には行けない
私たち家族は在宅信者だが本部の近くに住み
私は学校代わりに本部へ行きそこで他の子供たちと一緒に通信制の学校の勉強をした
勉強中は私語はもちろん禁止
見張りみたいな人は居るが先生では無いので問題が分からなくても質問は禁止


小学生の間まではこの生活がむしろ楽しかった
普通に学校に行って友達と勉強し夕方になったら母が迎えに来る
普通の子供と大して変わらない


しかし中学生になると思春期という事あって自我に目覚めだんだん教団の教えが苦痛となりだした
私が反抗的な態度を示すとザンゲ室に呼ばれ幹部からの説法という名の体罰を受けた
これは逆効果だと思う
私はより普通を求めた

普通の女の子みたいに遊んだり恋愛したりテレビみたりスマホいじったり色々したかった
しかしそれも教団と母からの高圧的な説教で踏みにじられ
教えを背くと地獄へ行くと洗脳し続けた
この地獄の教えはとても怖く私の潜在意識にこびりつきなかなか拭い去る事が難しかった


そんな私に転機が訪れた
私が高校3年生の時に母は幹部教団のミスで大火傷を負い救急搬送されたが数日後に亡くなった

死に際に母は
「自由にしなさい」
それだけ言い残して死んでいった

教団は警察の捜査が入り色々と調べられた
ニュースにもなっていたそうだ
別の幹部が私の所へ来て陳謝し
「お母様からの伝言です」
そう言ってメモを渡された

それには
「もし私が亡くなったり社会生活困難者になった場合
娘には教団に残るか残らないかは自由に決めさせてやってほしい」
そう書かれていた

この教団では一応2世以降信者に対しては強制しての信者圧力は無かった
あくまでも信ずる者は受け入れるというスタンスを取っており母は母なりの考えがあったようだ
自分が私を保護する義務があるうちは教団で共に過ごしてほしいと考えていたようだった

私は当然ながら教団に別れを告げた
母の事故については民間の弁護団が立ち上がり教団に対して民事訴訟を起こしている
そして私の事に対しても訴訟の準備をしている
それとは別のグループからも手が差し伸べられた
カルト教団2世を守るグループで私のように親の都合で入信させられた子供たちのバックアップとケアを目的としている

長年教団の中で生活していたので理想は普通の女の子になる事だが
実際は隔離生活のせいで対人恐怖症やパニック障害などが発生し人としてもまともに生活できないでいる
テレビを見たりネットを見たりすると頭が痛くなり吐き気をもようす
人とどうコミュニケーションして良いのかも分からない
人との距離感も分からないし自分では気付かないで相手に対して酷い事を言っていたりもするようだ

普通に憧れ普通になりたいのに
その普通が分からずむしろ普通が変に感じる

周りのサポーターは焦らないで良いと言う
焦ってる訳じゃ無い
世の中のスピードが速過ぎて私はグッタリしているだけだ

いつか普通の女性となって普通に恋愛をして普通に結婚して普通に子供を産み家族を作り子供たちのお弁当を作ったり脱ぎっぱなしの靴下にさえ愛おしさを感じ
晩ご飯を作りながら流行り歌を口ずさみ
楽しい食卓を家族で囲んで学校であった事聞いて笑い
食後は夫のビールに付き合う

そんな日が来ると良いなぁ






ほな!

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