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【箱庭の映画館】 #740


小さな映画館の
小さな映画
日本中
世界中のほとんどの人が知らない映画

そんな映画館だったらきっと潰れるよ
何をおっしゃるの
夢の無い方だわね

小さな映画館はあるの

座席は二つ三つ
コーラやポップコーンは要らない


主人公は僕だ
僕がヒーローになったりヒロインになったり時にはロボットにもなるよ

たわわと実る果実を食べてネズミになった事もあるよ

たいていはハッピーエンド
バッドエンドは少ない
悲しいのは嫌だ

楽しいのが最高なんだ
だってその方が余韻に浸れるだろ

エンドロールには僕の名前
流れるのは古いシャンソン

ポンソワル パリ マダム
ステキなメロディ


彼はロシアで400年間人工冬眠していた青年である
400年後彼の病気が治せるようになったので中国の総合病院に転院した

ゆっくりと温度を上げて行き細胞を壊さないように常温に戻して行った

脳にヘルメットのような機械を取り付けた
これで脳が生きているのか
そして正常に働いているのかを確認した
他の臓器も同様に色々な機械を使って調べた


400年前
彼は突然昏睡状態になってしまった
原因が不明で手の施しようが無かった

脳で何か障害が起こっている事だけは確かであった

彼のお父さんは大変な資産家であり
息子をとても可愛がっていた

どうしても死なせたく無かった

だから彼はロシアで人工冬眠をし医学が進み治療ができるようになる迄の契約をし眠り続けた



優しい犬の話をしよう

優しい犬は飼い主であるボブに忠実だった
でもボブのお隣のおばさんはどうも嫌いなようでおばさんの姿が見えたり声が聞こえたりすると凄く吠えた

それって全然優しく無いじゃないか

それはそうだね

ではもとい
ボブに優しい犬の話
これで良いだろ?

そうだね
それだったらおばさんも納得するよ
でその犬の名前は何て言うんだい?

犬の名前はね
ヤマヒデヤって言うんだよ

ヤマヒデヤ?
それって人の名前じゃないのかい?
むしろボブの方が犬っぽい名前だよ

確かに
では
犬のような名前のボブにだけ優しい
ヤマヒデヤという人の名前のような犬の話
これでどうだい?


先生
ボブが目を覚ましました

うん?
ヤマヒデヤじゃないのか?


「此処はどこ?」

「あっ目を開けたぞ
ナースコールで先生をお願いしてっ‼︎

ヤスシ良かったぁ
一時はどうなるかと思ったのよ」

「なに?此処って病院なの?」

「ええそうよ此処は病院よ
ヤスシ覚えていないでしょうけど
アナタね家の前で車にひき逃げされたのよ」

「僕なんにも覚えてないよ
ホントに?」

「ホントよ
だから病院にいるのじゃない
看護師さんも先生も遅いわねぇ
どうなっているのかしら

ヤスシちょっと待ってて先生呼んでくるから」



小さな映画館はホントに小さいんだ
皆んなも招待したいんだけど
それは無理だってジェファーソン先生がおっしゃるんだ

またいつかお話ししようね



彼は部屋全体がクッションみたいな真っ白な部屋に住んでいるんだ






ほな!

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