(ネタバレ有)映画【かがみの孤城】二回見た感想、原作との比較も
※がっつりネタバレを含みますので、これから見る予定の方はご注意ください。
僕の好きな小説家の一人、辻村深月さんの『かがみの孤城』がついに映画化されまして。
とりあえず二回見た上での感想、自分なりの意見を置いておきます。
目次
1. ストーリー構成について
2. キャラクターについて
こころ
アキ
スバル
マサムネ
フウカ
リオン
ウレシノ
オオカミさま
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1. ストーリー構成について
まず最初の10~15分で、作品の雰囲気がしっかり掴めるので、序盤からグッと入り込めます。
主人公や家庭の雰囲気、城で出会った仲間たちの個性が、短い仕草やセリフ回しから最大限伝わるようになっています。
それぞれキャラが立っていて本当に良いですね!
これは原作にもあった魅力ですが、二時間という映画の限られた時間の中でも充分発揮されています。
前半は、バンバン張られる伏線や謎にこだわらず、キャラの魅力や主人公の変化に注目して純粋に楽しめました。
そして中盤のマサムネの提案から始まる、彼らの生きる場所と時間軸の謎解き。
まさにミッドポイント。映画の中間地点はこうでなくっちゃ!
「俺たち、助け合えるんじゃねえのかな」というセリフはテーマとも強く結びついていて、印象的でしたね。
そして終盤では事態が急激に展開し、最後まで飽きる瞬間がありません。
むしろ終盤になるにつれて密度が増す、高級なパフェのような構成だと感じました。
おとぎ話を基にした伏線というのも、オシャレで良いですよね!
「鍵のありか」という最大の謎を回収するシーンが少し急ぎ足な気もしましたが、この映画の醍醐味である「リアルな少年少女の機微」の方に時間を割いて映した結果だと思うので、個人的にはこれがベストなんだろうなと思います。
2. キャラクターについて
こころ
健気に頑張る主人公で、すごく良いですね。
わりと原作通りの印象を受けました。
引っ込み思案で、不安症で、ネガティブ思考なんですけど、彼女は彼女なりに頑張って努力しているのが伝わるので、見ていて応援したくなります。
アキ
原作よりかなり丸くなってましたね。(笑)
原作だと、髪を染めたりマニキュア塗ったり、かなり年上の男と付き合っていたり(これは時代もあるのでしょうが)、結構不良っぽい印象でした。
映画でも彼氏の描写はありましたが、かなり控えめでした。
フウカとギスギスするシーンもカットされていましたね。あれはあっても良かったかな、と思います。尺が足りなかったのかな。
スバル
スバルもやや丸くなってた気がします。
というか、彼自身は元々温厚な性格なのですが、兄やその彼女がヤンチャだと匂わせるシーンが無かったですね。
アキとスバルはヤンキー枠で、他の不登校の子たちと少し壁を作ってしまうような場面も原作にはありました。映画だとやっぱ尺がね……。(笑)
マサムネ
原作よりは、少し親しみやすかったかな。
角が取れている感じはしました。
頭良さげな発言をする描写も少なかったですね。
でも、尺でセリフ数が限られている中、目付きや仕草できちんとあのキャラを表現しきったところにはプロみを感じました。ありがとうございます。
正論で相手を圧倒する節があったり、見栄っ張りなところなんかが私に似ていて、かなり好きなキャラです。
フウカ
声は正直、思っていたのと違いました。
原作では、声優の様な高い声、日常で聞くと違和感がある、くらいの設定でしたよね。
眼鏡の奥の目つきがキツく見えたり、でも本当は優しかったり、ピアノ関連のところはほとんどそのままでした。
わりとこころに寄り添う、最終的にはウレシノにも寄り添う、リオンに次ぐオアシス的存在だったのではないでしょうか。
学校社会も大変ですけど、家庭の問題というのも、なかなか厄介ですよねえ。
リオン
真の陽キャ。ほぼ完璧です。
優しくて、仲間思いで、ウレシノにあんな事言われてもキレない、辛い事があったのに病んでいない。
中一であそこまで仕上がっていたら相当大人だと思いますが、それも姉の死を乗り越えたり、一人で寮生活をしていた結果なのかもしれませんね。
見た目も中身もかっこいいです。
ウレシノ
安定のウレシノ君。イメージ通りです。
キレ散らかして去るシーンも、学校での事を語る独白シーンも、ほとんど原作通りでしたね。
シンプルにいじめられているわけでもないというのが、絶妙にリアルで響きますよね。
彼は結構尺使ってたんじゃないかなと思います。少しアキに分けなさい。
オオカミさま
芦田愛菜ちゃんの声が合ってましたね。
あの横柄な喋り方、すごく良かったです。
中立なゲームマスターに見えて、実はリオンに思い入れがあったり、ピンチのアキを助けてあげたりと、人間味のあるキャラクターなんですよね。
最後の「善処する」のシーンは、思い出すだけで鼻にツンと来ます。
リオンもよく頑張った。よく頑張ったよ。
東条さん
なんやかんや言って、ああいう立場の子もかなり大変なんですよね。
彼女の苦悩は、何というかすごく現代っぽいなあと思います。
最終的にはこころとちゃんと喋れて良かったですね。
彼女は、城で繰り広げられるメインプロットには直接関わっていませんが、かなりのキーパーソンです。
サブプロット的に展開されていたこころと東条さんの微妙な関係性が決着し、彼女に借りた「七ひきのこやぎ」の絵がメインプロットの謎解明に繋がるところなんかは、非常に好きな展開でした。
ああいうの良いですよね。映画の醍醐味だと思います。
真田さん
キャラ立ってましたね!
彼氏が出来て調子に乗っちゃう感じ、取り巻きのバカさ加減、最後の最後までこころと和解しない事も含めて、思春期の敵キャラとしてほぼ完璧です。
幼いが故の、自分でも何を書いて良いか分からなかったであろう手紙も印象的でした。
あれをしっかり描いたのは、映画としても意義がある事だと思います。
3. 感想
今作の主人公、視点はずっとこころなのですが、微妙に群像劇っぽい節もあります。
それぞれがそれぞれの、違った事情を抱えて同じ空間にいる。
思春期特有の少年少女の機微が完璧に描かれていて、面白かったです。
学校に行かないんじゃなく、行けない。
そういった子供たちの心情を、リアルに、かつ親しみやすいタッチの絵柄で描いた事は、すごく意義のある事だと思います。
仮病じゃないんですよ。
本当にお腹が痛くなるんですよ。
私にも覚えがあるので、分かります。
だからこころちゃんを見ていて、すごく応援したくなりました。
こころちゃんの母親は最初冷たいように見えますが、あれで彼女も苦しんで、理解しようと頑張っているんですよね。
恋愛関係で悩んだり、近親者の死、親の重圧、友達の作り方、嘘をついてしまったり、何もしていないのにいじめられたり。
色んな子たちが、それぞれ自分なりにもがき苦しんでいる場所が「学校」ですよね。不条理な場所と言えば、そうでしょう。
オオカミ様が城を学校の代わりにしていたように、学校もまた、周囲と隔絶されたひとつの「孤城」なのかもしれませんね。
4. まとめ
辻村深月さん、好きなんですよねー。
メインの謎(今回で言えば鍵探し)を見せつつ、大きめの伏線(時代がズレている事)を別に張ってくるやり方が、辻村さんっぽいと私は感じます。
今作を見て面白いと思った方は、他の作品も是非手に取ってみてくださいね。
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以上、ラケットでした!
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