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#152 人材育成はいつ失敗させるかをマネジメントする【2/2】24/4/26

みなさん、こんにちは。
前回に続き、優秀な若手にどのように育ってもらうか、成長支援するか、を考えてみます。

前回のおさらい
若手かつ女性の課長が任用1年後に退職をしてしまった。
「何者にもなっていない自分へのもやもや」が本人の退職理由であった。
構造的には、任用した上長はじめ、成果を出せる環境を整えすぎていたきらいがあった。

ここからが、今日の続きです。
事業部門としては、全力で引き留めにも走りました。そこから見えてきた問題点を敷衍してみます。

この退職してしまった若手の女性課長は、当然ながら事業責任者もある意味で目をかけていましたから、事業組織部門全体で引き留め工作に全力を傾けたことをのちに聞きました。

直上長の課長、部長、事業部長、担当役員に加えて、この女性課長同様に別部門の若手部長も駆り出して、5層にわたって引き留めを働きかけました。1人の社員をここまで引き留めようとのこの熱意とパワーのかけ方は、数年前には考えられなかった行動で、これはこれで人事としてやってきてよかったな、と感慨に浸ります。

さてその5名による引き留めの中身も少し聞きました。ここで、わたしは、引っ掛かりを持ちました。5名ともがまったく同じモノの見方、引き留めの口実で説得に当たったことです。どのような中身だったかです。

「海千山千のベンチャー(という名の)企業だと、労働搾取されるリスクがかなり高い。搾取されても経験が身につけばまだよいが、単なる下働きの可能性も高い。「ゆえに転職失敗のリスクがかなり高いのではないか」

「(当社)事業部門としては、あなた(若手女性課長)のやりたい領域に異動してもらって、引き続き課長ポジションで自身のキャリア開発と組織の采配を振るってほしいと思っている」

概ね、5人とも上記のメッセージ趣旨で引き留めにあたったようです。わたしは、この一連の引き留め活動を役員から共有してもらった際に、「失敗しましたね」と一言、思わず漏らしました。

その理由はこう考えていたからです。
女性課長当人の退職理由は、俯瞰すると「何者にもなっていない自分へのもやもや」です。それは、彼女の上長ほか役員までが結果的に過保護にしたことが大きな原因と考えています。過保護とは、「失敗させない」ように配慮、ケアしてしまったことです。

このことが、先の引き留め時の5名各位の言葉にモロに現れていると感じます。実はこの5名は、当社に新卒で入社して、それぞれ現役職に、いわゆる出世組として上がってきている人たちです。ですから、転職したこともなければ、外部労働市場に触れた経験がないのです。

わたし自身は、そこそこの転職歴があるのですが、客観的に見ても当社はワークエンゲージメント、従業員エンゲージメントの両面で、総合的に良い会社と思えます。ですから、5名が引き留めの際に話した内容は、純粋に感じていることからだと敷衍します。それでもなお、違う意見やモノの見方で、女性課長と話をする人がいたら、もしかしたら残留してくれる可能性があったかもしれない、と考えます。タラレバですが。

わたしは、役員から話を聞いたとき、「失敗しましたね」といったのは、「何者でもない自分」を変えることを後押しする問いかけができたらよいと考えたからです。「外部マーケットで試してくる」「むしろ失敗経験をしにいく」、過保護のない、自分の力で切り開く経験を得ることは長いキャリアで血肉になるのでは?、とわたしだったら話したでしょう、と役員に伝えました。

一人の退職から、組織カルチャーがもたらす功罪の面を認識する良いプラクティスだったと考えます。もちろん、女性課長の退職は痛かったのですが。

さて、みなさんは、自分が失敗する経験を獲得しを取りにいっていらっしゃいますか。
それでは、また。

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