見出し画像

②遭難寸前、湖の上で何を思う

やぶ蚊にさされまくって
痒みに悩まされた私だが、
虫刺されを防ぎようもない場所がある。
それはトイレだ。
テント場のある島々には、
壁もなくむき出しの状態で
簡易的なトイレが設置されている。
いわゆるボットン便所だ。
どんなに早くことを済ませても
必ず一ヵ所はやぶ蚊にさされる。
蚊の野郎も生きるのに必死らしい。


カヌー旅初日のエッセイはこちらから↓


2日目はゴールであるテント場を決めて出発した。
今日は昨日とうってかわり晴天だ!
若干風は強そうだがなるべく先へ進もう。
そんな意気込みでオールを漕ぎ始めた。
昨夜テントを張った島が少しづつ離れていく。
目の前には大海原のような湖が広がっている。
目指すはSea Gull Lake(シーガル湖)だ!


今日も私はステフとペアーになった。
へレーナとアリのカヌーが先を進んでいる。
強風で波が大きく立っている。
カヌーの揺れが大きい。
湖の波というより、
本当に海の上でカヌーを漕いでいるようだ。



私は何だか違和感を感じた。
漕いでも漕いでも私たちが乗ったカヌーが
進んでいないようだ。
私はいっそう強くオールを漕いだ。
どんなに一生懸命漕いでも、
へレーナとアリが乗っているカヌーが
どんどんどんどん小さくなっていく。


大海原の風が私とステフの乗ったカヌーを
どんどん後退させていた。

まずい…


私は焦った様子で
どうしたらいいのかステフに聞いてみたが、
ステフもどうしたらいいのか
分からないようだった。
無力な私たちのカヌーはそのまま風に押されて、
どこかの島に打ち寄せられてしまった。
もう既にへレーナとアリの姿は
見えなくなっていた。



ここは何処なのだろうとGPSを確認すると、
どうやら昨夜過ごした島に近いらしい。
私はへレーナとアリに連絡がつかないかと
携帯の通話を試みたが、
この大自然の中では電波など繋がらない。
私とステフは途方に暮れたが、
私たちがいないことに気づいて
へレーナとアリが探しに来ることを願った。
下手にここから動くと危険なため、
私とステフはそこにとどまることにした。


時は無常にも過ぎていくが、
波間に2人の姿は見当たらない。


絶望的だ…


私とステフは話し合い、
もし夕方になっても
へレーナとアリが戻って来なかったら、
昨夜お世話になった同じテント場に行こうと決まった。



私は不安で仕方なかったが、
必要なギアは私たちのカヌーに乗せてあったし、
万が一
次の日もへレーナとアリに会えなかった場合は、
カヌーのレンタル場に戻ればいいと考えていた。


そう考えたらもう怖くない。
遭難した最初の数十分は、
シリアスな話し合いをしていた私たちだが、
その後は恋バナをしたり
夢を語ったり
晴天の中で写真撮影をしたりと、
その場を楽しみ始めた。
やはり何とも呑気なのだ。



遭難して2・3時間ほど経っただろうか?
ワイワイやっていると、
前方に一艘のカヌーが小さく見える。
もしや!と注意して見てみると、
それはまぎれもなくへレーナとアリのカヤックだった。
私とステフは手を振りながら大声をあげた。


Help Me-------------!!!


2人のカヤックがどんどんこちらに近づいてくる。
良かった、気づいてくれた!



こうして私とステフは無事
へレーナとアリに救出された。
4人は3時間振りの再会に抱き合って喜んだ。
そしてカヌー初心者たちは
この強風の中では無力だと考え、
昨夜のテント場へ戻ることにした。


そして島へ着いた私たちは、
もし明日以降はぐれた場合
カヌーのレンタル場へ戻ると決めた。


兎アート



この旅の後へレーナとこんな会話を交わした。
”次回もしカヌーの旅に出る場合は、
事前にはぐれた場合のプランを立てること、
そしてトランシーバーを準備する必要がある”


どんな旅でも十分なリサーチやプランをたてる。
そう学んだ兎であった。




こちらのエッセイもよろしくお願いします↓









この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?