昆虫食と補助金の話

ここ数日、陰謀論まで交えて昆虫食がホットな話題です。

実はわたしは、昆虫食自体に関しては、かなり好意的です。実際に食べたりもしていますしね。しかし、ビジネスの可能性としてはそれほど魅力的ではないと考えています。もし、「昆虫食に投資して一発逆転」とか考えているんだったら、考え直せ!って言いたいし、ビジネスモデルにもよりますが、個人として出資はしたくない。

なので、「まーた、怪しげな新技術で出資金だけ集めるベンチャーじゃないの?」「クロレラの培養とか昭和の時代流行ってたよね」「ミドリムシってどうなったんだっけ……?」なんて思ってたんですが、どうも世の中では「昆虫食に補助金6兆円!」みたいなデマも広がっているようで、びっくりしてしまいました。(なんだいその小学生が考えたような桁は!)

上記の記事を読むと、一応研究費とかにも予算はついているみたいですが、1800万とそれほど多くない模様。

実は私は、昆虫食にもある程度補助金が出ていると思っていました。だから下記のような発言をしたわけですが、調べてみるとこれはわりと見当違いでした。そもそも政府としては、ほーんあっそ。ってぐらいのやる気ないスタンス。

そもそも政府は全力投資などしていなかった。でFAでした。すみません。(もしかしたら、見つけられていないだけかもしれないですけどね)人気取りの為に政治家がヨイショしたり、食べたりすることはあるみたいですけれどその程度。

補助金も出ていないわけではないんですが(下記リンク参照)

本文中にもあるように、そもそも農業に従事すると補助金を出す制度があるわけで「コオロギ養殖だって畜産だろ!」と言われたら通るのが筋かなと思います。

私としては、「コオロギだけ特別に補助金だすのはおかしいだろう。他の実績のある分野の方が可能性は大きいはずだ」と考えているわけなんですが、「コオロギだろうが、ニワトリだろうが農業には補助金を出す」という話なら文句はない。

ちゃんと食品として登録できるなら「ニワトリはOKだけど、コオロギ、てめーは駄目だ」とか言う方が変ですよね。何がだめなんや!外骨格なのがそんなに悪いんか!?

ここに関しては、「補助金を出すのがそもそもおかしい」みたいなことを思う人も居るとは思いますが(私も近いようなことを言っていた)考えてみると農業ってほとんど補助金がないとやっていけないんですよね。

補助金と酪農

ついこの間、セイコマートで見たポスター

これ、私がこの間コンビニで撮った写真なんですけど、酪農なんてこんな感じに補助金がバンバン出ている。むしろ補助金をジャボジャボだして「牛乳の生産量をあげてくださいね~~!」ってのをやっていて、農家がそれに従っていたら、この度の牛乳ショックで「ごめん、やっぱ牛を減らして!」って言い出したので、農家がブチギレたというのが今の牛乳廃棄問題だったりします。

なので、「コオロギにお金を使うぐらいだったら、牛乳に補助金を出せ!」という批判はおかしくて、むしろ「補助金を出しまくってた故の問題」なんですよね。この件は。

農家としては、国の方針通りに借金までして設備投資してたら、突然の手のひら返しでそりゃ怒るし、地元でも連日テレビでやるわな。って話なんですが、この状況をどうすれば良いのかは非常に難しい。

職場にも実家が畜産関係って人が結構いるので、遠い世界の話ではない。余った牛乳をチーズなんかに加工できれば良い。みたいな意見もあるんですけれども、やっぱ素人が考えてもスッキリとした解決方法なんて出ないわけで、困っています。

実は、北海道の農業に補助金が出ているのって結構叩かれたんですよ。TPPの時ですかね。北海道の田舎を走ると、「TPP反対!」という共産党のポスターがめちゃくちゃ多かった時期がありました。農家としては、自民党もダメ、民主党もダメ、となるともはや頼れるのは共産党だけ!みたいな状況で、大変なものがあったと思うんですが、このときも「安い外国産のバターを輸入すればいいだけ」「公金を食いつぶしている」「グローバル化を受け入れろ」みたいな感じで猛烈に叩かれたのを覚えています。

ま、そのTPPを止めたのはあろうことかトランプ大統領だったという、世も末の状態なんですが……。

考えてみてくださいよ。自民党も、民主党も、政権取ったら掌返し、共産党は勇ましいこと言うけど何も変えられない。オバマ大統領をトップに抱く米国民主党はグローバル化の圧力をかけてくる。

北海道の農家はトランプ大統領に感謝したほうがいいんでしょうか?正直私はトランプ大統領に関しては、適当なことを言っているだけのオッサンと言う感じで評価が高くないんですが、まさかのそれに救われてしまったという状況は、本当に恥ずかしいことだと思います。どうにかして!

市場経済に任せればうまくいくはず?

みたいな考えが世の中にはあります。「補助金を出すのはおかしい。農作物を市場に出せば良いだけ。高ければ売れないし、安ければ売れる。一番安く効率的に生産できる農作物が主流になって最適な状態になる」みたいな考え方。間違ってはいないとは思うんですよ。でもそれをやると、特定の国が一人勝ちしてしまう。

例えば、アメリカの農業にコストで戦うのは難しいと思います。アメリカの物価が今よりずっと高くなって、天文学的な数字になれば別かもしれませんが、日本の何倍もあるような肥沃な平原を、アホみたいなサイズのトラクターでドドドと耕す大規模農業に、どうやって勝てっちゅーねん。無理だよ!

となると、小麦とかジャガイモは全部米国産になる。でもそうなると、食料を国外に依存するわけで、例えばアメリカでトラブルが発生して食料が入ってこなくなるとたちまち詰んでしまうことになります。

依存先が一つしか無いというのは非常にリスクがあることです。例えば米国だけでなく、オーストラリアとか、アフリカとか、いろんな国からも買うようにしておけば、こういったリスクは下げることが出来ます。国外のことは我々はコントロールできませんが、国内ならある程度コントロールができるので国産にこだわるのもよいでしょう。(理想は半々ぐらい?)

まあ、今だって、肥料は国外に依存しているわけですし、輸入がストップすればどっちみち詰みそうな気もしますが、それでも直撃は避けられる。

市場原理主義者が見落としがちだと思うんですけど、作物って作るのに時間がかかるんですよ。お米が不作になりました。すると値段が上がります。値段が上がれば、お米を作る農家が増えるから結果的にバランスが取れる。なるほど、完璧な理論だと思います。お米ができるのに一年かかるってことに目を瞑ればですが。

もうお米が一粒も残っていない状態で「大丈夫です!市場原理によると、お米の生産は増えるはずです!だから直にお米の供給は元通りになるでしょう!」って言った所で、じゃあお前秋までどうやって生き延びるんだ?って話ですよね。

大体、新しく水田を作るのだってすごく難しい。いや、畑だって、一日や2日でパッとできるものじゃない。私趣味でジャガイモを作っているんですが、草の根がこんがらがった土地をスコップで耕して、堆肥を入れて土壌を改善して……ってやるだけでもう数年かかる。森だったらそれを切り開くだけで何年かかることか。

だから、普段から農地を維持していくことが大事で、結局補助金はついて回るものだと思うのです。いわば安全のためのコストですよね。どんな関税や補助金の額が適正かは議論が必要だと思いますが、それを無視して「税金の無駄を無くしたぞ!」というのは、リスクとの等価交換だと思うんですよね。

まとめ

というわけで、以上補助金関係の話でした。簡単にまとめると

  • コオロギ「のみ」に補助金を出しているケースは現時点でほぼ確認できず

  • そもそも農業と補助金は密接に関係している

ということでした。私としては、コオロギファームに対する補助金に関しては特に問題はないのでは?と思います。

……が、これだけは言わせて欲しい。冒頭にも書きましたが、私は「昆虫食が未来を救う!」という言説をかなり疑っています。いわば、投資家向けの宣伝文句ではないのかと。

なぜなら、昆虫は食物連鎖における生産者ではないからです。食料不足に対するアプローチは、生産者である植物から行わなければ解決は難しい。

我々の場合は減反政策などで、田んぼの数や畑を減らしてきました。そのまま住宅地などになったものもありますが、放置されている箇所も結構ある。まずはそこを復活させるのが筋ではないんでしょうか?

人間追い詰められると、新しい技術で一発逆転!を狙ってしまいがちなもの。でも、待ってください。今まで築き上げたノウハウのある分野でやってみることが、地味だけれど、効果があることなんじゃないですか?

そんなことを思ったので、色々と昆虫食について調べてみました。果たしてどういう目算で、どういうメリットを考えているのか……?

するとですね、なかなかおもしろいことが分かったんですよ。どうやら昆虫食が解決しようとしている問題は、食料の欠乏というより、栄養素の欠乏みたいなんですよね。

長くなってきたので、一旦ここで切らせていただきます。

21世紀の「飢餓」、昆虫食に意味はあるのか?でお会いしましょう。

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