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『月光ゲーム』(有栖川有栖)読書感想文#6


今回読んだのは、『月光ゲーム』です。今回もまたまたミステリーです。ミステリーの有名作品から攻めてるのでこうなります。これは、シリーズものの第一巻で、本作がデビューだそうですね。

※犯人の決定的なネタバレはありませんが、色々と面白かった点などをネタバレしているので、未読の方でこれから読もうと考えている方はご注意ください。

内容紹介(Amazonより)

夏合宿のために矢吹山のキャンプ場へやってきた英都大学推理小説研究会の面々――江神部長や有栖川有栖らの一行を、予想だにしない事態が待ち構えていた。矢吹山が噴火し、偶然一緒になった三グループの学生たちは、一瞬にして陸の孤島と化したキャンプ場に閉じ込められてしまったのだ。その極限状況の中、まるで月の魔力に誘われでもしたように出没する殺人鬼。その魔の手にかかり、ひとり、またひとりとキャンプ仲間が殺されていく……。いったい犯人は誰なのか? そして、現場に遺されたYの意味するものは何? 平成のエラリー・クイーン=有栖川有栖の記念すべきデビュー長編。


これもまた、クローズド・サークルですね。

これまで読んだ数冊を通して、大学のミステリ研究会、クローズド・サークル、ミステリーの蘊蓄の三点セットが定石なのはわかってきました(笑)


物語全体を通して、関西弁がいい味出しています。殺人があっても暗くなりすぎません。


まず、登場人物が多すぎて序盤から挫折しそうでした。

殺人事件が起こっても、誰が誰だか分かっていないので、正直なところ、推理どころではありませんでした。

多分、17人。序盤から出ずっぱり。読み終わった後に、「この人いる?」と思ってしまった人もいました。また、そこまで殺されませんので人数も減りません。

おまけにお互いにあだ名で呼び合います。(混乱の極み)

私の頭は貧弱で人の名前を覚えるのが苦手なので、中盤までは辛かったです。


印象に残ったこと①

火山に閉じ込められるわけなんですけれども、噴火の迫力は満点でした。度々噴火して、噴石が降ってきて、登場人物達が逃げ惑います。

火山は恐ろしいエネルギーを秘めています。

印象に残ったこと②

皆、安易に惚れすぎでは?

この作品、恋愛要素があります。

それは良いとして、いくら非日常で元気一杯の青春大学生とはいえ、2日くらい一緒に過ごして「愛している」「離れがたい」レベルにいくものですかね?

あなたの恋愛経験が少ないだけでは、と思う方もいるかもしれませんが、わたしには疑問でした。

主人公が知り合って間もないヒロインに惚れ込み、他の男に醜い嫉妬をするところ。読みながら少し怖くなりました。実はヒロインが彼氏持ちで、最後のシーンで振られるのは最高のオチでした。

恋を通り過ぎて愛まで行ったのに、残念ながら一方的な片想いだったんですね。

ヒロインは理代という女の子ですが、特徴に乏しいです。キャラが曖昧。他の女の子の方がキャラがまだ立ってます。

ヒロインを理代にするより、月光やらオカルトやらが好きでエキセントリックな不思議系・ルミの方が、このタイトルが映えたのでは?と思ってしまいました。

また、「愛している人が人殺しかもしれない」と知ったとき、愛している人を庇って証拠隠滅に手を貸そうとしますか? まだ知り合って日が浅いのに、そこまで入れ込むものなんでしょうか。

主人公が証拠隠滅を図ったときには、「おい、ミステリ研究会!」とつっこみたくなりました。

自分には一目惚れで「愛している」どころか「犯人(かもしれない)であっても庇う」レベルまで行った経験がないので、驚きました。

一目惚れパワーすごい。

印象に残ったこと③

結末まで犯人が見抜けませんでした(笑)

というか、途中に挟まれた「貴方も推理してみてね」という作者の言葉にも、スルーしてしまいました。

作者の意図的には、これをちゃんと考えないといけないのでしょうけど、読み手としては最も惹きつけられ、胸を高鳴らせる謎解き解明の瞬間です。

どうにも堪え性がなく、犯人に当たりをつけないまま読み進めました。

そして謎解き。

よく考えれば、「そうか」となった犯人です。

「トリックではなくロジック」で解決しました。

一つ一つ現場の証拠とその理由を丁寧に追っていれば、確かに犯人はあの人しかいなかったのです。

突飛なトリックが登場するわけでもなく、論理的で冷静、あっさりとした謎解きは好きでした。

ただ、ダイイングメッセージは、個人的にはあまり好きではなくて。本作でもそうだったように、あらゆる解釈が出来てしまいますので、謎解きの決定的な証拠にはなり得ません。

被害者が悪筆ならどうしようもないし、書いている途中と息絶えたらもう分かりません。流石にこれで犯人が分かったら味気ないですし(笑)

気になったこと

「僕」の一人称視点で進むのに、ちょくちょく読者を意識した作者(神)の言葉が介入していること。

作者が読者に話しかけてくるので、物語に没頭しづらいです。

冒頭でも、主人公に「僕の名前は有栖川有栖」とご丁寧に自己紹介されたので、「あ、どうも」と思いました。



文庫本の薄さの割に、ボリュームがあったので3時間くらいかかりました。

火山を舞台にするという設定はとても面白く、楽しめました。

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