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『火車』(宮部みゆき)読書感想文#7

宮部みゆきさんを読んだのは、これで2冊目です。

1冊目は、『とり残されて』。一年位前に読んだと思います。ホラーテイストの短編集だったと思います。あれもとても面白かった記憶があります。


さて、今回読んだのは『火車』です。前から作品名は知っていて気になってました。

なお、ちょうど読書の気分が乗らない時期だったので、読み始めてから読み終わるまでにトータルで3日くらい掛かりました。

内容も重ためで、展開もゆっくりだったので、「一気に読もう!」というものではありませんでした。

なお、読書の代わりに主にゲームをやってました。
バトロワゲーのAPEXです。面白いんです。鯖落ちが頻繁に無ければ最高なんですけど。

※ネタバレがあるのでご注意ください。

内容紹介(Amazonより)

休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。自らの意思で失踪、しかも徹底的に足取りを消して――なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか? いったい彼女は何者なのか?謎を解く鍵は、カード社会の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。山本周五郎賞に輝いたミステリー史に残る傑作。



所々、時代を感じる作品でした。

フロッピーディスクとか個人情報の保護が甘いところとか。市役所で戸籍謄本や住民票を取るときに、ロクな本人確認をしていないから、「本人です」と言えば取れてしまうんだ、という記述とか。

嘘やろと思いましたよ。

今の市役所はそこは神経質になって確認するでしょう。DV問題とかストーカーとか、担当職員が名前や住所をうっかり(あるいは強い口調で脅されて)市民に伝えてしまい、事件に発展することもありましたね。

何かあれば責任問題ですから、個人情報保護の意識はこの頃から相当変わっているんじゃないでしょうか。

本の発行年を調べたら、私はまだ乳児でした。

それは時代を感じても仕方ないかなと思いました。


ただ、「火車」で扱われたテーマであるクレジットカードの支払い、キャッシング、住宅ローン、消費者金融、サラ金などによって多重債務に陥り、自己破産をする、という問題は令和の時代でも変わらないですね。

それに「成り代わり」というミステリーなテーマが組み合わされたお話です。


「火車」は、「彰子」という女性に成り代わった「喬子」という女性を主人公の本間が探し出す話です。

確定ではないですが、「彰子」は「喬子」によって殺されたようです。「成り代わる」ために。「喬子」本人の口から事件の真相が語られることはありません。物語は、主人公が「喬子」にたどり着いた時点で終わりますので。

ちょっとモヤッとしますが、おおかた主人公の推理通りなのでしょう。


「火車」を読みながら、現実世界である人間が違う人間に完全にとって代わることなんて可能なのだろうか、と思ってしまいました。

赤子の取り違いなどでもなく、交友関係や勤め先もしっかりあった20代の女性が、全く別人になるのです。

物語の結末としては、主人公は「彰子」になりかわった「喬子」にまで辿り着きました。

まっさらな人間なんてどこにもいなくて、生きている限りは痕跡が残るものです。

主人公は、その痕跡を一つずつ追っていき、「喬子」という人間の悲しい人生を理解していきます。


物語の半ば、父の借金取りから逃れたい気持ちで「死んでいてくれ」と小声で呟きながら、血眼で父の名前を新聞で探す喬子の気持ち。

その顔を見た夫が「鬼女」と言ってしまう気持ち──。

ここは喬子に肩入れしたくなりました。

あまりに可哀想で。喬子の気持ちは痛いほど分かりました。

もちろん、彼女がいくら可哀想な生い立ちだからといって、犯した罪は絶対に許されるものではありませんが、夫ならその気持ちを理解してあげてほしかったです。



少し私の話を。

かつて、私の身内が闇金にお金を借りました。

一時期は、全く関係のない自分の職場にも闇金から電話が掛かっていました。

合計二回ほどでしたが、嫌な気持ちでした。

闇金が怖いとかそういうものというより、身内に対して心底腹立たしかったです。

闇金は保険会社を騙って電話を掛けてきました。

電話を取ると「闇金だ。お前の身内の○○が金を返さない」と一方的に恫喝して電話を切られるわけです。

「代わりにお前が返せ」とは言われません。(あちらも私が関係ない事を分かっているはずなので)

じゃあ何故掛けてきたと考えると、完全に脅し目的ですよね。

「ちょっと脅しておけば社会に出たばかりの20代前半の女の子ならビビって代わりに払うかも」「債務者にプレッシャーを掛けられるかも」

そういう思いだったんでしょう。舐められるのが本当に腹立たしくて、そういうきっかけを作った人間が身内にいるのが恥ずかしくて、何より嫌でした。

今は、債務者の身内は法律事務所の世話になり、縁が切れましたので、平和に過ごせていますが、これがあのまま続けば職場に迷惑がかかったでしょう。

こういう経験もあり、喬子の気持ちが分からなくも無かったです。



お金のトラブルはくれぐれも注意ですね。

「火車」にもありましたが、親しい身内にすら「死」を願われるほどですから。怖いですね。

私は誓って堅実に生きていこうと思います。



私の借金と言ったら、大学時代の奨学金です。

今は奨学金破産という言葉もありますね。

ただ、今の私は派手な趣味もなく、本はもっぱら図書館で借りており、実家暮らし。車はありますが、貰い物のためローンはなし。独身のため、収入のほとんどは貯金しています。一括で返そうと思えば返せる金額ですが、無利子ですし、ある程度の現金を確保したいのと、積立NISAを優先しているので、少しずつ(月1万少し)奨学金は返しています。

大丈夫だとは思っていますが、「奨学金破産」と社会問題になるくらいですから、何かのトラブルで返せなくなったらと思うとちょっと怖いですね。

ましてや住宅ローン。桁が違います。

住宅ローンを払いながら子供を育てている世の人々、本当にすごいと思います。

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